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会長短信「春夏秋冬」

会長短信「春夏秋冬」はメールマガジン(メルマ日獣)に掲載しています

会長短信「春夏秋冬(32)」

「AMR アクションプラン」
 平成28年2月26日(金)~28日(日)に秋田で開催された平成27年度日本獣医師会獣医学術学会年次大会【秋田】は、参加登録数約1,400人、一般市民を含めた参加総数は約2,300人、歓迎交流会も約800人の参加を得て、大成功を収めました。  歓迎交流会にご出席いただいた佐竹敬久秋田県知事も、大変喜んでおられました。  これも、開催県の公益社団法人秋田県獣医師会の砂原和文会長はじめ役職員及び会員の皆様方、全国の地方獣医師会及び構成獣医師の皆様方の多大なるご尽力とご協力の賜であり、改めて感謝申し上げます。  この秋田大会でも、日本産業動物獣医学会シンポジウム「薬剤耐性菌と抗菌剤の慎重使用」として取り上げられましたが、今年は薬剤耐性菌対策が注目される一年となります。  まず、今月20日(日)には、厚生労働省が主催し、農林水産省、日本医師会及び本会が共催する「人と動物の一つの衛生を目指すシンポジウムについて―人獣共通感染症と薬剤耐性菌―」が日本医師会大講堂で開催されます。地方獣医師会には2月24日付けで会員構成獣医師に参加依頼のご案内を差し上げましたように、塩崎厚生労働大臣等とともに私もご挨拶を行い、酒井副会長が「人と動物の共通感染症に関する取組について」と題して講演を行います。  この中でも、薬剤耐性菌対策について、WHOにおける取組、医療・獣医療分野における取組等について紹介されます。会場にはまだまだ空席があるようですので、少しでもご関心をお持ちの方は是非ともご参加いただきますようお願いいたします。  政府は、昨年5月のWHO総会で「Antimicrobial Resistance(AMR)」に対する国際行動計画が採択され、加盟国には2年以内に国家行動計画の策定・実行を要求されたことを受け、近々我が国の行動計画を決定・公表することにしています。  これは、①普及啓発・教育、②サーベイランス・モニタリング、③感染予防管理、④抗微生物製剤の適正使用、⑤研究開発・創薬及び⑥国際協力から構成される予定と聞いています。  その中では、人・動物・食品におけるモニタリング等の連携の充実・強化、慎重使用のガイドラインの一層の遵守・指導の徹底等が検討されています。  この行動計画の策定の後は、4月中旬にアジア・太平洋AMR大臣会合、5月下旬の伊勢志摩サミット、9月予定の保健担当大臣会合と続き、11月の第2回世界獣医師会(WVA)-世界医師会(WMA)“One Health”に関する国際会議でもAMR対策が取り上げられる予定であり、まさにAMRの一年となりそうです。  AMRの問題は、言うまでもなく抗菌剤の不適正使用や大量使用により、人や動物の臨床現場で必要となる抗菌剤が効かなくなるということです。ここで我々獣医師が注意を要する点が二つあります。  一つ目は、畜水産現場においては人の医療現場よりも大量の抗菌剤が使用されているということです。勿論、ニューキノロンや第3世代以降のセフェム系などの最新の抗菌剤の使用には厳しく制限がかけられており、人の医療への悪影響の度合いを単純に比較することはできません。  二つ目は、伴侶動物の臨床現場では9割以上は人用抗菌剤が使用されているということです。勿論、伴侶動物に最高の獣医療を提供するという獣医師の使命と、動物専用の抗菌剤が少ないという実態は考慮しなければなりません。  しかし、人の医療への悪影響の未然防止という点では、慎重な使用が求められるところです。  いずれにしても、AMR対策は医療と獣医療双方にとって極めて重要かつ難しい課題であり、人と動物の共通感染症と並ぶワンヘルスの最重要課題の一つです。 その観点から見れば、本件は、現在全国で推進していただいている医師会と獣医師会との連携協定が力を発揮する絶好の課題であるとも言えるでしょう。 平成28年3月23日 公益社団法人 日本獣医師会 会長 藏内勇夫

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会長短信「春夏秋冬(11)」 「国際馬術競技大会に不可欠な獣医師会の支援」(平成26年6月20日)
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会長短信「春夏秋冬(9)」 「獣医師会の約束」(平成26年4月21日)
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会長短信「春夏秋冬(5)」 「新しい年に向かって」 (平成25年12月18日)
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会長短信「春夏秋冬(3)」 「五十嵐幸男先生のご逝去に接し」 (平成25年10月17日)
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会長短信「春夏秋冬(1)」 「本会の発展はスピードある対応と組織行動で」 (平成25年8月17日)
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