公益社団法人日本獣医師会

  • 日本獣医師会とは
  • 獣医師のみなさま

会長短信「春夏秋冬」

会長短信「春夏秋冬」はメールマガジン(メルマ日獣)に掲載しています

会長短信「春夏秋冬(21)」

「All Japan Pet Expo in Tokyo及びインターペット -人とペットの豊かな暮らしフェア- に参加して」
 平成27年4月2日~5日、東京ビッグサイトで開催されたAll Japan Pet Expo in Tokyo に出席しました。今年は、ペットフード協会の他、日本ペット用品工業会、ジャパンケネルクラブによる初めての共同開催で、多くの来場者が一緒に生活している犬や猫達との参加で各会場は満員、そのスケールの大きさに今更ながら驚いています。  私は初日のオープニングセレモニーで主催者の皆さんと一緒にテープカットを行い、次いでペットフード協会とメサゴ・メッセフランクフルト社が主催した「インターペット-人とペットの豊かな暮らしフェア-」に参加しました。この会場は、来場者数は約2万2千人と多く、協賛企業や団体は15ヶ国から233団体で、出展のブースで埋め尽くされ、大変盛大なフェアでした。日本獣医師会も出展団体の一つで、4月4日は終日、本会主催によるプログラムが特設ステージで進められました。  プログラムの最初は獣医師の仕事の紹介コーナーであり、小動物診療だけではなく、産業動物診療や家畜保健衛生、公衆衛生の各現場で活躍する獣医師の出演によるゲーム仕立ての職場紹介でした。次にマイクロチップの紹介コーナーでは、専門家によるパネルディスカッション形式による説明があり、また、キッズ獣医師体験コーナーでは、小学生を対象に小動物診療獣医師の体験が出来るため、多くのお子さんが参加して大変人気でした。  私は、4月2日に開催されたビジネスフォーラム「ペット産業の新たなビジネスの潮流、人とペットの健康寿命増進はペットとの共生から」に、日本医師会の横倉義武会長と一緒に参加しました。人とコンパニオン・アニマルの現状については、家庭動物は人と同じ環境で生活し、家族の一員になっていますが、飼育者が高齢や病気の際、その動物をどのように健康的に飼育し、散歩させたり動物病院に通院させるのかのマイナス面が議論されています。生活に潤いや安らぎを与え、動物介在療法のように福祉や健康増進や学校飼育動物による教育効果等のメリットが大きいので、地域全体で支援することの重要性をお話ししました。  ペットの健康と飼い主との関係について、日本医師会の横倉会長はOne World, One Healthの実現を、医師と獣医師とで構築し、アニマル・セラピーの効果は医療現場においても期待出来るとの発言がありました。私からは、動物の健康管理は、獣医師だけでなく在宅看護を行う飼い主との連携、動物看護師によるクライアント・エデュケーションやプライマリーケアの重要性をお話ししました。また、動物が罹患した時だけではなく、普段からホームドクターと連携し、気軽に相談することの重要性、飼育動物の減少傾向は少子高齢社会と結びつくが、豊かな社会は動物と人が共存できることにあり、そのことを国民に啓発する必要があるとお話ししました。  ペット飼育の阻害要因については、集合住宅での飼育条件の大幅な改善が見られる一方で、動物と一緒の旅行には多くの制約があること、最近、耳にするブリーダーやショップの減少は、動物の供給数の減少に起因していることについて、関係者が連携を図り、改善する努力が必要であることをお話ししました。  飼い主の死亡保険の信託制度により高齢者も動物を飼育できる環境を確保し、人と動物が一緒に生活できる施設の実現等の期待をお話ししました。昨年、福岡県で実施した犬の飼養実態調査結果の中で、95%の飼い主が、犬を終生飼育して手放す可能性がないこと、誰もが動物を飼育できる環境を整備し、飼い主は動物の生活に責任を持ち、そのことを地域で支える社会の出現を期待することで結びました。  4月4日に開催されたパネルディスカッション「獣医療と動物福祉・愛護の制度を考えましょう」には、日本獣医師会の北村直人顧問と一緒に参加しました。チーム獣医療提供体制の整備には、獣医師の自己研鑽は当然でありますが、獣医療を補助する動物看護師の役割が重要で、その動物看護師の知識と技術の高位平準化、認定資格とそれを管理する統一機構の整備の他、動物看護師の処遇改善や職域の整備充実が不可欠であることを伝えました。診療現場の医師と看護師の比は1:5ですが、診療獣医師と動物看護師の比は1:1.4で、しかも医療現場では、看護師のほか、保健師、助産師、放射線技師、理学療法師等、およそ20職種の有資格者で構成されていますが、獣医療では動物看護師だけであること、獣医療の質向上を図るために動物看護師の活躍を期待するチーム獣医療の整備についてお話ししました。  マイクロチップの重要性については、動物愛護管理法の改正が平成25年に行われましたが、5年後の平成30年の法律改正の際に装着の義務化が論議されることから、装着の普及啓発活動を強化する必要があります。現在、マイクロチップが百万頭以上の動物に装着されていますが、総飼育頭数から見ると1割に過ぎないので、大きな全国規模の運動を展開したいことをお話ししました。  今後も発言の機会があれば、獣医療の整備充実や獣医界の発展に向けて積極的に取り組んでまいります。  ご支援をお願いいたします。 平成27年4月21日 公益社団法人 日本獣医師会 会長 藏内勇夫

バックナンバー

会長短信「春夏秋冬(63)」「己亥は、十分な準備をして果敢にチャレンジし、発展する年」 (平成31年1月31日)
会長短信「春夏秋冬(62)」「日本獣医師会創立70周年記念行事、盛大に開催」 (平成30年12月28日)
会長短信「春夏秋冬(61)」「獣医学術学会の充実と「生涯学習認定獣医師」称号の広告に向けて」 (平成30年11月2日)
会長短信「春夏秋冬(60)」「第30回世界牛病学会2018札幌、大成功を収める」 (平成30年9月28日)
会長短信「春夏秋冬(59)」「災害去って、学問の秋」 (平成30年8月20日)
会長短信「春夏秋冬(58)」「第75回通常総会における事業承認を踏まえた獣医師の主体的役割」 (平成30年7月17日)
会長短信「春夏秋冬(57)」「動物愛護とチーム獣医療の進展」 (平成30年6月5日)
会長短信「春夏秋冬(56)」「「認定VMAT講習会」の共同開催を推進します」 (平成30年4月27日)
会長短信「春夏秋冬(55)」「平成30年度に向けた活動のスタート」 (平成30年3月30日)
会長短信「春夏秋冬(54)」「獣医学術学会年次大会【大分】の成功と、医師会との連携によるワンヘルスのアピール」 (平成30年2月28日)
会長短信「春夏秋冬(53)」「戊戌は「変化」の年」 (平成30年1月26日)
会長短信「春夏秋冬(52)」「獣医学教育の国際水準化と獣医師会活動の国際貢献に向けたスタート」 (平成29年12月28日)
会長短信「春夏秋冬(51)」「平成30年度に向けた政策要請」 (平成29年12月6日)
会長短信「春夏秋冬(50)」「目まぐるしく活動したひと月」 (平成29年11月2日)
会長短信「春夏秋冬(49)」「日本及びアジアが世界の獣医師活動をリードする時代」 (平成29年10月3日)
会長短信「春夏秋冬(48)」「SFTS対応等による”One Health”の実践の強化に期待」 (平成29年8月22日)
会長短信「春夏秋冬(47)」「予測できない天変地異への万全の備え」 (平成29年7月31日)
会長短信「春夏秋冬(46)」「第74回通常総会を終え、課題多き三期目のスタートに思う」 (平成29年7月5日)
会長短信「春夏秋冬(45)」「平成29年度はアジアの獣医師が活躍する年に」 (平成29年4月19日)
会長短信「春夏秋冬(44)」「獣医学術学会年次大会【石川】の成功と、OIEとの連携への期待」 (平成29年3月31日)
会長短信「春夏秋冬(43)」「県議と獣医師との二足のわらじで歩みます」 (平成29年2月22日)
会長短信「春夏秋冬(42)」「獣医学部新設の検証なき矛盾だらけの決定に怒り」 (平成29年1月30日)
会長短信「春夏秋冬(41)」「私が選んだ2016年日獣10大ニュース」 (平成28年12月27日)
会長短信「春夏秋冬(40)」「“One Health”国際会議の成功を歓び、禍根を残す無責任な特区決定に憤りを」 (平成28年11月22日)
会長短信「春夏秋冬(38)」「諸事の繋がりを大切に」 (平成28年9月30日)
会長短信「春夏秋冬(37)」「AIPO活動の再開への期待」 (平成28年8月29日)
会長短信「春夏秋冬(36)」「日本獣医師会によるアジア地域獣医師研修事業の再開」 (平成28年7月15日)
会長短信「春夏秋冬(35)」「外圧に屈せず一枚岩の団結で」 (平成28年6月24日)
会長短信「春夏秋冬(34)」「広域的な被災ペット救護支援」 (平成28年5月26日)
会長短信「春夏秋冬(33)」「災害に備える」(平成28年4月21日)
会長短信「春夏秋冬(32)」「AMR アクションプラン」(平成28年3月23日)
会長短信「春夏秋冬(31)」「日本獣医師会獣医学術学会年次大会【秋田】開催迫る」(平成28年2月19日)
会長短信「春夏秋冬(30)」「第2回One Healthに関する国際会議の開催決定」(平成28年1月22日)
会長短信「春夏秋冬(29)」「驚きのニュース」(平成27年12月18日)
会長短信「春夏秋冬(28)」「医師と獣医師との連携による感染症の解明」(平成27年11月19日)
会長短信「春夏秋冬(27)」「獣医師一人一人との繋がりこそ力(チカラ)」(平成27年10月16日)
会長短信「春夏秋冬(26)」「獣医師によるOne Healthの実践」(平成27年9月18日)
会長短信「春夏秋冬(25)」「新役員体制でのスタート」(平成27年8月19日)
会長短信「春夏秋冬(24)」「第72回通常総会を終え、二期目のスタートに思う」(平成27年7月23日)
会長短信「春夏秋冬(23)」「世界獣医師会と世界医師会の共催によるOne Health国際会議で講演」(平成27年6月19日)
会長短信「春夏秋冬(22)」「中国獣医協会の皆様を迎え、有意義な意見交換」(平成27年5月22日)
会長短信「春夏秋冬(21)」「All Japan Pet Expo in Tokyo及びインターペット -人とペットの豊かな暮らしフェア- に参加して」(平成27年4月21日)
会長短信「春夏秋冬(20)」「獣医師として巣立つ卒業生の皆さんに対する期待」(平成27年3月16日)
会長短信「春夏秋冬(19)」「マイクロチップ装着による個体識別推進シンポジウムに出席して」(平成27年2月25日)
会長短信「春夏秋冬(18)」「魅力ある組織の発展を期待 -新たな挑戦元年に-」(平成27年1月22日)
会長短信「春夏秋冬(17)」「気持ちも新たに年を越します」(平成26年12月22日)
会長短信「春夏秋冬(16)」「日本医師会との連携シンポジウムを開催して」(平成26年11月14日)
会長短信「春夏秋冬(15)」「地区獣医師大会に出席して」(平成26年10月23日)
会長短信「春夏秋冬(14)」 「意識改革によって組織の整備・充実を」(平成26年9月25日)
会長短信「春夏秋冬(13)」 「人とペットとの共生社会の構築を」(平成26年8月21日)
会長短信「春夏秋冬(12)」 「地方獣医師会との連携を強化し、迅速な課題解決に向けた更なる決意」(平成26年7月17日)
会長短信「春夏秋冬(11)」 「国際馬術競技大会に不可欠な獣医師会の支援」(平成26年6月20日)
会長短信「春夏秋冬(10)」 「地方獣医師会との連携を強化し、迅速な課題解決に向けた更なる決意」(平成26年5月16日)
会長短信「春夏秋冬(9)」 「獣医師会の約束」(平成26年4月21日)
会長短信「春夏秋冬(8)」 「平成25年度獣医学術学会年次大会(千葉)が成功裏に終了」(平成26年3月20日)
会長短信「春夏秋冬(7)」 「共に歩む日本獣医師会に期待を」 (平成26年2月20日)
会長短信「春夏秋冬(6)」 「目標実現の年に」 (平成26年1月17日)
会長短信「春夏秋冬(5)」 「新しい年に向かって」 (平成25年12月18日)
会長短信「春夏秋冬(4)」 「私の活動の原点は動物愛護運動から」 (平成25年11月19日)
会長短信「春夏秋冬(3)」 「五十嵐幸男先生のご逝去に接し」 (平成25年10月17日)
会長短信「春夏秋冬(2)」 「広く国民の理解の下で狂犬病対策の推進を」 (平成25年9月17日)
会長短信「春夏秋冬(1)」 「本会の発展はスピードある対応と組織行動で」 (平成25年8月17日)
日本獣医師会とは