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会長短信「春夏秋冬」

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会長短信「春夏秋冬(2)」
「広く国民の理解の下で狂犬病対策の推進を」
 本年7月16日に台湾行政院農業委員会は、野生のイタチアナグマが狂犬病に感染していたことを公表しました。その後感染は拡大し、9月10日現在、イタチアナグマ124頭、ジャコウネズミ1頭、犬1頭が感染したということです。台湾は、これまで狂犬病の清浄地域でしたが、狂犬病のヒトへの感染は1959年以来52年ぶりで、これを受けて我が国の農林水産省及び厚生労働省は、台湾を狂犬病の非清浄地域として、同国から動物を輸入する際の衛生要件を強化しています。
 わが国における狂犬病の最終発生は、イヌでは昭和31年(1956年)、ヒトでは昭和29年(1954年)であり、その後半世紀以上にわたり発生は確認されていません。なお、昭和45年(1970年)にネパールからの帰国者1名と平成18年(2006年)にフィリピンからの帰国者2名が、帰国後に狂犬病を発症し、死亡しましたが、これらは海外で感染した輸入感染例であり、国内での感染ではありません。
 日本獣医師会では、7月17日に「台湾における野生動物の狂犬病発生について」、同24日に「台湾における野生動物の狂犬病発生に伴う狂犬病予防体制の強化について」、9月11日に「台湾における動物の狂犬病の発生状況について」の情報を地方会に通知しました。また、8月23日には「台湾における狂犬病発生に関する緊急会議」を、農林水産省及び厚生労働省の担当官も出席して開催し、情報の共有化と危機管理の確認をいたしました。今後も、新しい科学的情報が入手しだい、地方獣医師会を通じて皆様に情報を適切に提供してまいります。また、平成26年2月21日から開催される平成25年度獣医学術学会年次大会(千葉)で、市民公開の「狂犬病対策シンポジウム」を開催する予定です。ぜひ構成獣医師の先生方にご出席いただき、情報の共有化を図りたいと願っています。
 狂犬病の予防は、感染源となる動物にワクチンを接種し、免疫を付与して感染や流行を防止することですが、WHOガイドラインでは70%以上の免疫水準を常時確保する必要があるとされています。今回の台湾の野生動物における狂犬病の発生は、わが国同様の島国という地勢的にも感染源の侵入防止に恵まれ、50年以上にわたり狂犬病清浄地域として維持されてきたにも関わらず、重大な事態になりました。これを契機に、我々獣医師をはじめ関係者が、この事実を十分認識し、国家を挙げて防疫対策を強化しなければなりません。
 しかし、わが国の狂犬病の予防対策については、以前からワクチン接種率の低さが指摘されています。すなわち、平成23年度の家庭飼育犬の飼育頭数はペットフード協会の調べで1,193万頭であるのに対し、厚生労働省統計によると登録頭数は685万頭、ワクチン接種頭数は499万頭であり、実に登録率は57%、ワクチン接種率は42%と極めて低い水準です。
 従って、狂犬病予防法に基づく狂犬病対策は、広く国民の理解の下で国家的事業として推進する必要があります。狂犬病の最終発生から50年以上が経過し、危機感が薄らぐ中で、国民の皆さんに狂犬病のリスク管理の重要性を、飼育者の皆さんにワクチン接種の重要性を正しく理解していただけるように強く訴えなければなりません。また、我々獣医師は狂犬病対策事業が適切に運用されるよう努力し、狂犬病の清浄国としての誇りを持ち、防疫体制の一層の強化を図る必要があります。ご協力をお願いいたします。

平成25年9月17日 日本獣医師会会長 藏内勇夫



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