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会長短信「春夏秋冬」

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会長短信「春夏秋冬(16)」
「日本医師会との連携シンポジウムを開催して」
 公益社団法人日本医師会と公益社団法人日本獣医師会が主催する連携シンポジウム「人と動物の共通感染症を考える、狂犬病の現状と対策」が平成26年10月28日、東京・日比谷公会堂において開催されました。このシンポジウムは、両会が「One World, One Health」の理念を実践し、国民の安全で安心な暮らしに貢献するため、平成25年11月20日に取り交わした学術協定に基づくもので、第1回は人と動物の共通感染症の中で特に重要な狂犬病を取り上げました。
 当日は、火曜日の午前という診療時間中にも関わらず、多くの獣医師や医師、さらに学生の皆さん方700名以上が最後まで熱心に参加され、活発に質疑応答がなされる等、盛会であったことに、日本獣医師会を代表して大変うれしく思い、ご協力された地方獣医師会と構成獣医師の皆さんに感謝いたします。
 私は、横倉義武日本医師会長と共に主催者のあいさつの中で、「日本獣医師会が日本医師会との学術協定を取り交わして1年を迎えたこの時期に、第1回の連携シンポジウムを開催することが出来たことは、大変意義があります。医療と獣医療を介して、人と動物の健康維持に携わる医師と獣医師が連携を深めることは、学術協定を実践した証であり、今後も更に情報を共有し、国家の発展や国民の健康な暮らしに役立ててまいります。」とお話をしました。
 シンポジウムは、岐阜大学の石黒直隆教授と国立感染症研究所の森川茂部長が座長を務められ、国内外でご活躍の5名の先生方に講演をいただきました。いずれのご講演も内容が充実していて、時間の経過が早く感じられました。
 最初の講演は、感染症研究所獣医科学部の井上智先生による「我が国における狂犬病対策の現状と課題」についてでありました。その中で先生は、アジアで唯一の狂犬病清浄国であるわが国で狂犬病対策を考える上で、医療と獣医療が連携して動物由来感染症の人への健康危害防止を図る役割や意義は大きい。なお、国内で狂犬病が発生した場合の防疫体制が地方自治体で整備されているが、狂犬病が疑われた場合に医療施設に連絡されなければ意味がない。そのためにも、医療と獣医療の現場で、狂犬病が適切に鑑別診断できることが大切であると結ばれました。
 次の講演は、台湾大学教授であり台湾狂犬病専門家会議議長を務めれられているChang-Young Fei先生による「2013年前後の台湾における動物の狂犬病の疫学研究」でありました。台湾において人では1959年以降、動物では1960年以降、狂犬病発生の報告はなく、WHOは1961年に台湾において狂犬病が根絶されたことを宣言しました。しかし、2013年に野生動物のイタチアナグマで狂犬病の感染が確認されて以降、イタチアナグマの狂犬病集団発生が認められ、死亡例が山麓や道路脇、公園で多数見つかり、発症したイタチアナグマが家の中に侵入して人を咬傷する事例が生じる等、清浄国であっても狂犬病の侵入リスクがある。また狂犬病の集団発生に伴い家庭飼育のペットの遺棄が増加するなど新たな問題が生じていると結ばれました。
 三番目の講演は、フランスの狂犬病WHOコラボレーティングセンターのEmmanuelle Robardet先生による「世界における動物の狂犬病発生抑制の現状と課題」についてでした。先進国では犬の狂犬病は、一斉の集団予防接種により防疫体制が整備されたが、アライグマ、スカンク、マングース等の野生動物では、非経口あるいは経口投与によるワクチン効果はいまだ検討の余地がある。またコウモリなどの翼手目へのワクチン開発は検討されていない等、多くの課題がある。また、狂犬病の未発生国においてワクチン接種は財政的に負担であるが、長期的に見ると財政的にも十分効果があるとの発言に大変興味を持ちました。
 四番目の講演は、洛和会ヘルスケアシステム 洛和会丸太町病院長の二宮清先生による「わが国で36年ぶりに発症した人の狂犬病事例と対応上の課題」についてでした。二宮先生は、フィリピンで狂犬病に感染し、帰国後に発症したわが国で36年ぶりの人の狂犬病事例を経験され、その際の臨床経過、検査所見、解剖所見、感染症予防対策のほか、診療上の課題を講演されました。特に、本症例の診断にあたって、本人だけでなく家族からも渡航歴や動物との接触歴を聞くこと、特有の症状は数日間しか出現しないので診断が困難であること、確定診断後の対症療法の継続判断と家族へのケアが不可欠であること、発症の公表後にワクチン需要が急増するので供給体制の整備が重要であること、医療従事者への感染対策が求められることを講演されました。
 最後の講演は、大分大学医学部教授の西園晃先生による「狂犬病の病原性と予防・治療法の現状」についてでした。人への感染は感染動物からの咬傷を介してであり、暴露した場合でも発症前であればワクチンの連続投与による暴露後発症予防治療が有効である。暴露後ワクチンを行わないで、神経保護作用と治療的昏睡の誘導と呼吸管理を行うミルウォーキー・プロトコルは、狂犬病治療において積極的に推奨されていないと話されました。
 わが国は、世界で数少ない狂犬病の清浄国であり、アジアでは唯一狂犬病が発生していませんが、アジアやアフリカをはじめ各国で毎年約5万5千人が死亡しています。人や物資の流れのグローバル化が進むことにより、狂犬病の侵入リスクは高まっているので、発生が確認されていない状況を維持する上で、狂犬病の危機管理に対する不断の備えが一層重要であることを痛感しました。

平成26年11月14日 公益社団法人 日本獣医師会 会長 藏内勇夫



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