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獣医学術振興・普及

獣医学教育改善

獣医学教育とは

「いのち」を学び、「いのち」を知る。未来への夢に若さを託す獣医師の卵たち。

毎年、獣医師国家試験に合格する獣医学生の数は、約1,000名。「女性の時代」と言われる時代背景もあってか、最近、女子学生も大変増加しています。
獣医学教育の履修過程は大学で6年間。医学部に匹敵する多様なカリキュラムをこなし、動物たちとのつきあいを深めながら、厳しい臨床実習などを乗り越えてゆかなければなりません。
未来への夢に燃えて、動物の「いのち」の不思議と驚異を学ぶ獣医師の卵たち。その目は希望に輝いています。

獣医師になるには―

獣医師になるためには,まず,獣医学科のある大学に入学し,6年間の獣医学教育を履修したのち,農林水産省が行う獣医師国家試験を受験しなければなりません。 現在,獣医学科を設置している大学は,国立大学10校(北海道大学,帯広畜産大学,岩手大学,東京大学,東京農工大学,岐阜大学,鳥取大学,山口大学,宮崎大学,鹿児島大学),公立大学1校(大阪府立大学),私立大学5校(酪農学園大学,北里大学,日本獣医畜産大学,日本大学,麻布大学)で,学生定員は全校で930人(うち国立大学10校の定員は330人)となっています。
わが国の獣医学教育制度は,昭和53年以前は「学部4年制」でしたが,その後制度が2度にわたって改正さ れ,昭和59年4月の新入学生から医学部・歯学部と同様に現在の「学部6年制教育」に改められました。
カリキュラムは,大学によって若干の違いがありますが,だいたい,入学してから最初の2年間は教養の科目が中心となり,あとの4年間で獣医学に関する専門教育を受けることになります。
専門科目は多種にわたり,大学によって設置している科目及び科目名が若干異なりますが,家畜解剖学,家畜生理学,家畜生理化学,家畜薬理学,家畜微生物学,家畜寄生虫学,獣医病理学などの基礎獣医学,家畜内科学,家畜外科学,家畜臨床繁殖学,家畜臨床病理学,獣医放射線学などの臨床獣医学のほか,獣医公衆衛生学,家畜伝染病学,家畜衛生学,実験動物学,魚病学などの応用獣医学について講義及び実習あわせて履修しなければなりません。
6年間の獣医学教育を履修すると,初めて獣医師国家試験を受験する資格が得られますが,この国家試験は毎年1回,3月上旬に行われています。
試験は,学説に関する試験及び実地に関する試験に分けて行われ,学説に関する試験の科目は,家畜解剖学,家畜生理学,家畜生理化学,家畜薬理学,家畜病理学,家畜微生物学,家畜寄生虫(病)学,家畜内科学,家畜外科学,家畜臨床繁殖学,獣医放射線学,家畜衛生学,家畜伝染病学,獣医公衆衛生学,毒性学,実験動物学,魚病学の17科目となっており,実地に関する試験は,獣医学全般となっています。
合格者数及び合格率は,平成20年が996名,約79%, 平成21年が983名,約78%,平成22年が1,111名,約84%となっています。
この獣医師国家試験に合格しただけでは獣医師の資格は得られません。国家試験に合格したら,農林水産省に免許の交付申請の手続きを行い,獣医師名簿に登録され,農林水産大臣による獣医師免許証を取得して初めて獣医師としての資格を取得することができるのです。
なお,獣医師の資格を必要とする国家公務員,地方公務員の場合は,まず,獣医師国家試験に先駆けて行われる公務員試験に合格しなければなりませんが,せっかく公務員試験に合格しても,獣医師国家試験に合格しないと採用されませんので,この点に注意する必要があります。
そのほかの農業共済団体や民間企業などは,それぞれ独自の採用試験を行っていますので,それらのところに就職を希望する場合には,事前にどのような試験があるのかなどを十分に調べておく必要があります。
産業動物にしろ,小動物にしろ,臨床業務に従事する獣医師は,大学を出て国家試験に合格したからといってすぐに独り立ちできるわけではなく,ある程度(少なく とも2~3年)の臨床経験を積む必要があります。この ため,産業動物関係では農業共済団体の家畜診療所などに勤務し,先輩獣医師と一緒に実地に診療活動に従事しながら経験を積んでいかなければなりません。小動物の場合は,動物病院に研修医として勤務しながら勉強したり,獣医系大学の付属動物病院で研修することが一般的なようです。
いずれにしても,獣医師になる以上,獣医師に課せられた社会使命を十分に認識し,専門家としての職責を果たさなければなりません。

獣医学教育改善

今日、獣医師及び動物医療は、畜水産食品の安全確保やBSE・鳥インフルエンザ等の共通感染症対策をはじめ、畜産業等の動物関連産業の振興、家庭動物の保健衛生の向上、更には、動物愛護福祉、自然環境保全など社会経済の発展、国民生活の安定に重要な役割を担っています。
しかしながら、これらの多様な職責を担う獣医師を養成する獣医学教育の実施体制については、大学における教育年限が4年から6年に延長されてすでに30年が経過しますが、要となる教員体制の確保さえ遅々として進展していないのが実情です。国際認定基準に適合する大学はなく、また、獣医師国家試験の出題範囲に対応した講座(研究室)数を大きく下回る大学も存在するのが現状です。
日本獣医師会では、こうした状況を改善するために関係者の皆様と連携して様々な取り組みを続けています。

獣医学教育改善に向けた活動の経過

1 第Ⅰ期(教育年限の延長から大学院連合獣医学研究科の設置まで)

(1)昭和45年以降 :
(社)日本獣医師会が獣医学教育の年限の延長を文部省、農林省等に要請

(2)昭和46年 :
日本学術会議が、獣医学教育の修学年限を4年から6年に延長するよう内閣総理大臣に勧告

(3)昭和47年 :
農林省が、獣医学教育年限の延長を文部省に要請

(4)昭和51年 :
文部省の「獣医学教育の改善に関する調査研究会議」が、獣医学教育改善のため、修士課程積み上げ方式による6年制教育の実施の必要性を文部省大学局長に報告

(5)昭和52年 :
獣医師法の一部改正により、53年度入学者から修士課程積み上げによる6年制教育が開始

(6)昭和58年 :
学校教育法の一部改正により、59年度入学者から獣医学教育課程の修業年限が6年に整備

(7)昭和58年 :
「獣医学教育の改善に関する調査研究会議」が、文部省大学局長に報告
ア 6年制教育に当たっては、学科を独立の学部とすることが望ましい
イ 国立大学については、獣医学科の総定員を変更しないものとして学部移行するとすれば、国立10大学の再編整備が必要

(8)昭和60年 :
国公立大学獣医学協議会が、獣医学教育改善に当たっての基本的考え方を取りまとめる
ア 国立大学の再編整備を推進
イ 再編整備は現有の教官数を基本
ウ 学部並み以上の規模とし、大学院の併設

(9)昭和62年 :
(社)日本獣医師会が、国公立獣医学系大学の再編整備の促進を文部省等に要請

(10)平成元年 :
文部省は、「再編整備は、学内事情等から進展しないが、今後とも地域コンセンサスを待ちながら対応する。」としたが、一方、連合大学院の基幹校の決定を受け、平成2年に岐阜大学及び山口大学に大学院連合獣医学研究科が設置


2 第Ⅱ期(団体、大学、文部科学省等における獣医学教育改善目標の設定等)

(1)平成9年 :
(財)大学基準協会が、「獣医学教育に関する基準」を定め、この中で整備目標を設定
ア 1大学の入学定員は60人を標準、120人を超えない
イ 専任教員数は、学生60人までで72人以上、うち18人は教授
ウ 付属施設として、獣医臨床センターと先端的動物研究センターの整備
エ 自己点検・自己評価体制の整備

(2)平成13年 :
獣医学教育のあり方に関する懇談会(座長:黒川 清(日本学術会議副会長))が、関係7団体からなる獣医学教育関係者連絡会議(代表:(社)日本獣医師会会長 五十嵐 幸男)からの獣医学教育充実の方向についての諮問に対し答申を取りまとめる
ア 学科を学部規模に充実。講座数(教授数)を国家試験出題科目に対応するよう確保するとともに入学定員に応じた充分な数を有する教員規模に整備
イ 国立大学の獣医学科を3~4の獣医学部に再編整備

(3)平成13年 :
国立大学農学系学部長会議が、「獣医学教育改善のための基本方針」をとりまとめる
ア 獣医学教育組織の規模は、大学基準協会基準を満たすことが望ましい。72人以上の教員からなることが望ましいが、直ちに実現できない場合は18人以上の教授、54人程度が最低限必要
イ 自助努力で改善できない場合は再編を考える。再編は全国を5~6地区に分け産業基盤を考慮し、既存の施設を利用

(4)平成13年 :
全国大学獣医学関係代表者協議会が、「獣医学教育基準の達成に関する要望書」を獣医学系大学学長に提出
ア 全ての国立大学が再編に参加し、北海道大学、東京大学、九州大学に新しい獣医学部の設置を目指す
イ 市立大学については、建学の精神に沿い学部教育の整備・充実に一層の努力

(5)平成15年 :
全国大学獣医学教育代表者会議が、調査結果を取りまとめる
ア 教員の質の改善:代表者会議が教員の教育実績、論文数、社会活動実施状況の報告
イ カリキュラムの改善:①非常勤講師による短期集中講義の解消、見学実習の改善を図り、臨床教育の充実と公衆衛生教育の強化。②教員数の増加による新たな領域の教育充実。③卒業論文を必須科目から選択科目に変更し、5~6年次の選択制、コース制の導入
ウ 教育システムの改善:①付属家畜病院の充実、産業動物臨床センター(公衆衛生教育センター)の設置、②教員数の増加により、最低でも国家試験関連18科目の教育体制と技術教育(臨床ローテーション実習体制)の確保、25~28講座、教員数87~96人を目標

(6)平成16年 :
文部科学省の「国立大学における獣医学教育に関する協議会(座長:梶井 功(東京農工大学名誉教授))」が、報告をとりまとめる
ア 関係者の努力と基盤整備:国立大学の獣医学教育の充実のためには、関係者の不断の努力と法人化による経営努力を活用した基盤整備が必要
イ 大学を超えた統合:大学を超えた獣医学科の統合メリットは、有効かつ重要。統合は大学間の自主的話し合いと地域社会との合意形成が必要
ウ 教育研究体制の充実:教育目標の明確化と目標達成のためのカリキュラムを校正したうえでスタッフの配置が必要。教育体制の充実の中心は臨床分野。教員配置の数値目標は掲げないが、国立大学農学系学部長会議が決議した改善策の精神を基本に据え、自主的・自立的に最大限の努力
エ 国の支援:効果的教育サービスが行い得る大学に対する重点支援等、充実へのインセンティブが働くことが必要。複数の大学の有機的連携により幅広く、厚みのある機能強化を図る大学に対する国の支援
オ 評価・検証:大学の改善への取り組みの評価・検証とその結果を踏まえ、更なる検討が行われるべき

(7)平成13年以降 :
(社)日本獣医師会が、前記(2)の答申を受け、平成13年度以降毎年度、獣医学教育体制の整備・充実を文部科学省等に要請
ア 国立大学:全国10国立大学の獣医学科を獣医学部体制に再編・整備。
イ 公立私立大学:学生入学定員に応じた教員数と私設・設備を有する学部規模への整備についての十分な助成

3 第Ⅲ期(獣医学教育改善に向けての外部評価取り組みの検討)

(1)平成13年 :
全国大学獣医学関係代表者協議会が、同協議会の横断的評価委員会において、自己点検統一フォーマットによる横断的評価を開始。「獣医学教育の横断的評価調査報告」を取りまとめる

(2)平成14年 :
中央教育審議会が、第三者による外部評価システムの導入等を内容とする「大学の質の確保に係る新たなシステムの構築について」を答申

(3)平成14年 :
私立獣医科大学協会が、「私立獣医科大学における獣医学教育の相互報告書(平成6年度~12年度)」を取りまとめる

(4)平成16年 :
全国大学獣医学関係代表者協議会が、獣医学専門教育課程のカリキュラムを「代表者協議会標準カリキュラム」として取りまとめる

(5)平成16年 :
国立大学法人法が施行され、国立大学法人制度が発足。文部科学大臣の示す中期目標の期間における大学の業務実績についての文部科学省国立大学法人評価委員会による評価制度が発足
一方、学校教育方が改正され、大学の教育・研究システムの評価精度が整備
ア 各大学における自己点検・評価の実施(学校教育法第69条の3第1項)
イ 第三者機関による認証評価の実施(学校教育法第69条の3第2項)

(6)平成16~17年 :
(社)日本獣医師会が、同会の学術・教育・研究委員会において、全国獣医学関係代表者協議会等の関係団体等とともに、大学が自己点検・評価を行うに当たり指標となるべき獣医学専門教育課程のカリキュラムを「標準的カリキュラム」として整備

(7)平成17年 :
(社)日本獣医師会が、文部科学省、農林水産省、全国獣医学系大学学長に対し、獣医学教育の実質的改善を推進するため、日本獣医師会が定めた「標準的カリキュラム」を改善の進捗状況の自己点検・評価を行うに当たり、達成度の指標とすべき旨を提言

(8)平成17年 :
私立獣医科大学協会が、「私立獣医科大学における獣医学教育充実に関する短期改善目標の達成度調査報告書(平成14・15年度)を取りまとめる

(9)平成17年 :
(社)日本獣医師会が、獣医学教育の質の評価システムを文部科学省の指導の下で関係機関と共同で立ち上げることが必要との判断の下、平成17年から同会の学術部会学術・教育・研究委員会において「獣医学教育の外部評価のあり方」の検討を開始。18年3月に議論の経過を中間とりまとめ(案)として整理し、全国大学獣医学関係代表者協議会に提示、意見を聴取

(10)平成18年 :
国公立大学獣医学協議会が、私立大学と連携して相互評価を行うに当たり、その前段階としての国立各大学の自己評価の対応を検討するための小委員会を立ち上げ

(11)平成19年 :
(社)日本獣医師会が、同会の学術部会学術・教育・研究委員会において「獣医学教育改善に向けての外部評価のあり方」を取りまとめる

(12)平成19年 :
(社)日本獣医師会が、文部科学省、農林水産省、全国獣医学系大学学長、日本学術会議、全国大学獣医学関係代表者協議会に対し、獣医学教育の改善に向けた外部評価の取り組みの推進とともに、獣医学教育課程の入学定員抑制の維持を要請

(13)平成19年 :
私立獣医科大学協会が、文部科学省に対し、獣医学教育の質の改善が優先課題であるとし、入学定員抑制策の堅持とともに、社会的要請に応え得る獣医師養成施設としての既存大学の整備充実の指導・支援を要請

(14)平成19年 :
私立獣医科大学協会が、「私立獣医科大学における獣医学教育の相互評価報告書(平成13~17年度)」を取りまとめる

4 第Ⅳ期(高度専門職業人要請課程としての獣医学教育改善等の方策の検討)

(1)平成20年8月 :
(社)日本獣医師会が、国公立大学の法人化以降における獣医学教育をめぐる環境の変化、平成16年の文部科学省「国公立大学における獣医学教育に関する協議会報告」の取りまとめ以降の各獣医学系大学における教育改善の進捗状況を踏まえ、今後の獣医学教育改善の推進に資するべく関係省庁(文部科学省、農林水産省)、全国大学獣医学関係代表者協議会、日本学術会議、日本獣医学会など関係者による獣医学教育改善に関する関係者懇談会を開催

(2)平成20年9月 :
文部科学大臣が中央教育審議会に「中長期的な大学教育の在り方について」を諮問。その検討の中で社会的要請の特に高い分野における人材養成に関し、医療とともに獣医学が特記され、該当分野の教育課程の充実、教育活動の評価、社会との連携等の在り方が論点とされる

(3)平成20年11月 :
文部科学省高等教育局に「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(座長:唐木英明 日本学術会議副会長)」が設置。獣医学教育内容、教育の質の保証、教育研究体制などの在り方について検討が開始

(4)平成20年12月 :
農林水産省の獣医事審議会計画部会(部会長:山根義久 日本獣医師会会長)において、「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」の見直しの観点から、産業動物、小動物、公務員、民間・研究の獣医師各職域分野ごとに基本方針を定めるにあたっての留意すべき事項について検討が開始

(5)平成21年8月 :
私立獣医科大学協会が、「私立獣医科大学における臨床教育および動物病院の相互評価報告書」を取りまとめる

(6)平成21年11月 :
国際獣疫事務局(OIE)が、獣医学教育に関する関係国(者)会議を開催し、「より安全な世界のための獣医学教育の新展開」についてを勧告

(7)平成22年2月 :
(社)日本獣医師会が、獣医学臨床教育における臨床実習の質の改善に向けての「参加型臨床実習」の導入に向けての条件整備について関係者間の共通理解を得るべく「獣医学臨床教育の改善(参加型臨床実習の在り方)に関する関係者懇談会」を開催

獣医学教育改善に向けた日本獣医師会からの提言・要請活動等

参考資料・関係リンク等

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