II.日本獣医師会及び地方獣医師会がともに対応する事項 |
1.狂犬病予防対策に関する事項
(1) |
本件については,厚生労働省に対し,[1]「狂犬病予防法に基づく犬の登録等の徹底について」(平成14年6月11日付け健感発第0611001号.結核感染症課長通知)に基づき都道府県が代表して市町村事務を含めた狂犬病予防業務の調整を図ることについての自治体に対する指導強化,[2]犬の登録制度におけるマイクロチップによる個体識別の導入等について,要請活動を強化してきたところである. |
(2) |
本年度においても,上記事項に加え,全国及びブロック単位での狂犬病実働演習の実施による初動防疫体制の点検整備等の要請を行った. |
(3) |
要望内容の対応については,平成14年度の地区獣医師会連合会会長会議において,今後の対応の考え方を取りまとめたところである(平成14年12月13日付け14日獣発第188号【別紙1】略).今後とも,各地方獣医師会の実情に即した事業への取り組み体制の整備をはじめ,行政対応を図る必要がある. |
(4) |
犬の個体数の把握は全頭登録制度の下でその徹底の確保は行政部局の個有事務とされているが,獣医師会においても行政当局からの委託関係により支援協力体制を進めていく必要がある.なお,その他の動物についての個体数把握を犬と同様の制度下におくことについては公益確保の観点から,その必要性について十分な論議が必要となる.
本会においては,共通感染症対策の一層の普及・啓発の観点から,3月に日本学術会議との共催により「狂犬病予防シンポジウム」を開催した.また,当面の狂犬病対策の取り組みの考え方を昨年6月の第2回理事会において(【別紙2】略)のとおりとりまとめたので参考にされたい. |
(5) |
なお,国においては,昨年,犬等の輸入検疫制度を改正し,[1]マイクロチップによる個体識別,[2]狂犬病予防注射の実施,[3]血液検査による狂犬病抗体の確認等,国際基準に基づく検疫システムを導入した新しい制度に移行した.新制度においては,マイクロチップの注入,狂犬病予防注射,検査のための血液の採取と処理等診療獣医師の協力が必要とされていることから,本会としても,構成獣医師への関係情報の普及等新制度の円滑な実施のための協力に努めている. |
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2.家畜保健衛生所の機能の拡充・強化 |
(1) |
家畜保健衛生所の今後のあり方については,産業動物委員会等においての検討結果をふまえ,農林水産省に対し,家畜保健衛生所を従前の家畜防疫対策に加え,共通感染症対策,食の安全安心対策,小動物医療対策を含め地域の動物衛生対策を一元的に担う中核的機関として位置付けるため,[1]家畜保健衛生所法を改正の上,[2]名称を「動物保健衛生所」に改称するとともに,[3]その組織・機能の拡充・整備を行うことについて要請を行ったところである. |
(2) |
平成17年度からは本会事業運営組織が職域別部会制に再編整備されるが,家畜保健衛生業務の今後のあり方については,畜産・家畜衛生部会の中で引き続き論議を深めていく. |
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3.小動物医療関係対策に関する事項 |
(1) |
小動物医療施策の推進については,平成16年10月,農林水産省消費・安全局衛生管理課に小動物獣医療を担当する小動物獣医療班が設置され,国としての対応強化が図られた. |
(2) |
小動物獣医療班の設置を受け,小動物医療の高度化,適正化対策について,本会から農林水産省に対し,[1]小動物診療獣医師に対する卒後・生涯研修体制の体系的整備,[2]高度化,多様化及び専門化等の需要動向に対応した小動物獣医療提供体制の整備,[3]動物医療補助者制度の創設による法規制とその健全育成,[4]緊急災害時動物対策のあり方に関する検討・整備,[5]家庭用動物飼料の品質確保対策と獣医師専用処方食(療法食)の表示等流通のあり方の検討・整備等の要請を行った. |
(3) |
現在,農林水産省においては「小動物獣医療に関する検討会」を設置し,小動物医療提供の現状の課題を整理した上で今後の対応のあり方を協議・検討の上,7月に報告をとりまとめることとされている.本会からも関係委員の推薦を行い,小動物開業代表の専門家として3人の委員が選任されたところである.本会においても平成17年度から事業運営組織が職域別部会組織として再編整備されるが,新たに再編された小動物部会において引き続き検討を行う. |
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4.獣医師倫理の向上 |
(1) |
本会における獣医師倫理対策については,平成16年11月,獣医師道委員会において「産業動物医療の指針」が策定され,同指針の策定をもって,「獣医師の誓い―95年宣言」及び「小動物医療の指針」とあわせ,日本獣医師会における獣医師倫理に関する規程を整備した.
なお,これらの規程は,関係資料,関係法令などとあわせて取りまとめ,「日本獣医師会獣医師倫理関係規程・資料集」として編集し,各地方獣医師会あてに送付し,獣医師倫理の向上に関して構成獣医師に対する一層の指導を求めるとともに,各獣医学系大学にも送付し,獣医師倫理に関する教材としての活用を要請した. |
(2) |
本件に関連し,一部の獣医師及びそのグループの法令違反等の倫理問題等の対応については,地方獣医師会におかれても関係法令遵守についての指導等の徹底とあわせ,違反事例については都道府県当局と緊密な連携をとり,指導強化,国への報告等を行うよう願いたい.
なお,小動物医療をめぐる倫理対応と課題については,本日,関東地区獣医師連合会と東京都獣医師会から現状と課題,これに対する対応の方向について報告と説明がなされる. |
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5.動物愛護対策(学校飼育動物対策を含む.)の推進に関する事項 |
(1) |
動物愛護管理法に基づく動物愛護管理対策の整備に向けての対応については,本会の動物愛護福祉委員会において検討の上,平成16年10月に委員会報告書がとりまとめられた. |
(2) |
一方,平成16年下半期以降,環境省及び各政党においても,法改正に向けての検討が本格化しているところであり,本会としては,動物愛護委員会の報告を受けて,[1]動物の個体識別による所有の明示の義務化,[2]国,都道府県における動物愛護施策取組体制の整備,[3]動物取扱業に対する規制措置の整備,[4]危険動物対応の強化,[5]引き取り犬・猫の譲渡の推進と引き取り対象動物の拡大,[6]実験動物福祉規定の整備,[7]学校飼育動物の適正飼養等について,自由民主党をはじめ公明党,民主党の関係部会において要請活動を行った. |
(3) |
また,学校飼育動物対応については,動物愛護施策の観点から環境省に要請活動を行うとともに,平成16年度においては,文部科学省及び獣医師問題議員連盟に対し,獣医師政治連盟から[1]学校飼育動物活動の推進と「学校獣医師制度」の確立について[2]初等教育課程における学校飼育動物活動の標準化対策の推進について要請したところである.なお,本件に関する獣医師会の対応については,学校飼育動物委員会において検討が行われ,本年度末には報告書が提出される. |
(4) |
マイクロチップを利用した動物個体識別については,引き続き,動物ID普及推進会議(AIPO)を推進母体として本会と動物愛護団体が連携して実施しているところであるが,地方獣医師会においても,地方自治体の運営する動物愛護関係部署におけるリーダーの設置及びデータ読み取りについて積極的な協力が得られるよう一層の働きかけをお願いしたい. |
(5) |
なお,本件については,地方獣医師会においても,動物愛護管理法に規定される推進協議会の設置及びその円滑な運営ならびに学校飼育動物の適正飼養に関する支援等について引き続き尽力されるようお願いする. |
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6.勤務獣医師の処遇改善に関する事項 |
(1) |
家畜保健衛生所における施設・機器の整備については,「2.家畜保健衛生所の機能の拡充・強化」において既述したとおり,家畜防疫・衛生対策の一環として農林水産省に対して要請を行ったが,公務員獣医師に関する処遇対策については,家畜衛生職員会・全国公衆衛生獣医師協議会とも連携しながら,対応の方向等を検討していくこととしている.地方獣医師会においても,それぞれ三者協議の場を設けて積極的に情報交換しながら対応していく必要がある. |
(2) |
なお,本件については,別途,日本獣医師政治連盟から獣医師問題議員連盟に対し,公務員獣医師の処遇改善策として,[1]内閣府食品安全委員会,農林水産省,厚生労働省,環境省をはじめ,都道府県等の動物医療関係行政組織の幹部ポストに獣医師職員を積極的に登用するとともに,[2]公務員獣医師については,医師等の他の専門職の処遇水準と均衡を欠くことのないよう待遇改善を図ることについて,要請を行った. |
(3) |
保健所長への獣医師の登用については,昨年,厚生労働省の「保健所長の職務の在り方に関する検討会」において検討がなされた結果,今後は獣医師を含め「医師と同等またはそれ以上の高い専門性を有する者」に対して例外的に登用を認めることとし,一定の前進が図られた. |
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7.産業動物診療技術料に関する事項 |
(1) |
本件については,人事院勧告をベースとした一定のルールにより予算単価が算定されることとなっており,制約があるが,農林水産省に対し各種衛生対策事業における雇い上げ獣医師手当の額が医師等の医療専門職における水準と均衡を欠くことがないよう要請した. |
(2) |
デフレ環境下,また,公務員を含め各種賃金が引き下げ傾向にある中で,技術報酬の引き上げについては厳しいものがあるが,地方獣医師会においても,各県家畜畜産物衛生指導協会と連携しながら,上部団体を通じての要請実現に向けて活動を推進願いたい. |
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8.災害時の動物救護対策の検討 |
(1) |
平成16年10月に発生した,新潟県中越大震災については,新潟県獣医師会において発生当初から被災動物の救護活動が展開されたところであり,日本獣医師会としても,各地方獣医師会に現地の情報を提供するとともに,緊急災害時動物救援本部(日本獣医師会及び動物愛護4団体により構成)の一員として救援物資の搬送,ボランティアの受付等に協力してきたところである.今回の救護活動における新潟県獣医師会の多大なご尽力及び各地方獣医師会のご理解,ご支援に改めて感謝申しあげる. |
(2) |
災害時動物救護対策については,本会の動物愛護対策の一環として,環境省の他,関係各所への要請対応等を実施してきたところである.国の定める防災計画においても動物対策が位置付けられているが,具体的な対応の方策の検討を農林水産省に対し要請を行った. |
(3) |
なお,本件に関しては,阪神淡路大震災,有珠山噴火災害,三宅島噴火災害等の経験をふまえ,それぞれの地区で対応マニュアルが作成されている.各地区の実情,また,被災実態等により,その救護活動の地域における対応は多様化している.各地方獣医師会においてもそれぞれの地域の実態を考慮して具体的な対策を協議し,整備しておく必要がある. |
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9.獣医事関係の国際交流に関する事項 |
本件については,本会としてもその意義を理解し,「The World Veterinary Day協会」が実施する催事について後援を行ったところである.この催しは,獣医師及び獣医療関係者の役割についての認識を高めることを目的として行われる行事であり,本会としても実施主体からの要請をふまえ可能な範囲で支援していきたい. |