関東地区獣医師会連合会・東京都獣医師会からの課題提起 |
最近の小動物医療を巡る課題と対応の方向 |
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1.小動物医療を取り巻く環境 |
(1) |
小動物医療に対する社会評価の進展
小動物臨床分野への獣医師の新規参入が継続的に増加,都市部への臨床獣医師の回帰現象
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特に,小動物医療の予防医療分野において過当競争が激化.いきおい診療トラブルが増加
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小動物医療と飼育者(消費者)との信頼関係確保上の問題 |
(2) |
家庭動物の飼育の普及
小動物医療に対する需要の増加と動物飼育関連業の発展,裾野が拡大
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新たなビジネスチャンスのツールとしての小動物医療の取り込み
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小動物医療と大型流通関係資本との結びつき
↓
小動物医療分野において開業者と大型資本との対立の構図 |
(3) |
情報化社会の発達(情報のユビキタス,モバイル化)
IT媒体等の多様な手法により,情報と物及びサービス提供が同時進行
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規制,取締の困難化,法令違反行為が増長の兆し |
(4) |
各種規制の緩和の流れ
規制緩和,規制改革が国家的命題
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人の医療分野においては,健保制度における診療報酬等のあり方,株式会社の参入等の医療制度改革,免許更新制の導入等が検討課題,高度専門医療等消費者の視点をふまえた広告規制の緩和が実施
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現行の獣医師制度及び動物医療制度の堅持とこのための信頼ある動物医療提供体制の整備が課題,規制の強化には,公益確保上の見地からの確固たる理由が必要 |
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2.課題及び問題の所在 |
(1) |
小動物臨床の競争状況,診療獣医師の飽和と資質及び技術水準の低下
ア. |
予防動物医療への過度の傾斜
[1]ワクチン,フィラリア予防薬,ノミ・ダニ駆除剤の処方,[2]療法食,サプリメントの販売等へのシフト |
イ. |
一部に過当競争状況への突入
収益重視の運営,顧客誘引活動,診療トラブル(高額料金,過剰診療,診療過誤等)の増加による動物飼育者との信頼確保上の問題 |
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(2) |
小動物関連産業に対する需要の拡大(2兆円に迫る規模にまで成長)
ア. |
異業種,量販店等の大型資本の動物医療への参入:[1]生体,ペットフード,関連用具等の販売から理美容,動物医療までの一貫体制,[2]動物医療の支配,勤務獣医師の取り込み等 |
イ. |
大型資本による診療施設のネットワーク化,グループ・チェーン化,多 角経営化の動き |
ウ. |
薬局,薬店(ドラックストア),ペットフード販売店舗における動物用医薬品の販売 |
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(3) |
広告,宣伝等の消費者向け情報の氾濫
動物用医薬品のネット販売,ネットオークション,個人輸入代行等 |
(4) |
流通規制の緩和,経済特区等による異業種参入機会や消費者の利便性の確保の動き |
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3.対応の方向等 |
(1) |
小動物医療の質の確保等
ア. |
予防動物医療の視点から診断・治療,保健衛生指導等に力点をおいた診療施設の運営及び地域における連携体制の整備
[1]専門分化への対応,[2]卒後臨床研修,生涯研修体制の整備,[3]一次診療施設と高度専門機能機能診療施設,救急機能診療施設との地域連携,[4]動物診療補助者の法令上の位置づけと健全育成 |
イ. |
診療獣医師の余剰,受け皿対策,勤務獣医師対策 |
ウ. |
地方獣医師会への組織化の結集,会員加入の積極推進と獣医師会主導による地域連携体制の整備 |
エ. |
共有の利益の確保( 医薬品製造販売メーカー,デーラー等との連携) |
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(2) |
行 政 対 応
ア. |
小動物医療提供体制の一層の整備の促進
獣医療法に基づき農水大臣が定める「獣医療提供体制整備基本方針の見直し」の検討
↓
衛生管理課小動物獣医療班の設置,小動物獣医療に関する検討会の開催 |
イ. |
獣医師職業倫理対策への配慮と消費者保護と選択の容易化確保の観点に立った獣医師広告制限規定の運用(獣医師会会員診療施設,生涯研修事業認定獣医師,獣医師専門医,夜間救急診療施設等) |
ウ. |
法令違反者対策等の獣医事監視,指導,取り締まり体制の整備
(ア) |
法令違反者,獣医師倫理違反者に対する都道府県当局による取り締まり等の徹底 |
(イ) |
違反者に対する行政処分の公正,厳正実施の仕組みの検討 |
(ウ) |
国,都道府県における動物医療相談窓口の開設 |
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エ. |
獣医学系大学における臨床教育(施設・設備,教員,カリキュラム)の整備・充実,卒前・卒後臨床実習実施体制の確立 |
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(3) |
日本獣医師会における対応
職域別部会制の17年度からの発足を受け,上記(1)及び(2)の具体化に向けての対応を小動物臨床部会において検討・協議 |
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