(4) 卵胞波の同期化
  すべての牛で,処置終了時に活力のある卵子を有する優性卵胞を得るためには,処置の最初に卵胞波の同期化を行うことが必要である.
  a)エストラジオールとプロジェステロンの利用:処置開始時の高濃度のプロジェステロンとエストラジオールは,LHとFSHの分泌をおのおの抑制し[5],その結果LHやFSH濃度が減少し,優性卵胞選択前の卵胞群やゴナドトロピンの供給が必要な優性卵胞の発育を阻害する.その結果,進行中の卵胞波は退行し,3〜5日後に新しい卵胞波が出現する.ODB 10mgの腟内挿入カプセルや1mgの筋肉内注射による血中エストラジオール濃度の比較,およびFSH抑制の効果について図8に示した.
  b)GnRHの利用:十分量のGnRH(250μg)や強力なGnRHアゴニストであるブセレリン(Hoechst Ltd)の投与により急激なLHの分泌をもたらし,存在する優性卵胞を排卵させる.しかし,GnRHは優性卵胞が選択される以前の投与では卵胞波の発育に影響しない[36].新たな排卵が起これば,これらのGnRHにより誘起されたすべての黄体を退行させるため,その6〜7日後に確実にPGFを投与することができる(表4).

図8 腟内挿入プロジェステロン(PRID)を処置した卵巣割去牛における安息香酸エストラジオール(ODB)の投与量と投与方法(腟内挿入カプセルか筋肉内注射)の違いが,血中エストラジオールとFSH濃度に及ぼす影響