発情開始時間の集中化

  排卵前の優性卵胞の存続期間は発情発現に影響し,短期間では発情開始までの時間が延長し,長期間では短くなる[2].発情開始時間を揃えるための最近の試みは,発情前の血中エストラジオール濃度を増加させるため,処置終了後の特定の時間にエストラジオールを外因性に投与することである[23].しかし,これらの処置により発情が早期に開始されるものもあり,これは新しい卵胞波の出現直後に小型の優性卵胞が排卵したためであり,今後,優性卵胞の早期排卵における受胎率が問題となる.

結    論

  われわれは,卵胞波のダイナミクスのコントロールについてやっと理解を始めたばかりであり,得られた事実をもとに,如何にして牛の発情の誘起や,制御および同期化のための有効なホルモン処置を展開させるかが課題となる.その際,牛の栄養状態,授乳の有無,分娩後の日数,種々の疾病,特定の処置に対する反応の多様性などすべてを考慮する必要がある.結論として,卵胞波同期化のための有効なホルモン処置と,現行の確実な黄体退行の処置を組み合わせることにより,定時人工授精に必要であるより狭い時間帯での発情の同期化効果や,高い受胎率を達成するための受精能力のある卵子が存在する健康な優性卵胞を得ることができる.
翻訳 上村俊一(鹿児島大学農学部助教授)