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会議報告


 【議長就任・議事録署名人の指名】
 続いて,山根会長が議長に就任し,岡本,森田両理事を議事録署名人に指名して会議が次のとおり行われた.
 【協議事項】
 新公益法人制度移行に向けての対応の件
 1 新制度移行に向けての取り組み
 (組織,会計・経理及び事務・事業運営の点検・整備)
 (1)大森専務理事から,次の事項について説明が行われた.
ア 新制度移行対応の当面の検討・協議体制(移行対応のための協議・検討の場の設置)
イ 新制度検討の要点
ウ 対応すべき(お願いする)事項
 (ア)新体制移行の協議・検討組織の設置
 (イ)当面の検討・協議の課題
  a 新制度の仕組みの理解(自治体等の制度説明会,「新公益法人制度検討の要点」の活用)と,会計基準の習熟及び移行に当たっての課題と対応の方向性の検討(新公益法人会計に基づく会計処理の習熟)
  b 当面対応する必要がある個別課題
  •  各獣医師会の個別事業ごとに,「公益認定等ガイドライン」の「公益目的事業のチェックポイント」の要件整備の適合状況のチェック(「認定法第2条第4号の公益目的事業の定義」の23項目への該当及び「公益目的事業チェックポイントについて」の不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する事業認定のダブルチェック)と,そのポイント適合に向けての事業運営の体制の整備
     まず狂犬病予防注射事業の獣医師会の公益目的事業としての位置づけと今後の運営から点検の上,必要な対応を検討することから開始(「狂犬病予防注射事業運営に当たっての留意事項」参照)
  •  獣医師会の会計経理の「公益法人会計基準の運用指針(平成20年4月11日内閣府の公益認定等委員会制定)」に基づく運用への切り替えと習熟に向けた体制の整備(移行にあたり実質的に運用切り替が必要)
  •  獣医師会の予算・決算について公益人認定基準(特に収支相償原則,公益目的事業費率など)との関係の適合状況のチェックと資産(財産)の新制度移行に向けた管理・運営のあり方の検討
  •  地方獣医師会における本部と支部(その他部会や協議会など)などの関係,(組織,事業運営,会計・経理)の実態と新制度移行対応に向けた対応の検討・整備の必要性
  •  獣医師会の組織運営(法人の機関設計)の一般法人法への適合に向けた対応の検討・整備の必要性(移行期間における定款等の改正)
  (2)質疑応答として,「狂犬病予防注射事業運営に当たっての留意事項」に自身が直面する具体例が示されていないためか,まだ狂犬病予防注射事業を公益目的事業と理解しない地方獣医師会長もおられる.公益目的でなければ事業比率の基準をクリアできないことを理解し,公益目的事業に係る収入額と事業費用(支出)の収支相償等の確認等に取組まなければ移行期間中の申請が困難になるため,本会から,事業対応の具体例を示す等して地方獣医師会の取組みを促進する必要があるとの意見があり,これに対して,大森専務理事から,公益認定にかかわらず,公益法人である獣医師会が自治体の要請により法律に基づく施策推進を受託して実施している事業である以上,公益目的事業として位置づける必要がある.「狂犬病予防事業は,自治体の要請を受け実施する公共の利益に適う公益事業」という意識をもたなければ,獣医師会の存在意義すら問われかねない旨が説明された.

 2 日本動物保護管理協会からの要請に対する対応
 (1)大森専務理事から,今回の新公益法人制度移行に際し,日本動物保護管理協会から,本会に対し,[1]今回制度が施行されるに当たり,同協会が現在担っている業務の役割を実態的に確保した上で,制度への移行を期すべく,新公益法人関係三法に基づく特例民法法人の合併規程に基づき,特例民法法人と合併を図ることとし,相手方については,同協会の事業を合併後の存続特例民法法人に承継させることを前提に,協会の発足の経過,現状の組織及び事務・事業の執行体制等を勘案の上,日本獣医師会との合併を図ることが要請された.[2]これに対する対応(案)として,本会が専門職である獣医師により組織される全国団体公益法人として,獣医学術の振興・普及,動物医療提供体制の整備,その他各般の獣医事の向上等に係る公益活動の推進を図ることにより,動物の保健衛生の向上,動物関連産業の振興,公衆衛生の向上,さらには動物の福祉の増進等の社会的利益の寄与を目的に活動しているが,その活動において動物の適正飼育指導,適切な診療の提供,さらには動物介在活動,野生動物の救護・保護活動等の獣医事の向上を通じて,動物愛護・福祉及び管理施策を支援している.今後とも動物愛護管理施策に対する獣医事活動の推進に対する社会的要請は高まるものと考えられ,新制度移行を機に,日本獣医師会の担う公益活動をさらに進展させるべく同協会の要請を受け入れることで検討を進め,今後,獣医師会が行う各般の獣医事向上のための公益活動の中で同協会の事業を機動的,かつ,効率的に推進するよう対処することとし,所管省庁の指導の下,合併に向けて必要となる諸般の事務手続きを進めたい.なお,合併するにあたり,必要な組織及び事業執行体制の整備を行った上で,新公益法人制度への円滑な移行を図ることとしたい.[3]合併のスケジュールは,両団体の執行部で手続等について協議した上で,整備法に基づく特例民法法人の合併手続として,まず双方の理事会で合併契約の締結の承認を得る.次に総会で合併契約の承認を得る.この際,定款の変更は考慮する必要がある.そして,農林水産省,環境省にそれぞれ合併の認可を申請する.さらに権利義務の継承等を一定期間,公示する債権者保護手続を行い,最終的に変更の登記の後,合併の届出をする.今後,本日の全国獣医師会会長会議,地区連合獣医師会会長会議,さらに双方の理事会・総会で説明を深め,理解を得ながら,合併手続を進めたい旨が説明され,補足して,同協会の会長である藏内副会長から,公益法人改革に際し,保護管理協会のあり方を模索してきたが,主管官庁である環境省とも協議を重ねた結果,公益法人,あるいは一般法人として存続することは困難であるとの認識に達した.主な理由は,財政的な基盤,事務局体制等であるが,一方で環境省から請負っている動物個体識別措置データ登録事業は,大きな社会役割を持つ事業であり,これを継続するため,趣旨を同じくする団体との合併を進めることとし,設立経緯等を考慮し,日本獣医師会との合併が最も適切との結論を得た.合併が成立した際は,定款,組織等を整備していただき,協会の動物の保護及び管理に関する法律の主に基づく事業を継承していただきたい.なお,協会には,56団体を正会員としているが,地方獣医師会でない団体があるため,本会議を踏まえ,十分説明したいと考えている.
 (2)質疑応答として,[1]合併することによるデメリットはないか.[2]協会の正会員の中には,これまで自治体から拠出された財源の果実で運営してきた財団法人もあり,合併に伴い,財源を失うことも危惧され,このような地方の事情も十分配慮する必要がある旨の質疑等があり,大森専務理事から[1]については,合併に際し,組織,事業運営,財政の3点に留意する必要があると考える.組織については,両会の設立目的事業で異なる部分等をどのようにすり合わせるか,それぞれの所管省庁である農林水産省,環境省の指導を得ながら進めるとともに,特に地方獣医師会以外の正会員への説明には十分配慮し,理解を求める必要がある.事業運営については,動物ID情報管理システム事業を公益目的事業として位置づけ,継承する必要がある.一方,協会の職員については,すべて本会からの出向であり,大きな問題は生じない.本会の設立目的の動物福祉の増進という中で,動物保護管理施策の支援を実施しているが,これを発展的に拡充するという意味で,今後の公益法人移行という観点からプラスになるとの考えの下で今後,手続きを進める必要があるのではないか.[2]については,10団体には,まずは合併を提案された協会から十分説明を尽くし,理解を得ていく必要があると考えている旨が説明された.

【説明事項】
 1 動物診療における動物看護職の位置づけ等に関する件
 (1)大森専務理事から,大要次のとおり説明がなされた.
ア 動物診療における動物看護職の位置づけ
動物診療に対する質の確保及び多様なニーズに応えるためには,チーム医療体制の整備が求められているが,動物看護職は実態のみが先行する中で,人材養成,業務環境未整備等のため社会的認知がされない等,様々な課題に対する対応が急務である.ついては,チーム医療体制の整備を図る上で,動物看護職といういわばパラメディカル専門職資格制度を確立し,診療の質を確保するためのシステムを機能させることが必要である.
イ 検討及び要請の経過
 (ア)検討の経過等
  a 日本獣医師会における検討の経過
  • 平成元年11月:AHT施設認定のための基本的考え方「AHT養成学校認定システム(骨子案)」(小動物部会AHT制度検討委員会)の取りまとめ
    →内容は時期尚早との結論
  • 平成15年4月:「動物医療における動物看護師のあり方」(小動物委員会報告)の取りまとめ
    →基本的考え方の整理
  • 平成18年4月:「動物医療補助専門資格の制度化に向けて」(小動物臨床部会小動物委員会報告)の取りまとめ
  • 平成18年3月:「動物看護師(士)認定の現状と今後の職域」シンポジウム開催(日本獣医師会学会年次大会・日本獣医学会学術集会(つくば)連携大会)
  • 平成18年12月:動物補助専門職の現状と課題に対する対応の検討開始(小動物臨床部会動物診療補助専門職検討委員会)
    →報告書取りまとめ
  • 平成20年2 月:動物看護職全国協会設立準備会の発足(学会年次大会(香川))
  • 平成20年3月:動物看護職関係団体(民間資格認定5団体及び本会)懇談会の開催
  • 平成20年9月:動物看護職の今後に関する意見交換会(動物看護職学校関係者及び本会)の開催
  b 農林水産省における検討
   平成17年7月:小動物獣医療に関する検討会報告(農林水産省)
  →小動物獣医療において獣医療補助者の役割は重要.
  →補助者の団体,獣医師団体が中心となって,教育水準,認定基準の平準化に向けた取組みに着手すべき.
  c 地区大会(北海道,東北,中部,近畿,中国の各地区)における地方獣医師会からの要望(看護師制度の資格化推進等)
 (イ)要請の経過
  平成14年以降,農林水産省,獣医師問題議員連盟等へ要請を実施(平成20年6月には獣医師問題議員連盟総会において,「動物診療におけるチーム医療体制の整備―動物診療に係るパラメディカル専門職資格制度の創設と動物看護技術の高位平準化・職域環境の整備」を要請).
ウ 今後の対応
 (ア)当面:動物看護職の組織化による社会評価の推進
  ・動物看護職の職域環境の整備
  ・動物看護職の全国ネットワーク化
 (イ)中期的対応:民間施設と養成体制の整備
 (ウ)中長期的対応:動物診療の信頼と質の確保(パラメディカル専門職としての資格制度化)
エ 動物看護職全国組織設立に向けての最近の動き
 (ア)動物看護職全国協会設立準備会設立(平成20年2月:本会学会年次大会(香川))
 (イ)日本動物看護職協会設立発起人会設立(平成20年11月)
 (ウ)日本動物看護職協会発起人総会合同会議と発足記念シンポジウム(平成21年1月:本会学会年次大会(岩手))
オ そ の 他
 本年11月,日本動物看護職協会設立発起人会(代表 森 祐司東京大学教授,副代表 太田光明麻布大学教授他)から本会あて,設立起人会を組織するに当たり,本会関係役員及び地方獣医師会会長を発起人として参画いただき,今後,同協会の設立・運営についての本会の支援,指導を依頼する旨の要請があり,同協会の設立趣意が本会の方向性と合致することを受け,山根会長から地方獣医師会会長に対し,発起人就任の了承について要請した.
 (2)質疑応答として,[1]動物看護職を雇用する動物病院に対しても十分説明する必要がある.[2]動物看護職の呼称のあり方はどのようになるのか.[3]動物看護職の養成学校の授業料は高額だが,卒業生の就業率は半分以下という状況にあり,本会が制度化に際して,看護職の労働環境,業務分担等のあり方を整備しておく必要がある旨の意見等があり,[1]については,山根会長から,これまでも本件については,本会会誌及びホームページ等により広報を行ってきたが,体制が整った時点でさらに十分説明を尽くしたい.補足して細井戸理事から,日本動物看護職協会の設立に際して,動物看護職側から雇用者である動物病院に対しての説明,協力要請は必須であり,これは日本獣医師会,地方獣医師会等を通じて対応したい.[2]については,大森専務理事から,現状は,「動物看護職」と表記しているが,今後,協会内で検討され,統一呼称が示されるものと考える.[3]については,山根会長から,今後,男女問わず動物看護職にとって動物病院が終身の職場となることも考慮するとともに,医療現場では20種のパラメディカルの国家試験を有する現状に鑑み,獣医界がさらなる社会ニーズに応えるためにも本制度化を進めつつ,課題についてはできるところから取り組みたい旨各々説明がなされた.

 2 日本獣医師会創立60周年記念事業の件
 (1)大森専務理事から,明日,開催される本会創立60周年記念事業では,式典,講演,祝賀会の三つを行う予定であり,式典での功労者表彰については,推薦基準に基づき各地方獣医師会から推薦いただいた161名について,9月22日開催した候補者の選考委員会で選考を行った.その中で各省大臣・局長感謝状の推薦者は75名で50周年より3割多いが,候補者すべてが表彰対象となった.当日は,石破農林水産大臣,斉藤環境大臣の他,獣医師問題議員連盟の谷津会長に出席いただく予定である.また,式次第の事業報告は,来賓が多忙なため,来賓祝辞の前から功労者表彰の前に変更した旨が報告された.
 (2)質疑応答として,功労者表彰の欠席者の当日の取扱いについて質疑があり,大森専務理事から,表彰は受賞者名を読みあげた後,代表者一名が賞状を授与される流れとしており,欠席の際は代理の方が欠席者の席に座り,該当する表彰の際,起立いただきたい旨説明された.

 【議決事項】
 日本獣医師会職員就業規則の一部改正の件
 (1)大森専務理事から,平成18年に高齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部改正に基づき,事業主は,65歳までの定年の引き上げ,継続雇用制度の導入,定年の廃止のいずれかの雇用確保措置を講じることとされた.本会の修業規則では,職員の定年を満60歳と定めるとともに,[2]業務の都合により特に必要と認めた職員については5年を限度に定年の延長を可能としているが,公務員や他の中央畜産関係団体の対応を踏まえ,再雇用制度(雇用高年齢者が希望するときは,引き続き雇用する制度)を導入することとし,本会職員就業規則の一部改正を行いたい.なお,再雇用の条件(雇用形態,勤務条件等)は,高年齢者等雇用安定法の趣旨を踏まえ,公務員や他の中央畜産関係団体等における条件等を斟酌の上,一部改正後の本会職員就業規則の規定に基づき別途規定したい旨が説明された.
 (2)質疑応答として,[1]改正条文では,再雇用の場合は満65歳に達する年度末日となっているが,定年退職日は年齢に達した月の末日となっている.他の団体と同様に定年退職日も年度末とすることが一般的と考える.[2]再雇用に関する規定は会長が別に定めるとあるが,これは公益法人改革の面からも理事会が定めるとすべきではないかとの意見があり,これに対して,大森専務理事から,[1]については,定年退職日で一度退職され,翌日から再雇用されるということで,空白期間は避けられるので特段の不利益は生じることはないと考える.[2]については,雇用の条件であり,これは雇用を決定するのは会長であり,新公益法人制度の関係からも問題はない旨説明された.



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