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 平成13年(2001年):
 会長の年頭挨拶として,昨年は北海道に牛の口蹄疫発生に続き有珠山,三宅島の自然災害も発生したが関係者官民あげての緊急対策が順調に進み獣医師に対する社会評価も高まる中で新年を迎え,[1]インフォームド・コンセント徹底宣言発表とともに生命倫理の尊重される時代獣医師道委員会の中に「動物医療の基本姿勢」の見直しに関する委員会を設け,検討をはじめたこと,[2]「動物の保護及び管理に関する法律」が「動物の愛・護・及び管理に関する法律」に改正,「動物取扱業者に係る基準」も示されたこと,[3]生涯教育に対する理解協力,年間10ポイント以上取得者の取得証明書交付し,連続3年間取得者に修了証発行する,[4]国際獣医師育成研修事業の推進,[5]昨年秋発刊配布した学校飼育動物の診療ハンドブックの普及,[6]監視伝染病体制支援事業の推進とエックス線診療業務従事者の防護,[7]野生鳥獣に関する委員会新設,[8]獣医学教育改善問題,[9]豚コレラ撲滅対策事業即ち昨年10月1日以降原則として全国的予防注射を中止した後の指導殊に指示書の適正発行,[10]友好団体・学会との親交,大阪府大で開催の第130回日本獣医学会と本会の共催による口蹄疫シンポジウム開催等に関して述べ,世の信頼に応え,明朗にして開かれた獣医師会構築に会員各位の協力を賜りながら一歩一歩堅実に対応する旨述べた.
 なお,年度頭初,愛媛県景浦会長の第9回愛媛農林水産賞受賞と小佐々学博士ローマ法王謁見の吉報もきくことができた.さらに東京大学小川教授を代表とする「黒毛和種牛における遺伝性疾患の病態解析及び遺伝子診断法の確立による発病抑制技術の開発」が畜産大賞を受賞された.
 2月14日,第68回フィリピン獣医師会年次大会席上,国際獣医師育成研修事業を通じての貢献に対し,表彰状(盾)を贈呈したい旨通知を受け,松山専務出席し,ラザロ2世会長より受領し,両国間の友好促進を深めたいとお礼を述べ帰国した.
 3月22日,ホテルフロラシオン青山に於て第4回理事会が開催され,松山専務の業務報告後,金川副会長より獣医学教育連絡会議より教育組織の充実として,国立大学の10獣医学科を3〜4獣医学部へ再編整備する必要性等を内容とする旨答申があったと報告.平成14年度学会年次大会は沖縄,平成15年度横浜市を開催地と予定する旨竹内理事から報告された.動物用医薬品指示書発行の徹底や使用済み医療器具の廃棄物の適正処理について松山専務よりそれぞれ説明し,三宅島被災動物救護活動については直接陣頭指揮に任じた辻副会長,有珠山噴火災害対策については金川副会長から詳細が報告された.また議決事項として13年度暫定予算の件,地区獣医師大会決議要望事項,仙台市獣医師会入会の件等議案は異議なく可決承認された.理事会終了後,続いて第2回全国会長会議が開催された.
 4月18日,全国家畜衛生職員会総会,4月22日,動物臨床医学研究所創立10周年式典に五十嵐会長出席.5月以降青森県,栃木県,千葉県,埼玉県,静岡県,中央畜産会,全国家衛指協総会に精力的に参加し祝辞を述べるとともに広く会員に接し親交を深めることとした.
 5月22日,本会理事で福岡県獣医師会長藏内勇夫氏が福岡県議会第54代議長に選任され,48歳という全国最年少県議会議長として,さらなる活躍が期待されることとなった.
 5月12日,オーストラリア・メルボルン市で開催された世界獣医学協会(WVA)評議員会では,アジア・オセアニア地区評議員の松山専務理事が出席し,財政委員会で日本のWVA負担額(約230万円)について適正化を求める旨発言し,WVAではワーキンググループを設置し検討することとなった.
 WVAの会費は世界獣医学大会の際に開催される総会席上で審議決定されるところで,1996年〜99年までの会費額は各国の所属獣医師数に1.5米ドルを乗じた額とされ,日本は上限額である20,000米ドル(1999年レートで2,366,305円)納入することとされた.日獣では会費算定方式に反対を表明し,会費算定システムの改正を要請して2002年度分については,WVAへの抗議の意味を含め,請求額の半額のみ納入した.2002年9月チュニジア大会の代表者総会において,WVAの運営,会費算定システムの改善等再度提案(五十嵐,金川出席)したが具体的検討が行われなかったため,12月書面により,再びWVAの対応に不満を表明し,2003年分会費納入を保留し,その後も再三書状を送付し,2004年10月25日ソウルにおいて開催されたFAVA大会に出席したWVA会長にも改善を求めた.結果,2002年以降の会費は,算定基礎となる所属獣医師数を6,672名とし,会費を約半額に減額する案が提示された.そこで2004年12月,平成16年度第3回理事会においてこれまでの経過を説明し,2003年,2004年度分年会費納入の承認を受けた後,2005年3月2,650,190円を2003年,2004年会費として送金した.
 6月27日,第58回通常総会が明治記念館に於て開催され,農林水産省,厚生労働省,環境省,関係団体(9団体)のご臨席もあり,さらに北村,城島両議員等のご来賓よりご祝辞を賜った.五十嵐会長は,[1]獣医系大学の再編整備に関連し,昨日関係大学を擁する地方会長と同席いただき,唐木会長(全国大学獣医学関係者協議会)より各地の実状を説明していただいたこと,[2]獣医師道の高揚,[3]口蹄疫をはじめとする悪性伝染病防疫,自然災害危機管理対応が敏速的確に進められたことでの社会評価,[4]各地方会の学校飼育動物対応等に地方会それぞれの実状に即し活動していることに対し感謝を述べ,農水省永村武美部長より食生活の高度化・多様化等需要増大を背景に畜産が日本農業の基幹部門に成長してきたこと,昨年3月9日,2年振り発生した口蹄疫対応等に対する獣医師活動に関し謝意を述べられ,土井邦雄日本獣医学会長から今後さらに緊密な協力体制を構築したい旨ご祝辞が述べられた.議長に中馬氏,副議長に高橋三男氏を選任し,予定された議案すべて円満裡に承認可決された.なお,第8号議案役員改選についても秦 郭郎管理委員長よりすべての役員につき定数内の候補である旨説明,三役以下の再選も異議なく承認,松山専務理事辞任に伴い大森専務理事の推薦が承認され,五十嵐,大森両名よりそれぞれ決意表明と会員の理解・協力を求め総会を閉じた.就任挨拶として,[1]獣医師の生涯研修事業初年度の履修証を交付したこと,[2]平成12年12月14日,農水省告示による獣医療体制整備,[3]動物愛護・環境保全に関すること(九州地区獣医師会ヤマネコ保護等)命あるものの安全保護,[4]動物看護士制度の確立,[5]学校飼育動物に関する運動(学校飼育動物の診療ハンドブック)を進めて「食農教育」に発展する運動,[6]産業動物獣医師の集団衛生管理中心に予防衛生的獣医療提供(HACCP手法),[7]小動物医療の多様化・高度化・専門化対応,[8]国際交流・国際貿易進展下で悪性伝染病進入防止,食の安全性の問題,犬の登録制度の中でマイクロチップ導入制の要請運動を藏内理事の案内で麻生政調会長に面談したこと,[9]国立大学獣医学科の再編整備に関し,東京大学の唐木教授や日本学術会議副会長の黒川座長(獣医学教育に関する懇談会)の意見を尊重し,九州大学杉岡総長と直接面談要請し,さらに農水省,文部科学省担当課へ出向いて説明するとともに,獣医系大学の存在する地方獣医師会長による「獣医学部設置促進関係獣医師会懇談会」を開催し唐木教授より現状説明を受け,6月14日の国立大学学長会議席上,遠山文部科学相は,大学の運営基盤強化のためには大胆かつ柔軟な発想で再編,統合を進めることが不可欠」と述べ積極的に国立大学の再編を進める方針を強調している旨報告,[10]日本獣医学会との連繋強化とさらに友好団体との協力の必要性を述べた.
 なお,5月29日の理事会において口頭により事務局改装の必要性を説明し,第2回理事会で総会議案に明記して,本総会席上,消防署の立ち入り検査で防災上,蛸足配線をやめるよう指摘があり,パソコン導入に伴い,事務所内にLANを敷設し,事務の一層の合理化,効率化推進する必要があることを説明,承認を受け,総額経費約2,720万円をかけ平成13年7月から8月下旬にかけて改装し,今日の事務室(役員室含み)となった.この工事の現場監督指導に休日出勤まで行って努力した朝日局長の苦労に感謝する.
 8月6日,起立不能を呈した千葉県下の酪農家の乳用雌牛(5歳)が食肉処理場においてと殺された折,採取された脳組織を免疫組織化学的に検査した結果,9月10日牛海綿状脳症(BSE)陽性と判定された.その後英国獣医学研究所による病理検査によりBSEと確定診断されたことを受け,当該牛をBSEに感染していた旨公表された(疑似患畜の発生届告示9月13日,患畜の発生届出告示は9月23日).日獣は三役会議を緊急開催し,各県に通報し診療第一線における産業動物獣医師と地元家畜保健衛生所等との連絡に努め,危急対応を指導,一方,北村直人議員(狂牛病対策本部副本部長)との連繋を強化し,防疫・衛生管理の万全を期すことに努めた.牛BSEに対する緊急防疫,衛生対策等の詳細経過は本誌第54巻第11号872頁以下に記述してある.また牛海綿状脳症(BSE)をマスコミが「狂牛病」と報道することにより,一般社会へ過剰な恐怖心をあおるため「BSE」と呼称するよう依頼した.詳細は本誌第54巻第10号に掲載された.なお,日本農業新聞(10月30日)と読売新聞(11月21日)にも会長の特別寄稿が掲載された.その後も,続いて五十嵐会長の「牛海綿状脳症の発生に際して」や小野寺節京大教授の「BSEの家畜衛生上及び公衆衛生上のリスク」,金川副会長の「日本獣医師会と牛海綿状脳症」等を本誌に掲載し,会員各位の参考に供した.
 9月15日〜16日,第6回日仏獣医学会がフランス・ニース市において開催,両国より計12題の発表があり,第2回目にビルバック本社やリヨン獣医大学を見学し,ピレ会長より五十嵐会長にGaston Ramonの肖像を彫ったブロンズメダルが贈呈された.日本側の参加者は
五十嵐会長,長谷川日仏獣医学会長,早崎教授,池田教授,白井教授,小野寺教授,新城教授,斉藤 聡(札幌),福地克男,福地恭子(埼玉),斉藤久美子(埼玉),廣田順子(埼玉),臼井玲子(栃木),灘波裕之(アルフォール大学留学)夫妻計15名であった.
 10月12日,第7代日獣会長中村 寛先生が多額の浄財を日獣に寄贈され,これをもって「獣医学術振興基金」を創設.獣医学術の振興に資することになり,中村 寛先生の多大なる貢献に対し特別感謝状を贈呈し,全国の獣医師を代表して深甚なる感謝の意を表するとともに三役,事務局との懇親会を実施した.

(以降、次号へつづく)


† 連絡責任者: 五十嵐幸男
〒360-0023 熊谷市佐谷田3083
TEL 0485-25-2166 FAX 0485-25-2062


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