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6 獣医師の需給に関する事項
(1)各職域の動物医療施策を的確に推進する上で常に獣医師の需給の現況と見通しを把握することは重要な要素と考える.本会においても,先の組織財政委員会において検討し,「特定の職種及び地域に過不足が生じている状況があるものの,需給全体のバランスが大きく崩れている状況にはないが,獣医学教育改善が優先課題とされている中で,少なくとも大学の入学定員総枠については,医師等の他の特定分野の人材養成と同様に,現状維持の政策配慮を堅持する必要がある.」との考えである.
(2)なお,毎年,新規卒業者の約半数が小動物医療分野に就業する中で小動物医療提供の地域内連携,勤務医制のあり方を含む卒後臨床研修体制の整備が,また,一方では,産業動物診療分野において診療獣医師の大量定年等による後継者確保の問題があるが,本件については,職域別部会の小動物臨床部会小動物委員会,また,産業動物臨床部会産業動物・家畜共済委員会において,各職域の獣医師需給も念頭に協議・検討を進めることとしている.いずれにせよ本件については,今後とも獣医系大学卒業者の就業状況及び獣医師の就業分布等を注視する必要がある.
 
7 日本獣医師会の運営に関する事項
(1)本会の役員選挙は,定款及び定款施行細則の規定に基づき行われることとなるが,本会が社団法人である地方獣医師会を会員とする団体会員制により構成されていることを前提にこれまで幾度の制度変遷を経て,獣医師が組織する公益法人の全国団体として,より会員及び社会の要請に適うよう検討が加えられ,今日の選任規定となったものと理解する.
(2)最近においては,先の組織財政委員会においても,また,その後の職域別部会制発足に係る各地方獣医師会との協議においても,組織運営のあり方について論議を経たところであり,現時点においては,事務手続運営上の改善は逐次図るとしても,選任規定の大枠についての変更等の要はないと考える.
(3)公益法人の全国団体として,会員及び構成獣医師に対する情報提供はもとより,本会と会員,構成獣医師間の相互の情報ネットワーク化は重要な課題と承知している.本会の毎年度の事業計画においてもこの旨の整備推進を掲げ,地方獣医師会の協力の下で対応を進めることとしている.
(4)情報ネットワーク化をはじめとする広報対策については,職域別部会の総務・広報委員会で対外・対内対策とともに評価・検証と今後の体制整備を協議・検討しているが,これまで講じてきた本会の広報対策と地方獣医師会との情報ネットワーク化の取り組みの経過,現状と今後の対応等を整理のうえ,近くお示しすることとしたい.

 

|| 日本獣医師会及び地方獣医師会がともに対応する事項
1 狂犬病予防対策に関する事項
(1)狂犬病予防対策については,厚生労働省に対し,[1]「狂犬病予防法に基づく犬の登録等の徹底について」(平成14年6月11日付け健感発第0611001号.結核感染症課長通知)に基づき都道府県が代表して市町村事務を含めた狂犬病予防業務の調整を図ることについての自治体に対する指導強化,[2]犬の登録制度におけるマイクロチップによる個体識別の導入等の要請活動を行ってきたところである.
(2)本件については,平成14年度の地区獣医師会連合会会長会議において,今後の狂犬病予防注射の対応の考え方を取りまとめたが,今後とも,各地方獣医師会の実情に即した事業への取り組み体制の整備をはじめ,行政対応を図る必要があるとの観点で,去る2月3日付で厚生労働省に対し各地域における犬の登録,予防注射率の向上等の狂犬病予防対策の取り組み体制の整備について都道府県等地方自治体に対する指導の徹底を要請した.
(3)なお,現在,職域別部会の小動物臨床部会小動物委員会において,最近における小動物医療提供の実情等を踏まえ「狂犬病予防注射事業の中期的整備の方向」を協議検討している.
 
2 獣医師倫理の向上
(1)獣医師倫理対策については,獣医師の倫理綱領としての「獣医師の誓い95年宣言」と動物臨床の行動規範としての「小動物及び産業動物の医療指針」に関係資料,関係法令などとあわせて取りまとめ,「日本獣医師会 獣医師倫理関係規程・資料集」として編集し,各地方獣医師会あてに送付し,獣医師倫理の向上に関して構成獣医師に対する一層の周知・徹底を求めるとともに,獣医学系大学に送付し,獣医学教育課程における獣医師倫理に関する教材としての活用を要請した.また,本件については,「獣医学専門教育課程カリキュラム」においても「獣医師職業倫理教育」を必須科目とするよう要請した.
(2)一部獣医師及びそのグループによる法令違反等の倫理問題等の対応については,本会から農林水産省に対し都道府県取締当局への獣医事監視・取締の徹底を要請したところであるが,地方獣医師会におかれても関係法令遵守についての指導等の徹底とあわせ,違反事例については都道府県当局と緊密な連携をとり,指導強化,国への報告等を行うよう願いたい.
 
3 動物愛護対策(学校飼育動物対策を含む.)の推進に関する事項
(1)動物愛護管理法の改正に向けての対応については,環境省及び各政党に要請を行った結果,平成17年6月に公布された同法の一部を改正する法律においては,[1]基本指針及び動物愛護管理推進計画の策定,[2]動物取扱業の適正化,[3]個体識別措置及び特定動物の飼養等規制の全国一律化,[4]動物を科学上の利用に供する場合の配慮等,本会の要請事項のほとんどが盛り込まれた.
(2)さらに,改正動物愛護法の施行に係る政省令等の整備についても,動物愛護福祉委員会における検討をもとに,各政党に所要の要請を行った結果,本会の要請を踏まえた法令の整備が行われた.
(3)改正動物愛護法においては,学校等における動物愛護の普及啓発・動物の愛護と適正な飼養に関する普及啓発を推進するため,教育活動等が行われる場所の例示として,「学校,地域,家庭等」と明記された.
(4)学校飼育動物対応については,文部科学省等に対し,[1]学校飼育動物活動の推進と「学校獣医師制度」の確立について,[2]初等教育課程における学校飼育動物活動の標準化対策の推進について要請してきたところであるが,あわせて,本会の学校飼育動物対策の取り組みを集大成して整理した「学校飼育動物活動の推進について(活動の経過と事業推進の指針)」を文部科学省,環境省,農林水産省に送付して都道府県への指導を求めるとともに,都道府県教育委員会にも直接送付して学校飼育動物活動の推進への報告書の活用を求めた.なお,文部科学省においては,本会が学校飼育動物事業推進の指針としてこの報告書を取りまとめたことを,各都道府県教育委員会,各都道府県私立学校事務主管課及び付属小中学校を置く国立大学付属学校事務主管課に通知し,その活用を求めた.
(5)本会の職域別部会の小動物臨床部会学校飼育動物委員会においては,[1]地域ネットワーク体制の整備,[2]教育現場における動物飼育の位置づけ,[3]学校と獣医師の関係強化を検討テーマに推進方策等の協議・検討を行っている.
(6)マイクロチップを利用した動物個体識別については,引き続き,動物ID普及推進会議(AIPO)を推進母体として本会と動物愛護団体が連携して実施しているが,動物愛護管理及び特定外来種対応に関する法令等の整備の進展に伴い,今後地方自治体の運営する動物愛護関係部署におけるリーダーの設置及びデータ読み取りについて協力が得られることにより,事業の飛躍的な推進が期待できるので,各地方獣医師会からも一層の強力な働きかけをお願いしたい.
 
4 勤務獣医師の処遇改善に関する事項
(1)公務員獣医師の処遇改善対策については,[1]ポストの拡充と登用,[2]給与表の改訂,[3]諸手当の充実等があげられるが,家畜衛生職員会・全国公衆衛生獣医師協議会とも連携しながら,対応の方向等を検討してきた.昨年8月,定例の三者協議会を開催し,情報分析とともに当面の要請課題を整理したことはすでに平成17年9月14日付け17日獣発第118号により通知したところである.地方獣医師会においても,三者協議の場を設けて積極的に情報交換しながら都道府県当局へ対応を進める必要がある.
(2)なお,本件については,日本獣医師政治連盟から獣医師問題議員連盟に対し,公務員獣医師の処遇改善策として,[1]都道府県の畜産及び食品衛生主務課長ポストへの獣医師職員の積極的な登用とともに,[2]医師等の他の専門職の処遇水準と均衡を欠くことのないよう待遇改善を図ることを要請した.
(3)保健所長への獣医師の登用については,地域保健法において獣医師を含め「医師と同等またはそれ以上の高い専門性を有する者」に対して登用の道が開けた.
(4)公務員の処遇改善については民間格差や地方自治体の財政事情,さらには成果主義の導入等がある中で全体として大変厳しい状況にあるが,獣医職公務員の勤務の特殊性,その社会的地位の相対的評価,さらには地方公共団体における人員確保上の必要性等を踏まえて関係方面への働きかけを行う.
 
5 産業動物診療技術料に関する事項
(1)本件は,国の予算単価の積算が人事院勧告をベースとした一定のルールにより算定されてきているとの制約がある.大幅な引き上げはルール上困難があるが,引き続き農林水産省,また,獣医師問題議員連盟を通じ,各種衛生対策事業における雇い上げ獣医師手当の額が医師等の医療専門職における水準と均衡を欠くことがないよう要請していく.
(2)公務員の処遇を含め,技術報酬の引き上げについては厳しいものがあるが,地方獣医師会においても,家畜畜産物衛生指導協会等関係団体と連携しながら,上部団体を通じての要請実現に向けて活動を推進願いたい.
 
6 災害時の動物救護対策の検討
(1)災害時動物救護対策については,緊急災害時動物救援本部の構成団体として,動物愛護団体と連携しながら,環境省の他,関係各所への要請対応等を実施してきたところである.国の定める中央防災計画においても動物対策が位置付けられているが,動物愛護管理法の一部改正により,今後は,国においては動物愛護管理に関する基本指針,都道府県において動物愛護管理推進計画が策定されることとなるため,これらの指針・計画において災害時の動物救護対策に関する具体的な事項が定められるよう,今後とも,本会の立場,また地方獣医師会の立場で要請活動を行っていく必要がある.
(2)阪神淡路大震災,有珠山噴火災害,三宅島噴火災害,新潟県中越地震等の経験を踏まえ,それぞれの地区で対応マニュアル基礎編が作成されており,緊急災害時動物救援本部としては,事務局の(財)日本動物愛護協会からマニュアルが示されている.各地区においては,それぞれの実情,また,被災実態等により,その救護活動の地域における対応は多様化している.各地方獣医師会においてもそれぞれの地域の実態を考慮して具体的な対策を協議し,整備願いたい.
(3)なお,本会においては,職域別部会の小動物臨床部会動物愛護福祉委員会において緊急災害時における動物救護活動のあり方を検討テーマに協議・検討することとしている.

 

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