感染動物はウイルス血症を起こすため,皮膚,臓器,筋肉,血液,リンパ節,骨などすべての組織にウイルスが含まれ感染源となる[24, 56, 71, 72, 115].一般にと殺動物では,死後硬直が始まり最大硬直期に至るまで,解糖産物である乳酸が筋肉内に蓄積してpHが低下する.このため,筋肉内に含まれる口蹄疫ウイルスは徐々に不活化される.牛の筋肉ではこの傾向が顕著で,牛の筋肉内pHは,2ではと殺後3時間で低下しはじめ,通常48時間でpH 5.5近辺まで低下する(極限pH)[11].しかし,乳酸の生成によるpHの低下は豚肉では牛肉ほど明瞭なものではなく,さらに個体ごとにばらつきがみられる[43].豚の筋肉内pHは,実験成績では37では7時間以内にpH 5.5まで下がるが,一般的なと体処理条件ではpH 5.7以下にはならない場合が多い[43].筋肉をと殺後ただちに冷凍した場合にも,乳酸の生成は停止するのでウイルスは不活化されないことになる.また,大量のウイルスを含むリンパ節,骨髄,筋肉内の大きな血管に残存する血餅などは,と殺後も乳酸によるpHの影響を受けないので,ウイルスは長期間残存する.牛の例では,リンパ節,骨髄,血餅中のウイルスは,4では3〜7カ月間不活化されていない[71].また,実験感染豚を用いて塩漬乾燥調理したハム,ベーコン,ハム脂肪および付属骨髄には,ウイルスはそれぞれ182日,190日,183日,89日間生残する[78, 81, 88].(Table 5およびTable 6)