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会議報告



【別記2】
平 成 20 年 度 事 業 計 画
  I 実 施 方 針
 我が国の社会経済,国民生活の安定を図る上において,農畜産物等の食料の安定供給をはじめ,食の安全・安心の確保や人と動物の共通感染症に対する危機管理対策の整備が求められている.また,人と動物の共生社会の構築が国民的課題とされる中,イヌ,ネコ等の家庭動物が伴侶動物として広く一般家庭に,さらには,人の介護・福祉,学校教育分野への社会参加が進展する中,小動物医療の提供体制の整備,動物愛護・福祉対策,さらには野生動物保護をはじめとする自然環境保全対策の推進が求められる等,動物医療,獣医師の果たす社会的役割に対する期待が増大している.
 今後とも獣医師が社会的要請に的確に応えていくためには,多様な職域に就業する獣医師について社会需要の動向に即した適正配置とともに,獣医師が担う動物医療提供の質の確保を図る必要があるが,このような状況を踏まえ,獣医師が組織する公益法人の全国団体である日本獣医師会は,獣医学術の振興・普及をはじめ獣医事の発達と向上等を図ることを目的に関係する各職域に係る公益活動を会員である地方獣医師会とともに推進するため,平成20年度においては,特に次の事項に配慮し,事務・事業及び組織の運営を図る.

  1.  産業動物臨床,小動物臨床,畜産・家畜衛生,公衆衛生,獣医学術等の各職域の諸課題については,職域別の事業運営機関である「部会」において効果的対応を図ることとし,平成20年度においては,各部会委員会ごとに定めた検討テーマを検討・協議の上,とりまとめ,日本獣医師会及び地方獣医師会事務・事業の推進に逐次反映させるとともに,動物医療の質の向上をはじめとする動物医療提供体制の整備について関係機関・団体等に対する要請活動を含め所要の対応に努める.
  2.  獣医学術の振興及び動物医療技術の普及については,学術分野別の学会活動運営機関である「学会」において,各地区学会等における研究業績等を集大成した学会の年次大会を開催すること等により,広く獣医学術の発信と業績評価を通じ人材の育成に努める.
     また,獣医師生涯研修事業を含め,動物医療技術の普及を図るため,地方獣医師会の協力の下で各種研修会等を開催する.
  3.  公益法人制度改革が決定され,今後,社団法人については,各法人の設立目的を踏まえた公益事業の一層の推進と会計・経理機能を含め,新制度に向けた組織運営の整備が求められるが,当面,会計・経理については新公益法人会計基準への対応を,組織・事業運営については公益法人指導監督基準を踏まえ一層の点検・整備に努める.また,新公益法人三法(一般法人法,公益認定法,整備法)の施行に伴う,公益認定に向けての環境整備については,農林水産省の指導を得る一方,理事会において対応を協議・検討する.
     なお,公益認定等をはじめとする諸課題を日本獣医師会と地方獣医師会が連携しての協議を推進するため,[1]組織・財政・事業運営の条件適合等については職域総合部会において,また,[2]学会の位置付けと組織・運営等のあり方については,学術部会において,引き続き対応を協議・検討する.
  4.  最近における獣医師需給の動向を踏まえ,今後,獣医師の職域偏在の是正が必要との認識の下,地方獣医師会,獣医学系大学,関係する職域団体等とも協議の上,連携して動物医療の質の向上対策とともに,獣医師の社会的評価の向上に努める.
     また,獣医学術の普及,獣医事の向上,獣医事情報の提供対策の一環として獣医師及び動物医療の果たすべき社会的役割の市民向け普及・啓発事業を「2008動物感謝デー in Japan“World Veterinary Day”」として,地方獣医師会,獣医学系大学をはじめ,動物医療・動物愛護福祉関係団体・企業の協賛・支援の下で実施する.
  5.  地方獣医師会及び地区獣医師会連合会との連携の強化,さらには関係する職域団体との協力関係の推進に努めるとともに,地区獣医師会連合会単位で開催される役員会,協議会等の場に積極的に参加し,相互の情報・意見交換を行う一方,IT媒体等の活用を図ること等により,日本獣医師会と地方獣医師会,構成獣医師との間の情報ネットワーク化を引き続き推進する.
  6.  本年は,日本獣医師会の設立許可から60周年に当たることから,創立60周年記念事業を実施し,永年にわたり獣医学術の振興・普及,獣医事の向上,動物愛護・福祉の増進,獣医師会の発展等に功労のあった者の表彰等を行う.
  II 事項別の対応
 1 獣医師道の高揚に関する事項:
 高度専門職業人である獣医師として,法令遵守をはじめとするコンプライアンスの確保等職業倫理対策の推進に資することとし,「獣医師倫理綱領」及び「動物臨床の行動規範」等の普及・啓発とともに,獣医師道委員会の議をへて集大成した獣医師倫理関係規程集の獣医学系大学等における獣医師倫理教育課程における活用の推進を要請する.
 2 獣医学術の振興・普及及び調査研究に関する事項:
 (1)日本獣医師会学会年次大会を岩手県獣医師会との共催(開催運営委託先:岩手県獣医師会)により,東北獣医師会連合会の協力の下で平成21年1月22日から24日までの3日間,盛岡市の「いわて県民情報交流センター及び盛岡市民ホール」において開催する.また,全国各地区において開催する地区学会については,各地区に対し学会運営費の一部を助成する.
 (2)学会(日本産業動物獣医学会,日本小動物獣医学会,日本獣医公衆衛生学会の3学会)については,公益法人制度改革が決定されたこと.また,学会が日本学術会議の協力学術研究団体に移行したこと等の事情を受け,学会の学術分野別の学会活動運営機関としての定款上の位置付けを踏まえ,効果的・効率的運営の観点から,学会の組織・事業運営に係る関係規程の整備を関係する部会委員会において検討・協議する.
 また,学会と日本学術会議,日本獣医学会等の獣医学術関係団体との連携を図りながら獣医学術の振興に努める.
 (3)日本獣医師会雑誌(日獣会誌)については,獣医学術の振興・普及とともに獣医学術・獣医事情報の提供を担う学術情報媒体としての整備を推進することとし,構成獣医師をはじめ社会の多様なニーズに応えるべく,引き続き,「論説」,「総説」及び「解説・報告」等の実を図る一方,「診療室」,「地方会だより」,「意見」等のコラム・意見開陳欄において積極的な投稿を求める等により,親しみやすく,より魅力ある誌面の提供に努める.
 また,日獣会誌のうち三学会の学会機関誌については,構成獣医師(学会会員) 等から投稿された原著,短報等を掲載する等により獣医学術の振興及び獣医学術情報の広く内外への発信・提供に努める.
 (4)獣医学術奨励賞については,関係する産業界の協力を得て,産業動物,小動物及び公衆衛生の三部門についてそれぞれ学術賞,奨励賞及び功労賞を授与し学術研究活動を奨励する.
 3 獣医学教育の充実に関する事項:
 獣医学教育改善については,今後の獣医師の需給動向を踏まえたうえで,社会の期待に応え得る獣医学教育と研究基盤の強化を図るためには,「獣医学教育の改善目標」に即し,学部体制への整備が不可欠であるとの観点に立ち,要請活動を含め,引き続き所要の対応に努める.
 また,獣医学教育改善を社会的理解の下で実現するための獣医学教育の評価システムの取組みについては,文部科学省の指導の下での獣医学系大学総意による立ち上げについて,引き続き関係機関・団体への働きかけに努める.
 4 獣医師の研修に関する事項:
 (1)獣医師生涯研修事業を地方獣医師会はじめ関係職域団体等の協力のもとで推進するとともに,職域分野別の技術講習会(産業動物講習会,小動物講習会,公衆衛生講習会)を地区ごとに開催する.
 (2)動物医療技術の高度化や専門分化に対応した診療獣医師に対する診療技術研修対策として,日本中央競馬会の助成による全国競馬・畜産振興会の特別振興資金畜産振興事業として,次の2事業を実施する.
 ア 獣医療における放射線診療技術研修支援事業
 (ア)研修体制整備推進検討事業
 研修体制整備推進検討委員会において,放射線防護・診療技術に関する最新情報を収集し,ガイドラインの作成及び研修用資材の開発等に係る追加・修正等の検討を行う.
 (イ)習得促進手法開発事業
 インターネット等を活用して,放射線防護及び診療に関する知識・技術の修得を促進するとともに,その修得状況の確認等を行うための手法を開発・製作する.
 (ウ)研修会開催事業
 臨床獣医師等を対象とした放射線診療技術研修会(都道府県単位)を開催する.
 イ 産業動物診療獣医師確保等対策事業
 うち,診療獣医師高度技術研修事業(新規)
 (ア)獣医師高度技術研修検討事業
 獣医師高度技術研修検討委員会において,高度技術研修教材及び研修内容・実施計画等の検討を行う.
 (イ)獣医師高度技術研修教材作成事業
 診療の高度・効率化のために必要な人獣共通感染症早期診断技術マニュアル,高度職業倫理マニュアルの作成を行う.
 (ウ)獣医師高度技術研修事業
 診療獣医師に対し監視伝染病等の重要感染症の診断技術とともに高度職業倫理の実地研修を獣医学系大学において行う.
 5 獣医事の向上に関する事項:
 (1)動物臨床をはじめとする各職域の獣医事対策に係る課題の対応については,前記Iの1に示した方針に従い,別記に掲げた検討テーマについて職域別部会(産業動物臨床,小動物臨床,畜産・家畜衛生,公衆衛生,学術,職域総合の6部会)の部会委員会において,協議・検討を進め,対応をとりまとめる.
 (2)日本動物保護管理協会の動物愛護・福祉対策事業の推進を支援するとともに,学術・動物愛護福祉関係団体等の事業,催事等の共催,後援等を行い関係団体等との連携・協力関係の推進に努める.
 (3)中村寛獣医学術振興基金により,獣医学術及び獣医事の振興等の推進を支援する.
 (4)家庭動物の個体識別の普及,推進のために動物ID普及推進会議(AIPO)が実施する動物ID普及推進事業について,AIPOの構成団体の一員として普及・推進に努める.
 6 獣医学術及び獣医事の国際交流に関する事項:
 (1)世界獣医学協会(WVA),アジア獣医師会連合(FAVA)と連携・協力しつつ,獣医学術及び獣医事関係情報の収集,交換に努める.
 (2)その他諸外国獣医師会等の関係者との学術交流及び情報交換に努める.
 7 獣医事関係の情報の提供に関する事項:
 獣医学術の振興・普及をはじめ獣医事の向上等に係る情報の提供として,引き続き日本獣医師会雑誌(日獣会誌)を編集・刊行する(2の(3)に前掲)とともに,広報活動として,「一般向けホームページ」に加え「会員及び構成獣医師専用ホームページ」を運営し,獣医事関係の情報提供,相互の情報・意見交換を行うとともに,「メールマガジン(日獣メルマ)」を配信する.また,緊急情報の提供については,「日本獣医師会プレスリリース」により対応する.
 8 獣医学術関係書籍等の発行に関する事項:
 適切な動物医療の提供等の獣医療の質の確保を図るため,また,獣医療技術・知識の向上を通じ獣医師専門職の人材養成に資するため,動物用医薬品指示書等の各種獣医療証明様式の制作・頒布のほか,獣医師生涯研修用教材,獣医学術関係書籍等を頒布する.
 9 獣医師の福祉のための共済に関する事項:
 獣医師福祉共済事業(獣医師生命共済事業,獣医師医療共済事業,獣医師年金共済事業,獣医師賠償共済事業及び獣医師所得補償事業)について,事業の円滑な推進,普及に努める.
 なお,特に事業内容を整備し平成19年度から新たに発足させた獣医師賠償共済事業(診療施設契約・獣医師個人契約,狂犬病予防注射事業契約)の加入の促進,獣医師総合福祉生命共済保険の加入率50パーセント以上の確保について,地方獣医師会との連携,協力関係のもとで推進する.
 10 その他の事項:
 (1)不動産貸付事業の適正運営とともに,固定資産の適正管理に努める.
 なお,築30年を迎える新青山ビルの長期修繕工事に対処するための修繕特別積立てを前年度に引き続き行う.
 (2)上記1〜9に掲げた事項以外の事項で緊急に対応する必要が生じた事項については,必要に応じ,理事会における協議等の手続きを経たうえで実施する.




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