本症は、クリプトスポリジウム(原虫の一種)、の感染によって下痢を示す人獣共通感染症です。
 本原虫は世界各国で人をはじめ、哺乳動物、鳥類、は虫類、魚類など広い宿主域を示します。また、本原虫感染症は、感染子牛に接触した管理者やその家族、獣医師に多くみられ、さらに人および動物から分離されたオーシスト(原虫の発育形態の一つで感染力を持つ)が相互に感染性を示すことから、人獣共通感染症として公衆衛生学的にも注目されています。また、ロタウイルスなどの他の病原微生物と混合感染した場合は下痢の持続日数が延長し、症状も悪化します。
 感染牛は黄色の水溶性下痢を呈し、食欲不振、発育不良、強直、脱水症状などがみられ、日齢の低い患畜ほど症状が重くなります。下痢は数日から10日前後持続しますが、ほとんどは徐々に回復します。
 感受性の高い新生子牛を早期に隔離飼育すれば、感染の予防となり、感染が確認された場合の対策も容易です。また、オーシストは熱や乾燥に弱く、60℃以上では数分で感染性を失い、乾燥状態では数時間で死滅するという特徴があります。したがって、除去した糞便の処理には焼却、乾燥、堆肥化などが有効です。現在市販されている多くの薬剤は、本症および本原虫に対して薬効がないとされているので、治療は下痢による脱水を防ぐための補液による対症療法と、整腸剤の投与が有効です。