本症は、肝蛭という吸虫が胆管に寄生することによって、消化器系の異常、可視粘膜の蒼白、慢性胆管炎、肝硬変を示す疾病です。
 肝蛭は胆管に寄生する吸虫で、世界的に分布します。肝蛭の汚染状況は地域および農家によって大きな違いがあり、多くの場合、特定の水系に関連しています。これは、わが国における肝蛭の主な感染源が稲わらであることに関係します。稲わらなどとともに経口摂取された肝蛭の幼若虫が感染源です。まれに幼若虫が本来の寄生部位である胆管以外の臓器に迷入することがあります。
 元気消失、食欲不振となり、第一胃運動の減弱、軟便や下痢、便秘など多様な消化器症状を示します。腹膜炎による腹壁緊張や背湾姿勢をとります。このほか、発熱、貧血、栄養不良なども認められます。慢性肝蛭症では、体重の減少、皮毛の失沢・粗剛、食欲の減退、下痢、貧血、顎凹や胸垂などに冷性浮腫などが認められます。
 汚染の可能性がある稲わらを給与する場合は、できる限り長期間(3〜4ヵ月以上)貯蔵したり、稲わらのアンモニア処理などで肝蛭の感染力を低下させてから給与します。また、水田に還元する堆肥は発酵完熟させ虫卵を死滅させてから使用します。適切な駆虫は、治療だけでなく感染源を抑制するうえで予防的意義も大きいので、衛生管理プログラムに組み入れることが大切です。