本症は、線虫が気管や気管支に寄生して、ラッセル音、喘鳴、腹式呼吸などの呼吸器系の異常を示す疾病です。
 全国的に発生がみられ、牛が青草に付着した糞便由来の感染子虫(第三期子虫)を経口摂取することにより感染します。このため、放牧中や下牧後の育成牛の発生が多くみられますが、舎内感染も起こります。頻回の咳、呼吸数の増加などの呼吸器症状は、初感染の若齢牛で重く、再感染および高齢牛では比較的軽いという傾向がみられます。また、細菌などの二次感染があれば症状は悪化します。
 感染が軽度の場合は、ときおり咳がみられ、重度の場合は、頭頸部を前下方に伸ばして舌を出し、あたかも異物を吐き出そうとする特徴的な咳を連発します。
 予防法としては、放牧前および放牧後の定期的な糞便検査と駆虫が最も現実的です。また、過密放牧の栄養不良などによるストレスが発症を助長するため、適切な放牧管理も重要です。治療には、駆虫薬の経口投与などが行われていますが、放牧場などで多数の牛に対して応用する場合は、手技が容易で術者の安全性も高い経皮投与が推奨されています。