本症は、下痢、脱水症状などの消化器系の異常を主症状とする伝染病です。
 大腸菌のうち、特定の病原因子を有する菌あるいは混合感染により、哺乳牛の下痢症と新生子牛の敗血症を起こします。重要な発病要因として初乳摂取の良否があげられ、他に飼養環境の急変、長距離輸送、飼料の急変などのストレスによる発症が多く、ウイルス、原虫との混合感染もあります。
 下痢を主徴とする場合、12〜18時間の潜伏期間を経て、突然激しい下痢を起こします。酸臭のある灰白色〜黄色水様下痢、時にはペースト状の下痢や粘血便を排泄します。裏急後重(しぶり腹)がみられ、哺乳欲を示さなくなり、脱水により虚脱状態に陥り、死亡します。敗血症を主徴とする場合、典型的な臨床症状はなく、24〜72時間の急性経過での死亡が多くみられます。
 分娩牛房の消毒、乾燥などの衛生管理により、環境における病原性大腸菌の菌数を減少させることが大切です。下痢を主徴とする場合、牛大腸菌性下痢症ワクチンを応用します。下痢には初期の隔離治療を原則とし、脱水とアシドーシスを防止するため、輸液と原因療法として抗生物質の投与を併用します。敗血症を主徴とする場合、急性経過をとるため、発見が遅れると治療不可能となります。