本症は、ボツリヌス菌が産生するボツリヌス毒素含有飼料を摂取することにより症状が発現します。急死または高致死率を呈し、起立不能および神経症状、筋肉の麻痺を起こす伝染病です。
 ボツリヌス毒素含有飼料を摂取することにより、3〜7日で症状が発現しますが、毒素の摂取量が多いと発現が早まります(8時間程度の例もあります)。野生小動物の死体が混入したり、品質の悪いサイレージおよび乾草などの摂取からの感染もみられます。本菌は腐敗動物、変敗植物中において適温・適湿下で増殖し、その際に毒素が産出されます。
 四肢、下顎および喉頭部から始まる筋肉の麻痺が特徴です。食欲不振から起立不能に陥り、活力低下、沈うつ、歩様異常、流涎、舌麻痺、咀嚼・嚥下困難、首を横に曲げ、うずくまる乳熱様姿勢などを呈し、ついで筋肉麻痺、横臥・四肢伸長となり、最後には呼吸不全に至り窒息死します。牛は苦悶することなく死亡し、腹囲が極端に縮小します。多くの場合、体温、知覚、便などに異常はみられません。
 高水分サイレージ給与を避けること、野生の水鳥が集まる水場などに放牧地や採草地の設置を避けること、動物の死体処理を確実に実施することが必要です。有効な治療法はありません。