本症は、皮膚の創傷、去勢などの外科的処置後あるいは産褥感染、分娩時の産道損傷などにより創傷部の広範囲な皮下浮腫、ガス形成、歩様の異常(跛行)を起こし、急死または高致死率を示す伝染病です。
 原因菌は土壌中をはじめ自然界に広く分布するので、世界的に発生がみられます。発生は散発的ですが、夏季に多いとされています。本症の診断には周辺地域、施設内での過去における発生状況の有無が参考になることがあります。甚急性(数時間から2日間)または急性経過(3〜14日間)をとり、臨床症状を認めることなく、多くの場合急死します。
 創傷部とその周囲に広範囲の皮下浮腫がみられますが、浮腫は短時間のうちに全身に広がり、捻髪音(皮膚を押すとパチパチという音がする)を発します。まれに、鼻腔、口腔、肛門などの天然孔からの出血がみられます。感染局所は熱感があり、創傷部の暗赤色腫脹、ときに創傷部から悪臭液が流出したり、運動障害からふらついたりします。病変が広範囲に及ぶと発熱、呼吸困難に至り、全身が腫大して死亡します。
 予防にはワクチンが有効です。早期に発見された場合は、患部を切開して空気にさらし、液を押し出し、過酸化水素水(オキシドール)で洗浄する方法も推奨されますが、実際には症状の発現後に本症が疑われるので、多くの場合、手遅れです。発生時には、予防の目的で同居牛にペニシリンが投与されます。