本病は、トリコモナス(原虫)により、牛と水牛に泌尿・生殖器系の異常、早期流産を引き起こす届出伝染病です。
 トリコモナスに感染している種雄牛との自然交配あるいは汚染精液の人工授精により感染が起こります。わが国では人工授精の普及などにより、1963年に本病の発生は終息しました。しかし、本病は世界的に広く分布し,南米諸国では重要疾病の一つとなっています。
 雌牛において感染後3日頃から腟粘膜や陰唇の充血・腫脹、多量の黄白色〜乳濁色の分泌物がみられ膣炎を呈し、さらに子宮頸管炎、子宮内膜炎、卵管炎へと波及します。これにより受胎しにくくなり、妊娠しても2〜4ヵ月の妊娠早期に胎子は死亡し、流産します。胎盤や胎子が子宮内に残ると慢性の子宮内膜炎や子宮蓄膿症となる場合もあります。ごく早期の流産は見逃され、発情周期の異常とみなされることもあります。雄牛においては時に包皮炎を起こすこともありますが、ほとんどは無症状で持続的な感染源となります。
 予防には、飼養管理の改善、感染種雄牛の淘汰、清浄精液による人工授精の実施など徹底した対策が必要です。治療には薬物療法が有効ですが、雄牛において完治させることは難しく、清浄化のためには淘汰することが必要です。