本症は、消化器系の異常、起立不能、関節部の腫脹および歩様不安定などの運動器系の異常、神経系の異常、泌尿・生殖器系の異常(流産)、呼吸器系の異常などを呈する急性・慢性の腸炎で、届出伝染病・人獣共通感染症です。
 保菌牛の糞便中に排泄されたサルモネラの経口感染が主体ですが、呼吸器、結膜などを介した感染も認められています。また、乳汁、腟分泌物にも本菌が排泄されます。排泄された本菌は約6ヵ月も生存して感染源となりますので、糞便に汚染された敷わら、飼料、飲料水なども感染源となります。生後1ヵ月以内の子牛で感受性が高く、急性例では1〜7日で敗血症により死亡します。
 急性・慢性の黄灰白色水様性の悪臭・下痢便、脱水症状、可視粘膜の蒼白、重症例では菌血症・敗血症を呈します。急性例では発熱、食欲減退、悪臭のある黄色下痢便ならびに粘血便、削痩、脱水症状などを示します。成牛では不顕性感染例が多いのですが、水様性下痢ならびに血便、泌乳量減少などを示す症例も認められます。妊娠牛では流早死産が認められます。
 予防には発症牛、保菌牛の隔離および感染牛の淘汰が行われます。また、飼育環境の改善、集団飼育牛では初乳飲用の励行、発生牛舎への子牛の導入禁止なども予防効果があります。治療には抗菌剤、抗生物質の投与が行われますが、本菌を排除することは困難なことが多い。発症例では抗生物質に加えて、止寫剤投与、補液などの処置を行います。