本症は、歩様不安定などの運動器系の異常、嚥下困難および流涎、硬直、痙攣などの神経系の異常を呈する人獣共通感染症、届出伝染病です。
 破傷風菌は広く自然界に分布し、本症は炭疽と並ぶ代表的な土壌病です。本症の発生に季節的関係はなく、汚染地域における踏み傷などの深い外傷部位に感染することによって生じます。本菌から生産された神経毒が運動中枢神経を侵し、筋肉の痙攣、強直を起こす急性の疾病で、潜伏期間は4〜5日ですが、1〜2週間の場合もあります。
 食欲はあっても、開口・咀嚼困難などの嚥下困難、流涎、歩様強拘、刺激を与えると頸部から後部に波及する全身の強直性痙攣、鼻孔開脹、木馬様姿勢、後弓反張などが挙げられます。牛では馬より緩慢な症状を示します。死後に体温が上昇することがあります。
 創傷を受け発病のおそれがある場合の予防として、破傷風免疫血清を皮下注射します。経過の初期には、抗毒素血清の大量を皮下または静脈内に注射します。また、痙攣、強直の緩和にマグネシウム剤の皮下注射や鎮静剤の投与がありますが、病勢の進行したものの治療は困難です。