本症は、一般に狂牛病と呼ばれていますが、正式病名は伝染性海綿状脳症です。神経系の異常を主徴とする法定伝染病・海外伝染病で、感染性蛋白質(プリオン)が病原体と考えられています。
 長い潜伏期間の後に発症するため、3〜5歳牛の発症例が多くなります。プリオンは熱、消毒薬に強い抵抗性を示します。めん羊スクレイピーのプリオンに汚染した飼料が最初の原因と考えられています。わが国では、2001年9月に千葉県で乳牛1頭に初の発生が認められました。
 牛は神経質となり、不安動作が目立ち、警戒し、興奮しやすくなります。その他に、持続的な鼻なめ、流涎、歯ぎしり、筋肉の痙攣が認められ、やがて起立不能になります。また、接触などの知覚、音および光に対して過敏となり、興奮して頭部を振るなどの動作がみられます。特に知覚過敏は多くの牛で認められ、手やペン先などで触れると頸を振ったり、痙攣を起こします。知覚過敏を示す部位は牛によって異なり、後躯が過敏な牛では搾乳時に後肢で蹴るなどの反応を示します。運動異常では、牛を歩かせると、こきざみにジャンプしたり、後肢を高くあげて歩様不安定の状態を示します。また、小さな溝を越えられなかったり、四肢を滑らせて転倒しやすくなります。末期には泌乳量の低下、削痩を呈して死亡します。



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 発生国または地域から牛を導入せず、反芻動物由来の動物性蛋白質を飼料として給与しないことが重要です。本症に有効な治療法はありません。