本病は、40℃以上の発熱、貧血、黄疸および泌尿・生殖器の異常などの全身症状を呈する法定伝染病です。なお、牛バベシア病の場合に限り血色素尿を示します。
 本病は、フタトゲチマダニやヤスチマダニなどの吸血昆虫が媒介する放牧病の一つです。小型ピロプラズマ病は全国的に発生しており、特に初回の放牧時の育成牛に多発します。大型ピロプラズマ病では、単独感染で死亡する場合はきわめてまれであり、幼牛よりも成牛で感受性が高くなります。わが国では、小型ピロプラズマ病との混合感染が多くみられています。
 小型ピロプラズマ病に感染すると、1週間ほどで41℃以上の一過性の発熱が認められます。しかし初期のこの時期にはまだ貧血はみられません。感染後10〜14日で赤血球内に原虫が出現し始め、感染約1ヵ月後に原虫の急激な増加にともない、再び40〜41℃の発熱、元気・食欲減退がみられ、可視粘膜の貧血、黄疸、呼吸促迫などが認められます。大型ピロプラズマ病では、貧血や黄疸のほか、40〜41℃の発熱(稽留熱)、血色素尿などが認められます。

 予防法としては、薬剤を用いた媒介ダニの駆除が有効です。また、放牧初期のストレス軽減を目的とした予備放牧は重要です。治療法は、殺原虫剤の投与が有効で、対症療法として輸液や強肝剤、栄養剤などを応用しますが、特に輸血は貧血の改善にきわめて有効です。