狂犬病ウイルスが神経組織内で増殖するため、発症すれば重篤な神経症状を示し、死亡率はほぼ100%の法定伝染病・海外伝染病であり、最も恐ろしい人獣共通感染症の一つです。
 感染動物の唾液に含まれるウイルスは、咬傷による傷口から体内に侵入して感染・伝播します。わが国では1957年以降発生がなく、世界的にも清浄状態を長く維持している数少ない国です。
 発症するとロバのような声で繰り返し吠え、特有の外貌を示します。泡を含まない多量の唾液を流し、脱水に陥ります。食欲は低下しますが、糞を食べるなどの異食がみられることがあります。また、舌、咽頭および食道が麻痺し、嚥下困難や反芻がとまり、異物が詰まっているようにみえます。ついで、不穏、敏感状態になり、腹痛や四肢の麻痺がみられ、起立不能、横臥状態で遊泳運動を示して死に至ります。
 本病の防除対策としてワクチン接種の有効性は高く、感染予防と発病阻止の目的で使用されています。発症した牛は治療しないで殺処分します。