本症は、蹄冠部に生じたび爛による運動器系の異常、口腔粘膜の水疱・び爛・潰瘍による体表・外貌等の異常が主な症状の法定伝染病・海外伝染病です。
 発症牛に接触すると容易に感染し、また空気伝播もしますが、国際間での伝播は汚染家畜、汚染畜産物の流通、船舶や航空機の汚染厨芥、風や人、鳥による物理的な運搬など原因は様々です。潜伏期間は約6日です。伝染力が著しく強く、しかも発生後に生じる発育障害、泌乳障害などによる直接的な経済被害は甚大なもので、わが国では、2000年3月に本症が92年ぶりに発生しましたが、同年11月以降、口蹄疫清浄国として承認されています。
 初期には、発熱、食欲不振、鼻漏、流涎および跛行がみられ、その後、舌、唇、歯齦、咽頭、口蓋などの粘膜と蹄部および乳房、乳頭に水疱ができます。水疱は急速に増えて大きくなりますが、短期間のうちに破裂し、潰瘍やび爛ができ、激しい痛みを伴うことから、食欲減退と発育障害が生じます。蹄部の水疱は細菌の二次感染を受けやすく、時には蹄が離脱する場合があります。

 汚染した恐れのある乳汁、糞便、飼料、畜舎、輸送車などの消毒、人および家畜の移動制限などを徹底的に行い、患畜および感受性のある接触動物を殺処分し、蔓延を防止します。本症の常在国およびその隣接国では不活化ワクチンが使用されています。しかし、一度ワクチンを使用すれば、ワクチン接種動物は感染源となる確率が高いため、接種動物はすべて処分しないと口蹄疫清浄国に復帰できません。有効な治療法はありません。