腺疫
概要
 本症は、腺疫菌による馬科動物に特有の伝染病であり、世界各国および  わが国で発生しています。感染馬は、高熱、食欲不振、元気消失の他、特徴的な下顎リンパ節の腫大や膿様鼻汁などを示します。自潰したリンパ節や膿汁中に含まれる菌が直接、あるいは餌や水を介して間接的に伝播します。
主な原因
 本症は、腺疫菌が感染して起こる馬科動物に特有の伝染病です。本菌は、馬の頭部から頸部のリンパ節に感染して膿瘍を形成します。膿瘍はやがて自潰しますが、その膿汁中あるいは鼻汁中には多数の腺疫菌が含まれており、馬同士の接触により直接、あるいは飲み水や餌などを介して間接的に伝播します。馬の移動や集合に伴って集団的に発生することが多く、ヨーロッパ、オセアニア、北米など、世界中で頻繁に報告があります。わが国でも古くから知られていましたが、第二次大戦後は消失したと考えられました。しかし、1992年に馬の輸入に伴って再度海外から持ち込まれたものが広く伝播し、現在もその発生は継続しています。
主な症状
 本症に感染した馬はまず、発熱、食欲不振、元気消失などの症状を示します。次いで下顎リンパ節など、主として頭部から頸部のリンパ節が腫大します。腫大は化膿性で大きく特徴的です。咽喉頭部のリンパ節の腫大が著しい場合には、嚥下困難や呼吸困難が認められます。膿性鼻汁の排出もしばしば認められる症状の一つです。腺疫菌の感染は通常は頭部から頸部に限局して起こり、多くの場合、発症してから1〜3ヵ月後に自然治癒します。しかし、感染が全身に及ぶこともまれにみられ、その場合は死亡または再発を繰り返します。また、出血性紫斑病、心筋炎、貧血、喉頭麻痺などの続発症も時に認められます。
主な予防法
 わが国ではワクチンは用いられていません。導入馬の検疫と感染馬の隔離が重要です。腺疫に罹患した馬は、1週間に1度の連続検査で3回以上本菌が分離されなくなるまで隔離します。新たに導入した馬も2週間は検疫期間を設けることが望ましいです。
 セファロチンやペニシリン、あるいはスルファメトキサゾート・トリメトプリム合剤などが治療薬として用いられます。抗菌剤による治療は、感染の初期と重症例にとどめ、通常は隔離して自然回復を待つべきです。一方、新たな腺疫流行の発生源となる長期排菌馬は、その多くが喉に保菌していると考えられます。したがって、長期排菌馬については、全身投薬に喉の洗浄を組み合わせた治療が必要です。