馬伝染性貧血(法定)
概要
 本症は、馬伝染性貧血ウイルスを原因とする、馬属に特有なウイルス感染症です。感染馬は、回帰熱発作を起こすとともに、徐々に貧血を示します。急性型では、感染後数週間で死亡することもあります。しかし、多くの場合は慢性型に移行し、治癒することはなく、死に至ります。なお、ウイルスは血液中に存在するため、感染源となります。法定伝染病に指定されています。
主な原因
 本症の原因である馬伝染性貧血ウイルスは、白血病ウイルスやエイズの原因ウイルスである人免疫不全ウイルスなどと同じグループのウイルスに分類されています。
 わが国では、1978年に行われた診断法の改正により感染馬の的確な摘発・淘汰が進み、1993年に検査を実施していなかった肉用馬の牧場において2頭が摘発された以外は、1984年以降の発生例はありません。しかし、諸外国では、わが国のように検査・淘汰方式をとっていない国が多いこともあって、競馬先進国においても発生は続いています。一方、発展途上国においては、感染馬を淘汰すると馬がいなくなるといわれるほど汚染が進んでいる国もあるので、特に輸入馬の検査は重要です。
主な症状
 症状から、急性、亜急性および慢性型に分類されます。急性型では、40℃以上の発熱が1週間以上持続し、貧血、口腔粘膜の出血斑、黄疸、下肢および下腹部の冷性浮腫などが観察され、死亡します。数日で解熱し、再度発熱を示す回帰熱に移行すると、亜急性型となります。発熱を示さず、慢性型に移行する場合もあります。慢性型から回帰熱が再燃した場合には、再燃型と呼ばれ、死に至ることもあります。一般に発熱を繰り返すと、貧血が進行します。
主な予防法
 ウイルスの特性上、ワクチンと治療法はまだ開発されていません。吸血昆虫の駆除、治療器具の滅菌などが本症の感染を予防するうえで重要です。