概要
 本症は、牛肺疫菌を原因菌とする呼吸器系の異常、すなわち呼吸困難、呼吸促迫、流涙、流涎、鼻汁を示す疾病で、法定伝染病・海外伝染病に指定されています。
主な原因
 本症の原因菌である牛肺疫菌はマイコプラズマの一種で、小型菌と大型菌の2つがあります。小型菌は山羊やめん羊には病原性を示しません。一方、大型菌は山羊やめん羊に感染するとMAKePS、すなわち乳房炎・関節炎・角膜炎・肺炎・敗血症症候群と呼ばれる症候群を起こし、重度の胸膜肺炎、関節炎、乳房炎などの症状を示します。
 病原体を含む鼻汁との接触感染や飛沫感染が主な感染経路です。清浄地域の若齢獣が感染した場合の発病率は100%で、高い致死率を示します。しかし、常在地の成獣が感染すると、不顕性感染を起こし保菌獣となって汚染源となります。
主な症状
 39〜40℃の発熱、倦怠感、食欲不振などの初期症状を示した後、さらに41〜42℃の高熱を発し、疼痛性の発咳、水様性もしくは粘稠性の鼻汁、呼吸困難、反芻停止、泌乳量の低下などがみられます。この時期に肋間部を指圧すると、激痛を訴えます。末期になると重篤な呼吸困難を呈し、苦しみもだえて死に至ります。潜伏期は10〜14日で、長いものでは3〜6ヵ月におよぶものもあります。急性期には41℃以上の高熱、反芻停止、運動後の激しい発咳などがみられます。呼吸は浅くて速く苦しいため開肘姿勢を示し、頭頸を伸長し、喘鳴を伴います。慢性に移行すると、さらに呼吸が困難となり、疼痛性腹式呼吸を行い、やせてきます。
主な予防法
 わが国では本症が発生した場合、「海外悪性伝染病防疫要領」に従い、患畜の早期発見・淘汰を行い撲滅を図りますが、本症を侵入させないような検疫体制の堅持が最大の予防法です。