流行性脳炎(法定)
概要
 本症は、牛疫ウイルスの感染による牛、野牛およびヤクの致死性・急性伝染病で、めん羊、山羊、豚および野生有蹄類も罹患します。発熱、歯齦・舌・頬・口蓋の壊死性潰瘍、眼・鼻腔からの激しい粘液性分泌を特徴とします。また、消化管粘膜の急性炎症による出血を伴う激しい下痢も本症の特徴で、法定伝染病・海外伝染病に指定されています。
主な原因
 本症の原因は牛疫ウイルスです。このウイルスは、牛、水牛、めん羊、山羊、豚および野生の反芻獣に感染しますが、ラクダには感染しません。ウイルスはリンパ組織に多く存在し、糞尿、唾液などあらゆる体液から排出されます。牛や水牛は最も高い感受性動物ですが、共存した場合、最初に感染するのはめん羊や山羊で、これらが牛への感染源になることが中東などで認められています。
 感染は罹患家畜との接触、または汚染された飼料、水、敷きわらなどにより拡大します。
主な症状
 症状は、山羊およびめん羊の品種、年齢などに影響され、幼山羊および幼めん羊の方が重い症状を示します。潜伏期は3〜5日で、40〜41℃の発熱後24時間以内に食欲不振、喉の渇き、鼻汁や涙の激しい流出がみられます。2日後には糞便は軟らかくなり、下痢が始まります。腹痛ははげしく、口腔の疼痛は舌の断続した出し入れからわかりますが、流涎は一般的ではなく、口唇部の病変は必ずしも現れるわけではありません。糞便は黒く液状で、血液や剥離した粘膜を含んでおり、その影響で後脚、腰部および尾部は汚れています。死亡例では、鼻汁は膿様性となり、呼吸が促迫してきます。野外では、二次感染を起こして気管支肺炎を併発する場合が多くみられます。
主な予防法
 本症の清浄国であるわが国においては、ワクチンを使用せず、汚染国からの動物や畜産物の輸入禁止、または制限を行い、牛疫ウイルスの侵入を防止しています。なお、万一の発生に備えて、国はワクチンを備蓄しています。