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解答と解説

質問1に対する解答と解説:
 代表的な悪性口腔内腫瘍としては,悪性黒色腫,線維肉腫,扁平上皮癌,棘細胞性エプリス,骨肉腫があります.悪性黒色腫は犬の悪性口腔内腫瘍の内,約30 〜 40 %を占め,最もよく見られる腫瘍です.犬では老齢動物に発生し,平均年齢は9 〜 12歳です.

質問2に対する解答と解説:
 円形細胞としては,黒色腫,肥満細胞腫,組織球腫,リンパ腫,形質細胞腫,可移植性性器肉腫があります.表1 に細胞診における円形細胞腫瘍の比較を示しました.
  黒色腫の細胞形態は短紡錘形・不整形です.核は円形から楕円形を呈しています.細胞質内にメラニン顆粒を有する細胞が最も一般的な黒色腫細胞の特徴でありますが,顆粒が観察されない細胞もあります.顆粒の色は漆黒あるいは黒褐色です.顆粒の大きさ及び量も様々で,規則性はありません.無色素性黒色腫の細胞診の特徴としては,細胞質が全体的に暗く,灰色かかってみえ,また大型の核小体を有するものが多くありますが,ただメラニン顆粒は細胞の分化程度に依存しています.未分化な黒色腫細胞ではほとんどメラニン顆粒は観察できないときがあります.

質問3に対する解答と解説:
 メラニン顆粒がわずか,あるいは無色素性の黒色腫を診断する場合には,免疫組織学的評価が必要となります.以下にこれまで報告されている免疫組織学検査結果の陽性率を記載します.ビメンチン:100 %,メランA : 93 %,NSE : 90 %,S100 :76 %.現時点ではメランA が犬の口腔内黒色腫の確定診断としては,最も感度が高く,特異性が高いといえます.
 治療方法としては,外科切除が第一選択です.完全に切除できない場合には,補助治療として放射線治療を考慮します.外科手術が初期の段階から積極的に行われれば,生存期間を延長する可能性があります.積極的な外科手術とは,下層の骨切除を含みます.局所の再発率は下顎骨切除術を実施した場合は15 %以下,上顎骨切除術を実施した場合には48 %であったとの報告があります.またある報告では,積極的な手術を行った犬の生存期間の中央値は7.3 〜 9.1 カ月で外科手術を受けなかった犬の生存期間の中央値は2 カ月であったとの報告があります.
 犬の口腔内黒色腫に対してカルボプラチン,シスプラチンを使用した報告がありますが,十分な効果は得られていません.その他の抗がん剤として,ダカルバジン,メルファラン,ドキソルビシンの単回投与を実施した報告がありますが,同様に十分な効果は得られていません.悪性黒色腫に関して化学療法は補助療法としては不十分であるといえます.
 重要な予後因子としては,手術の有無,ステージ,大きさ,転移の有無,組織学的評価があります.犬の口腔内黒色腫の臨床ステージ(WHO)は以下の通りです.ステージTでは腫瘍の大きさが直径2cm 以下,ステージUでは2 〜 4cm,ステージVでは4cm 以上またはリンパ節転移(+),ステージWでは遠隔転移(+)となっています.生存期間の中央値は,T: 17 〜 18 カ月,U: 5 〜 6 カ月,V: 3 カ月とされています.すなわち,大きいほど,また転移があるほど予後は悪いことを意味しています.
 犬の悪性黒色腫では通常のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色による組織学的検査では,悪性,良性を十分に評価することができません.Laprieら(2001)は,皮膚黒色腫の予後因子としてKih67を用いた免疫組織化学的検索を行いました.その結果,悪性の挙動の的中率は従来のHE 染色による診断(91 %)よりもKih67 を用いた方が高い(97 %)ことがわかりました.Kih67 は細胞増殖マーカーの1 つです.この蛋白は細胞周期のすべてのphase で発現しています.そのため,この蛋白の発現がみられた細胞は,細胞周期に入っていることを表しています.黒色腫の予後判定に関しては,通常の病理組織検査に加えて,Kih67 等の細胞増殖マーカーを検出することが重要であることが示されました.

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※次号は,公衆衛生編の予定です
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