「獣医師生涯研修事業のページQ&A 産業動物編」
に対する読者からの意見について

 獣医師生涯研修事業のページQ&A産業動物編(日本獣医師会雑誌第60巻第1号32頁)に対して,読者から意見をいただいたので,次のとおり生涯研修事業運営委員会の見解を掲載し,回答とします.

意見1:
 牛群検診に関するQ&Aの解答に「マイコトキシンが原因」とありますが,検査成績等を見てもどこから答えが導き出されるか理解できません.もう少し論理的に説明願えればありがたいと思います.
 また,対策の後半に「症状の改善や成績の向上が認められるならば,原因はその可能性が高いと判断される」という行があり,テーマの選定についても首を傾げました.
 
意見2:

 記事のどの所見からカビ毒と判断すればよいのか私にはわかりません.また,そういう証拠を指し示す事例は文献的に見あたらないと思っております.
 また,カビ毒の吸着剤の効果もどこまで確かなことなのでしょうか.
 カビ毒が現場にあり,多くの問題をもたらしている可能性は多くの関係者が認識していても,その証拠を掴めないからこそ問題なのではないでしょうか.
 良く読むと断定は避けているのですが,恐らく学生の方などが読めば,漠然とこういう農場はカビ毒が問題であるとの印象を受けると思われます.恐らく,それほど解明された分野ではないと思いますが間違いでしょうか.
 現場の獣医師が経験的に何かをカビ毒によるものと疑い,対応することは一向に構わないと思いますが,本誌において,不確定な情報をQ&A形式で示すべきでしょうか.
 本来,可能性も,不確実さも,全て研究論文やCase Reportとして出されるべきではないでしょうか.

 
意見1に対する委員会の見解:
 農場不振の原因として飼料中マイコトキシン汚染の証拠が明らかでないとの指摘について

 大動物臨床分野では疾病の多発,低乳量,繁殖成績の長期不振などがみられる酪農場に対して,一般に代謝プロファイルテスト,飼料設計の見直し,定期牛群検診などを含めた飼養管理の指導が行われています.しかし,実際には,指導に従い改善事項を農場主が実行しても生産性の向上が認められない農場が多数存在し,獣医師と農場主間の信用問題にさえなっています.農場不振事例では,種々の原因や要因が検討されておりますが,ここ数年の調査において,給与粗飼料中にマイコトキシンが高濃度に検出されるケースが報告されており,今回のQ&Aではマイコトキシン汚染と生体に及ぼす影響について,まだ解明されていない部分があることは事実ですが,あえて喫緊性の高いテーマとしてとりあげました.
 農場の特徴的な所見については,先に記載した文章に細部まで網羅されていない部分も多く,疑問を持たれた読者もいたと思いますが,マイコトキシン汚染は多くが非特異的な症状を示すため,エンドファイト中毒を除いて確定診断が困難であるといわれています(Whitlowら1999).実際の野外例でも,多くは自給サイレージの給与とともに牛群全体の軟便傾向,BCSの低下,Ht値の低下,早流産および治療に反応し難い慢性病の多発などが共通所見として認められ,給与されているサイレージなどから数種のマイコトキシンが検出されています.多くの研究者らも疾病多発および低生産性牛群において栄養面,管理面から大きな問題が認められない場合,消去法によって飼料のマイコトキシン汚染を疑う必要があるとしており,汚染が疑われる飼料の給与中止やマイコトキシン吸着剤の飼料添加などにより,改善傾向の有無を確認することが唯一の診断法と述べています.飼料中のマイコトキシン分析を実施できる検査システムも徐々にではありますが増加していますので,今後は不振事例における実態の把握がさらに進むことを期待したいと思います.
 
意見2に対する委員会の見解:

 マイコトキシン吸着剤の効果が明らかでないとの指摘について

 吸着剤は飼料の栄養価を変化させず,生体に直接影響を及ぼさずにマイコトキシンを除去する物質で,鉱物系吸着剤,酵母細胞壁系吸着剤および両者を含む吸着剤などが市販されています.in vitroにおける実験では数種類の吸着剤を用いたアフラトキシンB1の吸着効果が報告されており(Diazら2002,Spottiら2005),in vivoにおいては乳汁中に含まれるアフラトキシンM 1の低減効果も報告されています(Diazら2004,Harveyら1991).その他のトリコテセン系マイコトキシン,オクラトキシン,ゼアラレノンなどに対する効果も認められていることから,吸着剤の使用はマイコトキシン汚染の対策のひとつとして重要と考えられます.

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