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解答と解説

質問1の解答と解説:

 主な病態は,Ht値の増加,白血球数の増数,高蛋白血症,高血糖,高窒素血症,高リン血症,低ナトリウム及び低クロール血症,浸透圧増加,HCO3−低下とSIG低下の酸塩基平衡異常であり,重度の血液濃縮と腎不全,代謝性アシドーシス,腸管内における有機酸(乳酸)の産生が推察されます.代謝性アシドーシスは,便中への重炭酸塩損失と腸管内における乳酸などの有機酸の産生増加,血液量の減少による組織中の乳酸蓄積と腎臓からの酸排泄低下に起因します.
 子牛下痢症は,脱水が著しい分泌性と酸塩基平衡異常が著しい吸収不良性の2つに分類され,8日齢以内の子牛下痢の多くは脱水が著しい分泌性下痢です.症例の子牛は脱水と代謝性アシドーシスの酸塩基平衡異常を併発している急性下痢症です.また高窒素血症は,循環血液量の減少に伴うBUN/Cre比の増加を示す腎外性腎不全です.

 
質問2の解答と解説:
 輸液:臨床症状と血液濃縮から12%以上の高度脱水と診断して,循環血流量の改善の目的で7.2%高張食塩液(HS)200ml(4ml/kg体重)を5分で静脈内に投与し,その後,12%脱水と代謝性アシドーシスの改善の目的で,HCO3−mEq欠乏量=(30−8)×体重45kg×0.6分布スペース=324mEqを算出し,7%重曹注(HCO3−835mEq/l)400mlとビタミンB1剤20mlを等張リンゲル液5l(体重45kg×0.12)に混合して15ml/kg/時間の投与速度で,点滴投与します(図1,2).脱水症に対する従来の輸液療法は,欠乏水分量の輸液ですが,近年,[1] 循環血液量減少の迅速な改善 [2] 一過性の血管拡張を目的とした7.2%HSの輸液と血液量の維持を目的とした経口補液の併用が行われています.しかし,HS療法は循環血液量減少の改善を目的とした一次的な救命処置であり,HS投与直後から欠乏水分量の維持輸液が必要です.

 経口添加剤:腸炎の治療と腸管内の有機酸の産生抑制,高リン血症の改善を目的として,複合整腸剤10gと生菌製剤10g,樹皮熱処理抽出製剤10g,アルミゲル2gを団子状に混合して,代用乳給与後に3回/日,経口投与します.代用乳は,便性の改善を観察しながら0.5〜0.8l/回を日に3回給与します.拍水音を伴った腹囲膨満が認めらる例に対しては,脱水の改善を目的とした強制的な経口輸液は行うべきではありません.
 重度の脱水症と代謝性アシドーシスを主徴とする子牛の下痢症の治療としては,迅速な循環血液量減少の改善を目的としたHSの一次的輸液,欠乏水分量とHCO3−の補正を目的とした維持輸液が推奨されます.さらに輸液療法と同時に,腸炎の治療と腸管内における有機酸の産生抑制を目的とした添加剤の経口投与が重要です.


図1 HtとTPPの経時的推移
図1 HtとTPPの経時的推移
 
図2 静脈血pH,HCO3−,SIGの経時的推移
図2 静脈血pH,HCO3−,SIGの経時的推移
 
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※次号は,小動物編の予定です
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