附録
  出産の手助け

 古くから、犬は安産の代名詞とされて、戊の日に"はら帯"を巻く風習が残っています。お産は生理的な現象ですからそれほど心配ありませんが、犬・ねこだからといって簡単に生れるとは限りません。とくに小型の犬や頭の大きい種類などに多く難産を見うけます。放っておいて気が付いたときには手遅れで、母子とも死なせた例も少なくありません。可愛いい飼犬、ねこのことですから飼い主は出産が終るまで見守ってやるべきでしょう。

  1. 妊娠中の手入れはどうしたらよいか
  2. 出産前の準備はどうするか
  3. 分娩の状態と新生児の扱い方は
妊娠中の手入れはどうしたらよいか
  日常の手入れ、運動など(「日常の手入れ」参照)は、平常のときと同じにしますが、出産が近くなりますとお腹も大きくなって動作も鈍ってきますので、過激な運動はさけなければなりません。
  妊娠40日後になりますと、急に母親のお腹が大きくなるのが目立ち、素人目にも妊娠したことがわかります。この時期では、母親の栄養量は普通のときの約2倍も必要とします。妊娠中の栄養が悪い場合には、胎児の発育にも影響して、生まれる子犬が虚弱であったり、死亡する原因にもなります。また母乳の分泌も不足して生まれた子犬全部が栄養不足になることがあります。したがって十分な健康管理をするとともに、胎児の発育にともなって、その量も増やし栄養価の高い蛋白質その他、ビタミン、ミネラル(カルシウムを十分に)などバランスのとれた餌を与えるようにしてください。

出産前の準備はどうするか
  出産が近くなりますと、母親は落ちつきがなくなり、神経質になりますので、できるだけ早く産室、産箱(犬舎内)を用意してやることです。こうしておくと早くから母親は新しい環境に馴れますので、安心して子犬(ねこ)を産むことができるわけです。
  また子犬、子ねこのいる母親は他の動物に対して攻撃的になることがありますから、何頭も飼育している場合は、産室(箱)がみえないように隔離することがよいでしょう。

分娩の状態と新生児の扱い方は
  交配した日から数えておおよそ2ヵ月目で分娩が始まります。いつ、子どもが生まれてもいいようにタオルまたはボロ布、鋏、糸など用意しましょう。とくに母親の状態をよく観察します。分娩がはじまる12〜14時間位前になりますと、母犬、母ねこは活発に動き回り巣づくりの動作をします。この場合、多くの母親は餌を食べなくなって、神経質となり落ち着きがなくなり、間もなく陣痛が始まります。その陣痛が次第に強くなって胎盤が子宮より剥がれて産道から胎児が産まれてきます。通常母親は、臍帯をかみ切って、新生児をなめまわし、呼吸ができるようにしますが、なかには、これらの始末をしない母親がいます。この場合は飼い主が代って胎膜を取り除き、臍帯をしばって切ってやる必要があります。(「救急法」参照)
  また母親は次の胎児を産むのに懸命になっているので、先に生まれた新生児はお産が完全に終るまで保温した箱に移しておいたほうがよいでしょう。また分娩中におどろかしたり、見知らぬ人が近づいたりしないように注意しましょう。
  順調に出産が終り新生児が一斉に母親の乳房にすがりついている姿を見ることは、繁殖した者のみが味わえる喜びと思います。
  お産は病気ではないとはいえ、どの犬(ねこ)も簡単に分娩ができるとは限りません。ときには、帝王切開手術で胎児を取り出すことも少なくありません。予めお産のことについて獣医師と話し合っておき、いざというときに間に合うようにしておくのがよいでしょう。また犬では、交配の有無にかかわらずときに偽妊娠(想像妊娠)とよばれる妊娠とまらわしい徴侯(乳線がはり乳が出る、お腹がふくれるなど)の見られることがあります。