一般原則
  犬とねこの特性について

 犬やねこを正しく飼うために、飼い主はそれぞれの本能や習性、生理について一般的な知識と理解をもち、さらにその飼い犬やねこの性質や個体差をふまえて、それに合わせた飼育としつけ、訓練を行うことが大切です。このことは飼い主の社会に対する責務でもあります。

  1. 本 能
  2. 習 性
  3. 生 理
本 能

本能とは動物が生まれながらに持っている一定の適応様式であって、その主なものは――
  1. 生殖本能 ―子孫を残し種族繁栄のために―
      善用すれば、よい遺伝因子、よい素質を固定し品種改良に役立ちますし、可愛い子宝に恵まれます。放任すれば、発情期の遠ぼえ、逸走、けんか、放浪犬・ねこの増殖、野生化などの根源となりましょう。
  2. 母性本能 ―子供を守り育てる―
      哺乳期の母犬や母ねこはこどもにかかりきりで、乳を与えお尻をなめて排泄を促して世話をします。母は子を守り育てる本能があるので、こどもに不用意に手を出したりすると危険なことがあります。
  3. 採食本能 ―成長と生命の維持―
      生まれるとすぐ母親の乳首をまさぐり吸いつきます。犬やねこは元来肉食動物としての特性をもっており、また、食べ物の適不適を見分けます。
  4. 防衛本能 ―身を守る―
      ナワバリを侵されたり、危害を加えられたとき、またはそのおそれを直感するとき、逃げて身を守るか逆に攻撃に転じます。急におどかす、いじめる、けしかける、食事中に手を出すことはやめましょう。
習 性

  犬とねこの習性には共通する点もありますが、微妙な相違面もあり、なかなか面白いものです。むろん個体差はかなりあるのですが、一般的に―

犬では―――

  1. 飼い主に深い愛情を持ち、良く服従する
      可愛がってくれる人、強いと思うものには従うが、知らない人や犬・ねことはなじまないことがあります。
  2. 警戒心が強くテリトリー(領域)を守る
      自分のテリトリーに近づくものを警戒し、見知らぬ人や他の動物がテリトリーに入ろうとすればそれを守ろうとします。番犬として役立つのはこのためです。ですから気心の知れない犬にむやみに近づくときは注意しなければなりません。
  3. 走るものを追う、つかまえる
      猟犬に必要な性能の一つですが、子供など犬を見て急に駆け出して逃げたりすると追いかけ、咬傷事故につながることがあります。
  4. 攻撃性がある
      犬は防衛のためばかりでなく、弱いものをいじめるなど積極的に攻撃する習性もあります。他人に対して警戒態勢をとっているときに、急に飼い主が現われ、声を掛けたりすると、味方を得た気になったり、けしかけられたと勘違いして積極的に攻撃することもあるので、散歩の時の他の犬とのすれ違いの時や、放れている時のよびかけなどには注意が必要です。
  5. 穴を掘る、物をくわえて運ぶ
      野生時代は穴に住んでいて、えさを運び込み、自分の居場所は決して糞尿で汚さない習性があります。この習性が穴を掘って逸走したり、大事なものを失敬したりのいたずらにつながるので注意しましょう。そしてうまく活用することもできるはずです。
  6. 愛情を独占したい、嫉妬心(やきもち)もある
      この傾向の強い犬がときどきあるので、このような犬の前でこどもやほかの犬を抱いて可愛がったりするときは注意しましょう。咬みついてきたり、八つあたりすることがあります。
  7. 群棲することを好む
      野犬が群をなして横行する例があります。野生時代からの習性で、リーダーができ、それぞれの群の行動範囲(ナワバリ)があるようです。犬を放し飼いにしたり、捨てたりすると、凶暴な野犬集団をつくる結果になりかねません。
ねこでは―――

 従順で飼い主によく馴れるが、犬と比べて主人絶対の面では、その趣きを異にしており、むしろ自己中心的にみえます。

  1. 走るもの、動くものを追う、つかまえる、遊ぶ、なぶるなどの習性があります。
  2. 獲物を見張り、根気よく待ち、忍び寄り、また退ぞき、一瞬の動作で捕えます。
  3. 警戒心が強く、自己のナワバリを主張し、守ります。
  4. 群棲するより、どちらかといえば孤独を好みます。
  5. キレイ好きで、からだや居場所を汚しません。
  6. 拘束されることを嫌います。
      しかし、子ねこのときから首輪をつけて、つないだり収容する習慣をつけると、放し飼いでなく室内だけでも飼うことができます。トイレの場所を決めてやればほかを汚すことはまれですし、ひもをつけて散歩させて室内犬なみに飼育している愛猫家も少なくありません。

生 理

  1. 犬やねこは元来肉食動物です。
      犬とねこは、人間に飼い馴らされてきた歴史が長いだけに本来の肉食から雑食に移行したタイプも多いのですが、肉食獣としての素質が強く残ったタイプでは野菜や米飯などを好まず、無理に食べさせると消化不良をおこすこともあります。以下人間と異なる肉食獣の特徴の幾つかについてふれてみましょう。
  肉などを引き裂き、噛みちぎる構造で、奥歯(臼歯)も穀類や野菜をすりつぶす機能はありません。したがって食べ物が喉を通る大きさになれば、ほとんど丸のみに近い食べ方をします。
唾液  人間や草食獣のように、澱粉を糖化する働き(酵素)がありません。
胃腸 肉食獣の構造で、腸の長さも短く、肉類(動物性蛋白、脂肪)、骨などの消化吸収に適し、植物性繊維(野菜)や炭水化物(穀類、いも類)の消化は比較的苦手といえます。
肝臓 ビタミンCを合成する能力を備えています。したがって毎日野菜を食べなくても、ビタミンC不足で変調をきたす心配はありません。

犬とねこの生理緒元(正常値)
  ねこ
体温(直腸内) 幼犬はやや高い 38.5〜39.0度
成犬はやや低い 37.5〜38.5度
38.0〜39.0度
呼 吸 10〜30/分 15〜20/分
脈 拍 幼犬80〜120/分
成犬70〜80/分
110〜130/分
体温、呼吸、脈拍は運動、気温、湿度などによって変わることがあるので、できるだけ安静にして室内ではかる必要がある。

  1. 歯と毛のはえかわり
      乳歯は生後3週間位で生え始め、1ヵ月半位で生え揃うが、4〜5ヵ月になると永久歯に生え変わる。この時期に体毛もウブ毛から大人の毛に換毛する。
  2. 発情とその周期、妊娠期間
      平均して、雌犬は生後8〜10ヵ月で最初の発情がきて、以後は6ヵ月間隔で年2回。雌ねこの発情は生後6〜8ヵ月で始まり年に2〜4回繰り返す。
    雄の場合は、犬・ねことも特定の発情期はなく、雌のその時期に合わせて行動する。妊娠期間は犬・ねこいずれも約2ヵ月である。