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行政・獣医事

動物看護職の全国組織化に向けて



 日本獣医師会では,今後の動物医療の提供を図る上において,獣医師と動物診療の関連職種との連携したチーム医療体制の整備が不可欠であるとの観点から,動物看護職について,その専門職としての位置付け,養成・資格認定のありかた,職場環境の整備等について小動物臨床部会動物診療補助専門職検討委員会(「委員会」)を設置して検討を重ねてきた.
 委員会における検討の結果,本件に関する問題に対応するためには,動物看護職自身の組織化が優先的な課題であるとされ,この結論を受け,平成20年2月開催の日本獣医師会学会年次大会(香川)において,動物看護職自らが中心となり,関係者の支援の下,動物看護職全国協会設立準備会(「準備会」)が発足したところである.
 その後,全国組織の設立に向けて,準備会を中心に,民間動物看護職認定団体,動物看護職養成施設(学校),地方獣医師会等の関係者の理解を得ながら鋭意活動が推進された結果,このたび設立発起人会が組織された.
 今般,設立発起人会から本会に対し,本会関係役員及び地方獣医師会会長各位の設立発起人への就任要請がなされた.本会としては,本件に係るこれまでの活動において,関係者間の調整役を務めるとともに,地方獣医師会及び構成獣医師に対し,本件に関する情報提供に努めてきたところであり,今後とも発起人会の活動を支援することとしている.今回,日本動物看護職協会設立発起人会(代表:森 裕司東京大学大学院教授)から本会に対し全国組織設立に向けての支援の要請が別紙2のとおりなされたことを受け,地方獣医師会会長に次により理解と協力を求めた.

20日獣発第193号
平成20年11月10日
地方獣医師会会長 各位
社団法人 日本獣医師会
会 長 山根義久
動物看護職の全国組織化に向けて(お願い)
 本会の事務・事業運営につきましては,平素からご理解,ご支援を賜り御礼申し上げます.
 さて,多くの動物診療施設において動物の看護を業務とする動物看護従事者(動物看護職)が雇用され一定の職業分野として定着しつつある中,地方獣医師会におかれては地方獣医師大会等において動物看護職の養成と資格制度のあり方等が決議され,その体制整備に向けての対策の推進を要請されてきたところであります.
 本会におきましては,ご承知のとおり,動物医療提供の質の確保に向けての社会的要請が高まりをみせ,かつ,高度化・多様化してきている中で,今後の動物医療の提供においてチーム医療体制の整備が不可欠であるとの観点に立ち,これまで全国獣医師会会長会議等の場において説明・協議させていただいたとおり,動物診療に対する一層の信頼の確保を図る上での動物看護職の専門職としての位置づけとその養成・資格認定のあり方,更には業務環境の整備の課題を地方獣医師会関係者,民間資格認定団体,養成施設(学校)関係者と対応を協議検討の上,農林水産省等に対し制度整備の要請を行ってきたところでありますが(別紙1),先ずは,動物看護職自身の組織化による活動により社会的評価の推進を図ることが先決との考えの下,本会小動物臨床部会の主導により先般2月開催の日本獣医師会学会年次大会(香川)において,動物看護職全国協会設立準備会が発会したところであります.
 今般,同設立準備会が母体となり動物看護職の全国組織を動物看護職をはじめ,関係教育機関,獣医師会等の関係団体,民間資格認定団体,動物関連業界などの賛同の下で組織すべく,代表者等による決意の表明がなされ,本会に対し本職をはじめ関係役員の設立発起人の就任と「設立準備会」並びに「設立発起人会」活動に対する支援が,また,貴職の設立発起人への就任について本会から要請願いたい旨の依頼がなされたところであります(別紙2).
 本会としても,設立発起人会からの要請に異存はないところであり,全国組織設立に向け今後ともその活動を支援する考えであります.
 つきましては,貴職におかれましても別紙3の「日本動物看護職協会設立趣意書」にご賛同の上は,設立発起人就任をご了承いただきますよう,よろしくご配慮の程お願い申し上げます.


【別紙1】
動物看護職のあり方等に関する検討及び要請の経過
1 検討の経過等
 (1)日本獣医師会における検討等
ア 平成元年11月:AHT養成施設認定のための基本的考え方「AHT養成学校認定システム(骨子案)」(日本獣医師会小動物部会AHT制度検討委員会(委員長:茂木国男))のとりまとめ
イ 平成15年4月:動物医療における動物看護士のあり方について(日本獣医師会小動物委員会報告(委員長:市田成勝))のとりまとめ
ウ 平成18年4月:動物医療補助専門職資格の制度化に向けて(日本獣医師会小動物臨床部会小動物委員会報告(委員長:細井戸大成))のとりまとめ
エ 平成18年3月:「動物看護師(士)認定の現状と今後の職域」シンポジウム(日本獣医師会学会年次大会・日本獣医学会学術集会連携大会(つくば))の開催
オ 平成18年12月〜:動物診療補助専門職の現状と課題に対する対応の検討を開始(日本獣医師会小動物臨床部会動物診療補助専門職検討委員会(委員長:細井戸大成))
カ 平成20年2月:動物看護職全国協会設立準備会を発会(日本獣医師会学会年次大会(香川))
キ 平成20年3月:動物看護職関係団体(民間資格認定5団体・日本獣医師会)懇談会を開催
ク 平成20年9月:動物看護職の今後に関する意見交換会(養成学校(施設)関係者,動物看護職全国協会設立準備会,民間資格認定5団体,日本獣医師会ほか)を開催
2 地区大会における地方獣医師会からの要望
 ア 平成16年度
 ・動物診療補助者の要件と行為の範囲の統一(中部地区)
イ 平成17年度
 ・動物看護士の国家資格制度創設(中部地区)
 ・動物看護師制度の確立(中国地区)
ウ 平成18年度
 ・動物看護士の国家資格制度の創設(中部地区)
エ 平成19年度
 ・動物看護師の公的認定(北海道地区)
 ・動物看護士の国家資格認定制度の早期創設(中部地区)
 ・適正な動物医療提供体制の整備に関する動物看護師の国家認定制度の導入(近畿地区)
3 要請の経過
 ア 平成14年4月:診療補助業等の動物医療における位置づけの明確化等の対策検討専門官の設置(農林水産省生産局畜産部長)
 イ 平成15年5月:動物医療補助者の養成対策等の小動物医療対策を所掌する専門部署の設置(農林水産省生産局畜産部長)
 ウ 平成16年9月:動物医療補助者の健全育成と補助者制度の創設(獣医師問題議員連盟会長)
 エ 平成17年2月:動物医療補助業に対する資格制度の創設を含む法規制とその健全育成(農林水産省消費・安全局長)
 オ 平成17年12月:動物医療補助者の健全育成と動物看護士国家資格制度の創設(獣医師問題議員連盟会長)
 カ 平成19年8月:動物医療補助専門職等のパラメディカル専門職についての資格(免許)制度導入の検討(農林水産省消費・安全局長)
 キ 平成19年8月:動物診療補助専門職資格の制度化の推進(獣医師問題議員連盟会長)
 ク 平成20年6月:動物診療におけるチーム医療体制の整備―動物診療に係るパラメディカル専門職資格制度の創設と動物看護技術の高位平準化・職域環境の整備(獣医師問題議員連盟会長)


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