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会長挨拶

新年のご挨拶

社団法人 日本獣医師会
会 長 山 根 義 久


 新年明けましておめでとうございます.会員の皆様におかれましては,御家族お揃いで希望ある新しい年をお迎えのことと心からお慶び申し上げます.
 昨年も引き続き激動の一年であったと思います.政治も行政も経済界も混乱の極みであったといっても過言ではない程でありました.特に,我々獣医師と大きく関係する食の安全・安心の件につきましては,一昨年より続いている各企業による偽装・捏造等は相変わらず枚挙にいとまがない程といった状況でありました.特に,汚染米の問題は大きく食に対する国民の信頼を裏切るどころか多方面に経済的損失をもたらしました.それに加えて昨年もマスメディアを賑わす悲惨な事件が連続して発生しております.一方,米国に端を発したサブプライム問題に続発しての,大手投資銀行の倒産は日本経済に多大な影響を及ぼしました.その原因は,解明されてきてはいますが,国内外を問わず拝金主義のもと,いわゆる“他人の褌で相撲をとる”族が激増しているからともいわれています.その結果,汗を流して生産に従事する人が減少し,もともと資源自給率の低い我が国では,物価の値上げの波をもろに受けたといえます.そのような背景をよく考えてみますと農産物の生産(特に畜産物)をはじめ,食の安全・安心さらには地球温暖化をはじめとした環境問題,青少年等の情操教育等に大きく関与している我々獣医師は責任ある立場にあるといえます.
 ご多分にもれず獣医界も問題山積であります.このような厳しい社会情勢でありますから,しばらく様子をみようとか静観するというわけにはいきません.日本獣医師会におきましては問題解決のために,昨年の年頭の挨拶で述べたように,過去1年間,主に5つの面より活動を展開してまいりました.その概要を述べてみますと,

1 国民(納税者)への対応と理解
 昨年も一昨年同様に,日本獣医師会主催で10月4日駒沢公園においてWVAの“The world veterinary Day”の一環として,“2008動物感謝デー in Japan”を開催したところ,一昨年を大きく上回る賑わいでありました.地方獣医師会をはじめ,16の国公私立大学,多くの企業,団体,研究会等の特別協賛やブース協賛があり盛会裡に終了することができました.獣医界がどの様なことを為しているかを,少しは国民に理解していただいたと思っています.是非とも2009年も旧年に倍しての努力のもと,さらなる幅広い活動展開をと決意を新たにしているところです.

2 政治サイドへの説明と理解
 昨年の6月11日に「獣医師問題議員連盟総会」を自由民主党本部で開催して頂き,獣医学教育の整備充実や勤務獣医師の処遇改善等につき説明,かつ議論をしていただきました.
 お陰様で,国会議員の先生方には,さらに深く獣医界の現状と課題とを理解していただけたものと思います.本年も政治は恐らく流動的かつ不安定であると思いますが,しっかりと将来を見据えて政治との協調体制の確立をと思っている次第です.

3 行政サイドへの説明と理解
 一昨年の関係4省庁が集まっての懇談会に引き続き,昨年も8月6日に農林水産省,文部科学省をはじめ日本学術会議,日本獣医学会等の代表者参加のもと獣医学教育の充実のための議論をいたしました.その結果が,文部科学省が打ち出しました戦略的大学連携支援事業のスタートとなり,また昨年暮れに立ち上げました「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」に繋がったものと思っています.今後は大きく獣医系大学(特に国立系)の改革の進展が期待できると思います.

4 動物関連企業や団体等の理解と一致団結した行動
 日本獣医師会が何を為すにしても,経済界の協力なくして事を為すには大きな困難を伴います.
 獣医界,業界いずれの立場も目標は同一方向であり,そのためにも両者とも一致団結した行動展開が必要不可欠であります.お陰様ですでに現状では“動物感謝デー”をはじめ,各種委員会でも御理解と御協力,御支援をいただいているところであります.さらに,学会等でも企業向けのセミナーや協同参画による研究会等も立ち上がり,同一の目標に向かって実効ある活発な活動展開が行われるようになりました.

5 獣医師及び獣医師会サイドの意識改革
 現状よりさらに,少しでも良い方向に何かをしなければならないという意識は,個々の獣医師及び地方獣医師会さらに日本獣医師会も含め高揚しつつあると思います.社会よりこれ程までに獣医界に対し注目が集まった時代はなかったのではないかと思います時,当然の結果かと思います.
 特に法人改革一つとりましてもこれからが正念場であり相当な努力と覚悟が要求されるものと思います.やはり何といいましても,獣医学を通して社会貢献を目指すならば,まず我々獣医師自らが襟を正し精進努力,切磋琢磨することが必要不可欠であると思います.
 本年も昨年よりの引き継ぎ事項や,新しく取り組まなければならない事項が山積しています.
 まず,何といいましても昨年暮れよりスタートした公益法人制度改革は,本腰を入れて取り組まなければならないと思います.5年間という特例社団法人としての移行期間があるといいましても,あっという間であります.ゆっくりとかまえている余裕はありません.昨年の12月に日本獣医師会創立60周年記念式典を開催した折りでもあり,この機会を捉え社会に目を向けたより良い社会貢献のために,まずは会員挙って公益社団法人を目指し組織及び事業環境の点検・整備に努めるべきと思います.
 次に動物看護職の全国組織の立ち上げであります.本年の盛岡での年次大会でスタートする予定でありますが,これもこれからが真の意味での山場であると捉え,日本獣医師会としてもサポート役に徹し,努力を惜しまないつもりであります.
 さらに,法人改革を一つのチャンスと捉え,目的を一つにする幾つかの団体等と協議し,より効率よく社会貢献のできる日本獣医師会としての脱皮を計らねばと新年早々気を引き締めているところです.
 会長就任時には“I can do”という気持ちでいましたが,これからはアメリカの次期大統領のオバマ氏が言っているように“We can do”という気持で皆で考え行動し“Change”いわゆる変革しなければと思っています.
 どうかこの一年が皆様の御理解と御支援により社会貢献ができますことを祈念し新年のご挨拶といたします.