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会議報告

平成20年度第2回理事会の開催

 平成20年度第2回理事会が,平成20年6月26日,明治記念館 2階「丹頂の間」にて,本会理事及び監事出席のもと開催された.
 本会議では,報告事項として,[1]「業務概況等の件」,[2]「獣医療広告ガイドライン等の制定の件」,[3]「獣医師及び動物医療政策に関する要請の件(特に獣医師の処遇問題について)」,[4]「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律の件」が報告され,次に議決事項として,「賛助会員入会の件」について異議なく可決承認された後,協議事項として,「第65回通常総会対応に関する件」他について協議が行われ,了承された(総会の議事概要は下記のとおり).


平成20年度第2回理事会の議事概要
I 日 時:
平成20年6月26日(木)10:45〜12:00
II 場 所:
明治記念館 2階「丹頂の間」
III 出席者:
会   長: 山根義久
副 会 長: 藏内勇夫,中川秀樹
専務理事: 大森伸男
地区理事: 波岸裕光(北海道)
坂本禮三(東 北)
橋三男(関 東)
手塚泰文(東 京)
谷 達雄(近 畿)
唐木茂樹(中 国)
岡本和夫(四 国)
麻生 哲(九 州)
職域理事: 近藤信雄(開業(産業動物))
細井戸大成(開業(小動物))
横尾 彰(家畜共済)
戸谷孝冶(畜産・家畜衛生)
森田邦雄(公衆衛生)
監   事: 玉井公宏,桑島 功,金田義宏
欠   席: 酒井健夫(学術・教育・研究)
 
IV 議 事:
【報告事項】
1 業務概況等の件
2 獣医療広告ガイドライン等の制定の件
3 獣医師及び動物医療政策に関する要請の件(特に獣医師の処遇問題について)
4 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律の件
【議決事項】
賛助会員入会の件
【協議事項】
第65回通常総会対応に関する件
V 会議概要:
【副会長挨拶】
 冒頭,藏内副会長から,山根会長が交通機関の遅滞により,遅刻されるため,到着するまでの間,代理として議事進行を務めたい旨説明された後,次の挨拶がなされた.
 (1)今月14日に発生した岩手・宮城内陸地震での被災者及び両県の獣医師会関係者にお見舞いを申し上げる.被災動物救護については,本会及び日本動物保護管理協会が参画している緊急災害時動物救援本部を通じて対応している.
 (2)酒井理事におかれては,このたび日本大学の総長に就任されることとなった.今後,獣医師の地位向上の推進等に追い風となることが期待される.
 (3)午後からの総会においては,円滑なる会議進行に尽力いただきたい.
【議長就任・議事録署名人の指名】
 続いて,藏内副会長が議長に就任し,唐木,戸谷両理事を議事録署名人に指名して会議が次のとおり行われた.
【報告事項】
 1 業務概況等の件(職域別部会の運営状況を含む.)
 大森専務理事から,前回理事会以降(平成20年5月21日以降平成19年6月20日まで)の業務概況について報告が行われた.

 2 獣医療広告ガイドライン等の制定の件
 大森専務理事から,獣医療広告規制については,これまで本会でも長きにわたり改善を求めてきたが,平成17年から農林水産省に設置された「小動物獣医療に関する検討会」で公的に検討がなされ,昨年,獣医事議会免許部会の諮問に対する答申が提出された.これを踏まえ,本年1月に「獣医療施行規則の一部を改正する省令(広告制限の特例に関する事項の追加等)」が公布され,このたび8月の施行に際し,ガイドラインが制定された.昨年,本会でも小動物臨床部会での議論を経て,同省あて獣医療の秩序の維持のため,広告制限における都道府県当局での実効ある措置の導入について要請するとともに,獣医事審議会免許部会の委員である,山根会長,中川副会長,近藤理事,酒井理事には大変尽力いただいた.内容としては,長年要請してきた,獣医師会会員である旨の表示が容認されたことで,公益認定の取組みの中で,構成獣医師が会員意識を深め,獣医師会の結束強化が期待される一方,規制緩和だけでなく,比較広告,誇大広告,価格併記が禁止されることとなり,ガイドラインに基づく都道府県当局の実効ある指導,取締りにより,獣医療の質が確保されることとなる.なお,一昨日,農林水産省では,都道府県担当者を招集してガイドラインの説明会を実施し,都道府県に対し獣医師会と緊密に連携して,今後の広告規制のあり方を協議するよう指示されたので,地方獣医師会でも積極的に協議に参画いただきたい旨説明された.

 3 獣医師及び動物医療政策に関する要請の件(特に獣医師の処遇問題について)
 (1)大森専務理事から,6月11日,獣医師の処遇問題を議題として,獣医師問題議員連盟総会が開催され,本会も日本獣医師政治連盟の立場で出席し,要請を行った.まず本問題の現状と課題として,産業動物診療獣医師への就業者の減少と公務員獣医師の採用困難な要因としては,職域就業の処遇問題の存在に留意する必要があり,獣医師の質を確保しつつ,不足職域への人材誘導を促進するためには,国家資格を有する高度専門職業人としての処遇の改善を図る必要があること,また,対応の方向として,公務員獣医師の処遇対策(獣医師職員配置にかかる地方財政措置の拡充,自治体における公務員獣医師の処遇の確保),産業動物診療獣医師の処遇対策(雇用獣医師手当(政府予算単価)の引き上げ),家畜共済制度の運営改善(産業動物開業獣医師の活動基盤となる共済制度の改善)の必要がある旨要請した.さらに総会では,出席議員が熱心に意見交換された後,谷津議員連盟会長から,関係省庁を始め,財政当局,全国知事会に対する申し入れも視野に入れ対応したい旨発言された.本総会の詳細については,「日本獣医師政治連盟だより」で紹介したい.なお,鹿児島県では,産業動物獣医師,公務員獣医師の不足問題について,県知事,県議会に働きかけ,21年4月から初任給調整手当の新設等,改善施策が実施される旨説明された.
 (2)質疑応答として,[1]データによると獣医事に従事しない獣医師は全体の12%を占めているが,これらの獣医師が若い人に偏っているようなら,獣医師の処遇に問題があると推測できるし,一方で年齢に関係ないようであれば,就業促進のための研修等を推進する必要がある.[2]全国家畜畜産物衛生指導協会では,家庭に入った主婦等を対象とした産業動物臨床獣医師への復職を支援する事業を実施しており,産業動物臨床従事希望者10〜20名を募集し研修を実施する予定である.[3]医師は,職域偏在の問題を棚上げして学生の増員する方向で進んでいるが,我々は公衆衛生公務員獣医師の偏在も含め,大学教育のあり方から早急に検討する必要がある等の意見があり,これに対して,山根会長から,獣医事に従事していない者も含め,まず偏在の原因を見極める必要があり,さらに復職希望者の情報収集及びOB獣医師の活用等の観点から人材バンクの設立を検討する必要がある.本総会では,厚生労働省の担当課長から,すべての保健所に従事する獣医師を食肉衛生検査所へ配置しても,まだ人材が不足している旨報告され,出席された国会議員からは,現在,子供が獣医学系大学に在籍しているが将来に不安を抱いている,高校3年生の子供が獣医師を目指して勉強しているが,現状では進路変更を考えざるを得ない旨発言がなされた.今後とも,我々は議員連盟の理解を得ながら,適正な獣医師の養成を含め,本問題に取組む必要がある旨説明された.

 4 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律の件
 大森専務理事から,昨年,アメリカでメラミンが混入した中国産小麦グルテンを用いたペットフードによる犬猫に重篤な健康障害が発生,一部日本でも当該製品が輸入されていたことを踏まえ,政府ではペットフードの規制を検討してきたが,このたび農林水産省と環境省の共管する法律として「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」が制定された.本法により,国が製造方法の基準,成分の規格を設定し,この基準・規格に合わないもの,有害な物質を含む愛がん用動物飼料については,製造等の禁止,廃棄等の命令の措置が講じられることとなった.なお,法令上,獣医師の役割は明記されていないが,参議院環境委員会における本法の附帯決議には,飼料に起因する健康障害の発生を想定し,動物病院や都道府県等の動物愛護関係機関との連携を密にし,安全性の情報の収集に努めるべき旨が記されており,小動物の保健衛生の向上を任務とする小動物診療獣医師におかれては,本法の成立によって,その責務がより一層増すこととなった旨説明された.

【議決事項】
 賛助会員入会の件
 大森専務理事から,個人賛助会員1名について,入会の承認を求めた後,本議案は異議なく承認された.
【協議事項】
 1 第65回通常総会対応に関する件
 大森専務理事から,第65回通常総会における議案審議の運営及び表決権行使者と傍聴者の席次,「修正動議」・「緊急動議」の取扱い等について説明が行われた後了承された.

 2 そ の 他
 九州地区獣医師会連合会では,新型インフルエンザにおけるプレパンデミックワクチンの事前接種については,人と動物の共通感染症の最前線に立つ獣医師が接種対象者となっていないので,対象となるよう日本獣医師会を通じて関係省庁へ要請してもらいたい旨本会へ要請したことが報告され,これに対して,大森専務理事から,厚生労働省では新型インフルエンザ対策行動計画の改定に基づき,「全国の医療従事者及び国における社会機能維持に必要な者等を対象」に,緊急的な措置として,発生状況に応じて製造,備蓄したプレパンデミックワクチンを接種することとされた.これはあくまで新型インフルエンザのヒト・ヒト感染を念頭に事前の措置として策定されたものであることを前提に論議することが必要と考える.インドネシアで発生しているH5N1型は,人に感染している旨報道されているが,海外発生地からの帰国者を検疫する担当官,感染症法に基づき患者の強制入院等に携わる保健所の職員や輸送関係者等,防疫等の最前線に立つ,国,地方公共団体の担当者等に対する安全確保のため,事前にできる限りの予防対策を講じておくという観点で,新型株に効力があるのか不明であるが,プレパンデミックワクチン接種が明記された.なお,本計画に獣医師の記載はないが,医師も同様に記載はない.目的はハイリスク業務従事対象者に対するヒト・ヒト感染の防止にある.検疫業務等に就業されている獣医師等は当然社会機能維持者として接種対象である旨理解いただきたい.また,鳥から人への感染の予防措置等については,公衆衛生部会の関係者と厚生労働省担当官で,現場の最前線で対応する獣医師に対する施策が十分であるか否か,行動計画の中での位置づけ等も含め,意見交換をした上で対応を考えていきたい旨説明された.