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紹 介

第1回野口英世アフリカ賞受賞者の決定


 野口英世アフリカ賞は,平成18年5月の小泉純一郎総理大臣(当時)のアフリカ訪問及び野口英世博士没後80年を記念して創設され,アフリカでの感染症等の疾病対策のため,医学研究・医療活動の2部門を対象に顕著な功績を挙げ,アフリカに住む人々の保健と福祉の向上に貢献した方々に授与されるものである.
 本会も,本賞の趣旨に賛同し,地方獣医師会からのご支援と協力を得て,募金に積極的に参加してきたところであるが,3月26日,第1回の受賞者として,医学研究部門は,勇敢かつ独創的なマラリア研究を行ったブライアン・グリーンウッド博士に,また,医療活動部門は,東アフリカの村々において女性や子どもに対し基礎医療サービスと保健の権利をもたらし,何百万人ものアフリカと世界の人々に希望を与えたミリアム・ウェレ博士に決定した.
 グリーンウッド博士(1938年英国生まれ.1968年,英ケンブリッジ大学医学博士.現在,英ロンドン大学衛生熱帯医学校教授)は,英国医学研究評議会の在ガンビア研究所所長を15年間務める等,30年以上にわたりアフリカの現場に密着した研究活動を続け,アフリカ大陸で年間100万人の命を奪うマラリアの免疫学的側面,病原体の側面及び疫学的側面の解明に貢献する他,髄膜炎や肺炎等,アフリカにおける乳幼児死亡の主要な原因であるその他の感染症の解明にも取組んだ.同博士の基礎研究及び応用的臨床研究は,簡単で質の高い手法,新薬やワクチンの現場試行という形により,アフリカのみならず,国際レベルにおける一連の重要な公衆衛生政策の科学的基礎を提供した.
 ミリアム・ウェレ博士(1940年ケニア生まれ.1981年,米ジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生学博士.ウジマ財団共同創設者・保健問題専門家)は,40年間にわたり地域レベルでの医療サービス提供の実践面に焦点を当て,公衆トイレの設置,乳幼児の予防接種の促進の他,HIV/AIDS感染者への恥辱や差別に対する献身的な擁護とともに,ケニア国家エイズ対策委員会委員長として本病対応指針を取りまとめ,感染率の低下に貢献した.さらに,アフリカ医療研財団(AMREF,アフリカ最大の保健NGO)の理事長として農村部の地域社会への医療サービスの拡大推進,ウジマ財団(ケニアの慈善団体,「ウジマ」とは,スワヒリ語で良質な生活を意味する)の共同創設者及び総裁として自身の医学の知見,知識を活用し若年層の衛生面等での生活改善推進に貢献している.
 なお,本賞の授賞式及び記念晩餐会は,横浜で開催された第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)の初日である5月28日,福田総理大臣の主催により同会議に出席されたアフリカ各国元首をはじめ,賓客等の臨席のもと(山根会長夫妻も来賓として出席)開催され,総理から受賞者へ賞状,賞牌及び賞金(1部門1億円)が授与された.また,翌29日には東京・国際連合大学ウ・タント国際会議場において,翌々日の30日には野口英世の生誕の地,福島・会津大学講堂において,多数の参加者のもと受賞者による記念講演が行われた.
 今後,本賞が野口英世博士の意思を継ぎ,アフリカに住む人々の保健と福祉の向上に貢献した者の業績を讃え,世界的に発表することにより,医学研究・医療活動のさらなる推進に寄与されることを期待したい.