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2 協 議 事 項
 大学獣医学部新設要望対応等の件
 (1)大森会計責任者から,大要次のとおり説明が行われた.
  ア 今治市と愛媛県から内閣構造改革特区推進本部に対し,今治新都市開発整備事業において整備した用地に学校法人加計学園が獣医学部を設置し,大学を核とする企業誘致により地域再生を図るとともに,四国地域における獣医師の需給緩和に寄与するためとし,「特区」申請がなされた.
  イ 日本獣医師会及び政連は,今回の「特区」申請に対し,獣医学教育改善に水を差すとともに,獣医師の粗製乱造を招くばかりか,何ら獣医師需給対策に裨益するところはないという理由から反対し,関係機関等への働きかけを行っている.
 (2)上記の説明に対し,大要次のような質疑・意見等があった.
  ア 広島県獣医師政治連盟では,12月の政連からの要請文書を踏まえて,地元議員に対し陳情を行った.国会の場においても何度か狂犬病,BSE等の問題で,獣医師について議論され評価・期待されたが,現実には獣医師に対する待遇が一向に良くならない現状が続いている.特区は政策の上で特別扱いすることであり,政連活動にどう反映させることができるか.我々も議員等に選挙時だけ協力するのでなく,普段から協力する姿勢が必要である.また,影響力のある議員の協力を得るために,地方の活動を活発化して底辺の基盤をしっかりすることが大事である.政治力を発揮するには,各地方政連が本気になって地元国会議員の対応を行うことから始めなければこの問題の解決は難しいのではないか.今後は,地方の獣医師の中から議員を送り出すような政治活動をしなければ,こういった問題が起こったときにスムーズにことが運ばない.地方獣医師会の活動が重要であることを念頭に,中国地区では獣医師の政治力を結集させようということで一昨年から具体的に活動を活発化していることを報告しておく.
  イ 山根委員長から,何か問題が起こったとき,必ず行政から地方はどうなっているか,地方の声は出てこないということを言われる.今のご意見のように,地方がしっかりと政治活動していただかないことにはどうにもならない.
  ウ 「新しい大学を作ることに対して,日獣の考えは理解できるが,学生定員が1千人でいいのか疑問を感じる.産業動物診療,公務員が少ないということであるが,その偏りをどうしたらよいか考えたときにはっきり答えが出ない.処遇をよくすればいいが,果たしてそれが可能であるのか.そう考えると獣医師の数がもっと多くてもいいのではないか.数を増やすと獣医師の質が落ちるとのことであるが,国家試験のハードルを高くすればいい.」との意見に対し,山根委員長から,「色々な見方,意見があるのはもっともであるが,国家試験のレベルを上げることで優秀なスタッフが育つかどうかということの前に,それ以前の大学教育をしっかりしなければならない.国公立大学では54名の教員体制を維持することになっているが,ある地方大学では,今年度から20人を切る大学も出てきた.学生として同じ月謝を払いながら違う環境で教育を受け,社会に出てやっていけるのか.様々な角度から,我々は真剣に検討しなければならない.待遇改善がなかなか進まないので偏在が起こっている,ということは,誰もが認める大きな要因であるが,獣医師を採用して獣医師のポストを,給料を上げろというが,果たしてそれ相当の能力が備わっているのかというと疑問である.我々が獣医師として本当に仲間,後輩を育成しているかどうか,たとえ政治力を使ってポストを上げたとしても能力が伴わなければ未来に約束されたポストは続くわけではない.」旨が回答された.
  エ 香川県政治連盟は,日獣政連と同じ考えの下,年明けに知事,議会長に要請を行った.6年生教育になって30年が経過したにもかかわらず,医者と獣医師の給料を比較しても,手当てを含めると半分にも満たないのが現状である.獣医師が特区の大学で学び,その中で就職するなら良いが,外にでてしまうのであれば意味がない.また,地元では特区申請時は評判になったが,現在はあまり騒がれなくなった.現時点では,特区申請は馴染まないのではないか.
  オ 長年かけてやっと国際的な獣医学教育ができるような基準を作って,実際にこの基準を生かすには政治力しかないということであったが,まず地方政連にこの基準についてしっかり認識してもらうことが大切である.たとえ特区を申請したからといって適合した数の教員がいるわけでもなく,それこそ程度の低い教員によって学生を教育しても意味がない.また教員を養成できるかといっても現状では無理である.したがって,現存する大学を統合して充実した教育を行った方がいいのではないかという説も出てきている.そんな現況で特区を申請しても根本的な問題が解決しないかぎり,特に専門的医療が進歩している現状では無理である.地方でも知事等に直接面会し,獣医界の状況を理解いただくことが大切ではないか.
  カ 「本件については,国レベルの問題であり,地元は手伝いをする程度で積極的に動いても仕方ない」との意見に対し,山根委員長から「地元が動いたという実績が大切である.必ず省庁から地元はどうなのかということを聞かれる.地元が動くことは決して無駄ではない.」旨が回答された.
 (3)本協議事項は委員長・副委員長・幹事長によって下記のとおり取りまとめられた.
大学獣医学部新設要望については,条件がインターナショナルの立場に立ち,大学基準協会が示した60名以内の学生定員の場合には72名以上の教員を要し,その内18名が教授という条件等々をクリアするなら反対する理由はない.しかし,現在の設置基準は獣医学教育改善の立場で全く機能していないに等しい.基準のハードルを更に上げるよう求めたい.
【閉会挨拶】
閉会にあたり,山根委員長から大要次の挨拶があった.
  (1)政連が今後どういう方向に進むべきかを模索してきたが,いかんともしがたいことは,獣医師会には許認可権がないということである.医師会,歯科医師会,薬剤師会も同じであるが,彼らには潤沢な資金という大きな武器がある.利害が一致した職能団体としての動きは素早い.一方,獣医師会は,資金もないが権利も要求しないおとなしい団体と感じている.
  (2)許認可権がない我々がどう国民を味方につけるかは,一つに獣医学教育の充実が必要であるという納税者である国民の理解を得なければならない.そのための最初の行動が,動物感謝デーの開催であった.今年も数万人規模で開催する計画があるが,全国55の獣医師会が一つずつイベントを計画してほしい.まず自分達の意識改革をする必要がある.
  (3)次に,政治家の理解を得ないことには何もできないということである.昨年度,獣医師問題議員連盟(以下「議連」という.)総会を連盟の経費において2回開催していただいた.議連総会において先生方に意見を聴いていただくことができた.
  (4)次は,行政の理解である.要請書を持参しても,要請書が積んであっても意味がない.関係4省庁一緒に議論ができる場を作りたいということから,昨年ようやく合同での会議を開催できた.論点をさらに絞ったうえで,定期的に会議を開いていきたい.
 (5)次に,業界の協力なくして改革はできないということである.業界サイドから我々にいろいろな意見を出してくるが,ノーベル賞一人出すよりも,業界から一致団結して一人の政治家を出す方が,社会,さらには業界の発展のために役立つといった意見もある.
 (6)次に大事なことは獣医師,獣医師会,獣医系大学の教員等の意識改革が一番重要であるが,一番不足している点でもある.地方分権の時代がやってきたが,地方の獣医師会がしっかり中央とパイプをつないでおかないと何も起こらないという時代がくるのではないか.力を入れていただいている獣医師会もあるが,是非とも理解いただきたい.

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