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会議報告

平成18年度全国獣医師会会長会議の議事概要

I 日 時:
平成18年3月27日(火)10:30〜12:45

II 場 所:
ホテルフロラシオン青山「富士」

III 出席者:
【地方獣医師会】
55地方獣医師会長ほか
【日本獣医師会】
会  長:山根義久
副会長:藏内勇夫,中川秀樹
専務理事:大森伸男
地区理事:田村誠朗(北海道)
       坂本禮三(東 北)
       高橋三男(関 東)
       手塚泰文(東 京)
       杉山俊一(中 部)
       小島秀俊(近 畿)
       宮地忠義(四 国)
       麻生 哲(九 州)
職域理事:酒井健夫(学術・教育・研究)
       近藤信雄(開業(産業動物))
       細井戸大成(開業(小動物))
       戸谷孝治(畜産・家畜衛生)
       森田邦雄(公衆衛生)
監  事:桑島 功,玉井公宏
       (欠席:横尾 彰,高野貞男)

IV 議 事:
1 平成18年度業務概況等の件(職域別部会の運営状況を含む)
2 平成18年度関係省庁等要請活動の件
3 狂犬病予防対策の整備・充実の件
4 平成18年度地区獣医師大会決議要望事項等に対する対応の件
5 平成19年度以降の日本獣医師会学会年次大会開催計画の件
6 平成18年度地区獣医師会連合会会長会議協議に基づく対応の件
(1)公益法人制度改革に向けて
(2)今後における学会の組織運営及び学術活動の推進のあり方
(3)今後における狂犬病予防注射事業のあり方公益法人制度改革の件

V 会議概要:
【挨  拶】
 山根会長から,大要次のとおりの挨拶がなされた.
(1)三学会年次大会(さいたま)については,地元埼玉県獣医師会の高橋会長をはじめ,関係各位にご尽力いただき,多数の参加者を得,盛会裏に終了したことをお礼申し上げる.
(2)狂犬病予防対策については,中国での発生状況を危惧し,昨年8月から厚生労働省あて対応推進を申し入れていたが進展せず,11月の海外旅行帰国者2名の感染,死亡を受け,谷津獣医師問題議員連盟会長に尽力により,12月に同会総会を開催いただき,その場で再度要請し,3月にようやく健康局長から通知が出され,自治体と獣医師会も連携強化が明示された.
(3)3月,大学の獣医学科学生の定員増加を文部科学省が検討している旨新聞報道がなされた.文部科学省は否定したが,水面下では,政治力で獣学部の新設についても併せて検討されている疑いがある.現状のように教育体制が不十分な状況において,何ら予算の裏付けもなく定員を増加させれば教育現場は混乱する.劣悪な職場環境,待遇等により,家畜衛生,公衆衛生分野等の公務員獣医師医師が不足しているが,これは職域における偏在化の問題である.一方,獣医師免許を有しながら,獣医事に従事していない多数の獣医師が存在することも,獣医師の待遇問題が根源にあると思われる.単に一部職域の獣医師が不足しているから,安易に人数を増やすということでなく,社会にもこのような偏在化の状況を理解してもらうとともに,日本獣医師政治連盟をさらに強固にし,獣医師問題議員連盟にも支援いただくよう政治的な取組みも必要である.
(4)公益法人化改革については,学会の改善,狂犬病予防注射事業依存体質からの脱却等を行い,本会と地方獣医師会が一体となって公益認定法人化に努める必要がある.
(5)動物診療補助専門職においては,小動物臨床部会個別委員会で協議しているが,動物看護士の全国団体の立上げに協力し,動物看護士が社会的な認知を得ることにより,今後の法的な整備についても検討していきたい.
(6)現状,政治家,関係官庁においても,獣医師を取り巻く状況が十分に理解されていない.我々が誠実に職務を遂行し,品格のある獣医師,獣医師会として社会から認められるよう鋭意努力すべきである.

【座長就任】
 山根会長から脇田英一・京都府獣医師会会長を座長に指名して,以下のとおり議事が進められた.

【議  事】
1 平成18年度業務概況等の件(職域別部会の運営状況を含む)
(1)大森専務理事から,前回理事会以降(平成18年4月1日から平成19年3月20日まで)の業務概況について報告が行われた.
(2)質疑応答として,[1]地方獣医師会では,理事,部会長等の人事は,任期2年を過ぎて留任しないところもあり,日本獣医師会においても,部会委員会委員の人事は,全国の津々浦々から獣医師が参画できるよう対応いただきたい.[2]職域別部会について,実際に何が行われたか明確でなく,会員への説明に窮している.特に産業動物を取り巻く現状に憂慮しており,日本獣医師会の産業動物臨床部会,家畜衛生部会においても,地方から中央へ,また中央から地方へ意見が届くような運営方法をもって,問題解決に臨まれるよう対応を望む.[3]獣医師倫理対策が重要であるにもかかわらず,本年度,獣医師道委員会が開催されていない旨の質疑・要望があり,これに対して,大森専務理事から,[1]については,部会の委員会人事は,部会委員会運営規程に基づき,各連合会から推薦を受けた候補者と学術経験者の中から会長と部会長が本人の同意を受け,各部会の検討テーマに適当な者を,適材適所の考え方により選任しているが,任期は2年とし改選手続きを2年ごとに行っている.[2]については,部会の運営については,毎理事会において部会長である職域担当理事が報告するとともに,各委員会の議事の内容を議事概要として逐次日本獣医師会ホームページに掲載することにより各会員及び構成獣医師に情報提供(公開)を行っている.なお,本年度は各部会の委員会の検討テーマの取りまとめの年度であり,現在,最終整理を行っているが,取りまとまり次第,理事会において報告,対応を協議の上,制度的課題については,関係省庁に要請するとともに,地方獣医師会にも検討結果等を通知することとしている.[3]については,獣医師道委員会は,一昨年の総会において各地区推薦により新たに委員が選任された.獣医師倫理対策については,獣医師道委員会の議を経て策定した獣医師倫理関係規程集を,委員の指導の下,地方獣医師会を通じて構成獣医師の啓発に活用いただくほか,大学における倫理教育の重要性から,各大学へ必要部数を送付し,倫理教育課程において活用していただくこととした旨回答された.

2 平成18年度関係省庁等要請活動の件
 大森専務理事から,[1]5月12日,環境省中央審議会動物愛護部会あて,「動物愛護管理法の一部を改正する法律施行等のあり方(基本指針についての意見・要望)」について(本誌第59巻第7号425頁参照),[2]5月30日,自由民主党環境部会動物愛護に関する小委員会あて,「改正動物愛護管理法施行に向けた取り組み」について,[3]8月21日及び11月13日,農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課課長あて,「獣医師法第17条の疑義照会及び獣医事監視・取締りの徹底」について(本誌第60巻第2号99頁参照),[4]10月16日,厚生労働省健康局長あて,「狂犬病対策の充実・強化」について(本誌第59巻第11号716頁参照),各々要請活動を実施した旨報告された.

3 狂犬病予防対策の整備・充実の件
 大森専務理事から,狂犬病予防対策の整備・充実について,次のとおり説明が行われた.
  《本誌第60巻第3号251頁(「狂犬病予防対策の整備・充実について」)参照》

4 平成18年度地区獣医師大会決議要望事項等に対する対応の件
(1)大森専務理事から,平成18年度地区獣医師大会決議要望事項等に対する対応について,次のとおり説明が行われた.
  《本誌第60巻第4号236頁(平成18年度地区獣医師会連合会会長会議議事概要)参照》
(2)質疑応答として,[1]狂犬病対策に関する獣医療法違反者の告発についてはどのように考えているか.[2]狂犬病の発生した際,多量のワクチンが必要となるが,ワクチンの備蓄はどこが行うのか.[3]非会員の獣医師が,狂犬病予防接種等,営利目的に様々な地域で確信犯的に違法行為を行っており,獣医師会では,県と連携して獣医療法違反で告発しようとしたが,県警では法律が不備ということで受付けなかった.このような獣医師に対しても本会の学会へ参加登録を認めることは問題がある.[4]倫理関係規程集にある産業動物医療の指針の中で,診療料金については,家畜共済の診療点数及び薬価基準表を基準とするような記載がされているが,これは自由診療の理念に反し,小動物医療との格差,待遇改善の問題にも影響すると考える.[5]人的事故による野生動物への被害等の問題もあり,地方においては,野生動物,自然環境対策等についても審議している.今後,倫理規範の中に自然環境対策についても言及すべきである旨質疑・要望があり,これに対して,大森専務理事から,[1]については,獣医師の法令違反の現場を押さえるのは,獣医師法,獣医療法の権限を有する都道府県の獣医職検査職員であり,4年前に農水省の衛生管理課長からの通知で,広告制限違反を含め法令の違反事例については獣医師会と十分連携をとり,都道府県担当部局が積極的に対応することとされた.[2]については,2001年に厚生労働省が策定した狂犬病対応ガイドラインにおいては,基本的には発生時のワクチン接種は,都道府県の狂犬病予防員が強制的に実施することが法的に位置づけられており,発生時の対応は都道府県の責務と考える.同ガイドラインにおいても緊急時のワクチンの調達は,中央連絡会議(国)の役割とされている.一方,獣医師会では,従来から通常時の狂犬病予防対策を責務として取り組んできたが,このたびの局長通知で,ようやく自治体と獣医師会との連携強化が明示された.なお,狂犬病予防法第20条では,予防員から要請があった際は,獣医師は協力に応じるものとされており,緊急時には行政の指示に従い対応する責務がある.[3]については,非会員の獣医師会活動における取り扱いについては,今後,公益法人改革に向けて,どう対応していくかとの中で,検討していく必要があるが,一方,独禁法上の問題も視野に入れなければならない.非会員を学会への参加登録についての是非については,参加に対する対価をどう求めるかも含め,慎重に検討する必要がある.[4]については,指針は獣医師道委員会の議を経て策定されたが,産業動物医療における診療の主要な部分を家畜共済が対応している現状から,そのいわば代表例として家畜共済制度における料金体系が示されたものである.特に産業動物診療においては,とかく自由診療部分についても家畜共済の料金体系に収斂されがちとならざるを得ない立場にあることは十分理解できる.[5]については,野生動物については,小動物臨床部会の野生動物委員会で保護管理のあり方を含め広範に議論しているが,このような状況を踏まえ,今後,本会としても倫理規定のあり方の検討を考慮したい旨回答された.

5 平成19年度以降の日本獣医師会学会年次大会開催計画の件
 大森専務理事から,平成18年度日本獣医師会三学会年次大会(さいたま)について次のとおり説明が行われた後,平成19,20年度の開催計画が示され,平成19年度の委託開催を担当される香川県獣医師会湊会長から,決意表明及び参加協力を依頼する旨の挨拶がなされた.

6 平成18年度地区獣医師会連合会会長会議協議に基づく対応の件
(1)大森専務理事から,平成19年2月20日開催の平成18年度地区獣医師会連合会会長会議協議において課題とされた,[1]公益法人制度改革に向けて,[2]今後における学会の組織運営及び学術活動推進のあり方,[3]今後の狂犬病予防注射事業のあり方の3課題について,各課題ごとに現状と問題点,今後の対応の方向等について説明がなされ(内容は,本誌第60巻第2号96〜98頁(平成18年度第3回理事会の議事概要)及び本誌第60巻第4号234〜235頁(平成18年度地区連合獣医師会会長会議の会議概要)を参照),併せて連合会長会議において各地区より提出された意見が別紙のとおり紹介された.
(2)質疑応答として,獣医師会で,と畜検査の委託事業を行っているが,食品の安全・安心の名目で委託事業についても,今後,狂犬病予防事業と同様,対応方向等を示してほしい旨要望があり,大森専務理事から,公益法人制度改革の中での公益目的事業としての位置づけの実現について,課題ごとに問題点があれば,検討していく必要がある旨回答された.

 

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