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短 報

化膿性壊死性脳炎を伴ったパラポックスウイルス感染
ニホンカモシカの1症例

朴 天鎬1)  吉田英二1)  芝原友幸2)  小山田敏文1)†  吉川博康1)

1)北里大学獣医畜産学部(〒034-8628 十和田市東23番地35-1)
2)(株) 農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所(〒305-0856 つくば市観音台3-1-5)

(2006年7月3日受付・2006年8月14日受理)

要   約

 重度の化膿性壊死性脳炎を伴ったパラポックスウイルス感染ニホンカモシカに遭遇した.口部周辺,口腔粘膜および眼窩下洞腺に丘疹性結節がび漫性に認められたほか,左眼窩下洞腺,鼻腔および左脳のおおむね全域にかけて緑黄色化膿巣が観察された.組織学的に粘膜棘細胞の増殖,水腫性腫大および好酸性細胞質内封入体が多数認められた.封入体は抗パラポックスウイルス抗体陽性を示し,電子顕微鏡観察においてウイルス粒子が確認された.左眼窩下洞腺,鼻腔および左脳では,好中球,マクロファージおよびリンパ球浸潤を伴った化膿性病変が形成され,脳組織の一部からグラム陽性球桿菌が検出された.本症例では,パラポックスウイルスが先行して口部粘膜に感染し,その後,眼窩下洞腺からの二次的細菌感染が重度の化膿性脳炎を誘発したものと考えられた.
―キーワード:ニホンカモシカ,パラポックスウイルス,化膿性脳炎.

------------------------------日獣会誌 60,201〜204(2007)

 

† 連絡責任者: 小山田敏文(北里大学獣医畜産学部獣医学科獣医病理学教室)
〒034-8628 十和田市東23番町35-1
TEL 0176-23-4371 FAX 0176-23-8160 
E-mail : oyamd@vmas.kitasato-u.ac.jp