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会議報告

 

V 会議概要:
【開  会】
 大森専務理事から,開会時における出席会員数52会員,表決件数158で,定款の規定に基づく定足数を満たしており,本総会が成立する旨が報告され,開会された.
【会長挨拶】
 山根会長から大要次のとおり開会挨拶が行われた.
〈社団法人日本獣医師会 山根義久会長〉
 第63回の日本獣医師会通常総会を開催するにあたり,一言ご挨拶を申し上げます.
 本日,皆様におかれましてはご多忙の中,遠路より多数ご出席いただき,厚くお礼申し上げます.また,ご来賓として,自由民主党組織本部長,そして総合農政調査会長であり,獣医師問題議員連盟会長としてご指導を賜っております,衆議院議員の谷津義男先生,さらに,自由民主党副幹事長であり,獣医師問題議員連盟事務局長を務めていただいております,森 英介先生にご臨席いただいております.
 また,農林水産省はじめ,厚生労働省,環境省,さらに中央畜産会,日本獣医学会等の関係団体からも多数の方々にご臨席いただきまして,本総会が開催されることを大変に光栄に存じております.
 我々の新執行部は昨年の7月発足し,1年が経過したところですが,計画に沿った事業展開が行われたものと思っております.本日の議案の中でご報告させていただきますが,これもひとえに皆様方の弛まざるご支援とご協力の賜物だと深く感謝申し上げる次第です.
 昨年度は,初の試みである日本獣医学会と日本獣医師会の三学会の連携大会が,本年3月,つくば国際会議場において,秋篠宮殿下ご臨席のもと盛会に開催することができました.本大会においては,地元茨城県,茨城県獣医師会,さらに日生研等,多くの関係機関の方々に多大なご尽力を賜り,成功裏に終了することができましたことを,あらためてお礼を申し上げる次第です.
 さらに,五十嵐前会長の時代に発足した職域別部会制等についても,この1年間,活発に活動を展開していただき,すでに解決した課題もありますが,現在,審議中の課題も解決に向けた方向性が定まりつつあり,次年度には大きな成果を期待しているところです.
 この1年間,会長という立場で一生懸命勉強させていただきましたが,何分経験不足で,至らぬ面も多々ございます.本日の総会の審議結果を,次年度に向けた糧として,邁進する所存です.何卒引き続きのご指導,ご支援のほどよろしくお願い申し上げます.
 簡単ですが,開会にあたりまして挨拶といたします.
【来賓御挨拶(大要)】
 来賓から大要次のおとりの挨拶が行われた.
〈獣医師問題議員連盟会長 谷津義男衆議院議員〉
 紹介にあずかりました谷津義男でございます.山根会長からお話のあった,三学会年次大会において,秋篠宮殿下のご講演を拝聴した際,鳥インフルエンザ等,私どもが抱えている問題にご示唆をいただいたものと感じ,種々の対策を思い巡らせました.
 講演の後,私が秋篠宮殿下に,「ご専門がナマズから鳥に変わられたのですか」とお聞きすると,殿下は「今,鳥を一生懸命学んでいるのです」と仰せられました.本学会に秋篠宮殿下の素晴らしい講演を企画されたことに対し,獣医師会の方々の機を捕らえた絶妙な対応であると大変感心するとともに,心から感謝申し上げる次第です.
 鳥インフルエンザへの対応に関しては,皆様方に大変ご活躍をいただき,心から感謝を申し上げます.さらにBSEについては,アメリカとの牛肉輸入問題も,現在,輸入再開に向けた現地調査を行っており,この調査結果をさらに議論することとしており,特にリスク管理の問題については,以前より必ず獣医師会関係者の参画を進言していますが,皆様方の指導が必要不可欠であると思っているところです.
 一方,近年,産業動物に携わる若い獣医師が減少しているようですが,これからの畜産のあり方を考慮し,多くの産業動物獣医師の皆様から畜産の発展にご指導いただきたいと思っております.
 また,6月1日,一部改正された動物の愛護及び管理に関する法律が施行されました.これも皆様方に大変ご尽力いただいた経緯がありますが,今後とも,一層のご指導をいただきたいと心からお願いを申し上げます.
 最近,ペット動物が我々の生活の中に密接な関係となってきており,社会生活の中での疲れた我々を癒してくれる存在として,人とともに共生するような方向に進んでおり,皆様方の一層のご指導により,飼い主による適正飼育等による,真の共生の実現につながるものと思っております.
 さらに,私どもの地元群馬県で積極的に取り組んでいる学校飼育動物については,子供の情操教育に大変重要であり,以前から文部科学省に進言していましたが,ようやく具体的な対応が図られるようであり,今後とも,皆様方からご指導をお願いします.
 国会も今月18日に終了し,教育基本法改正案については,継続審議となりましたが,この中には動物との関わりの重要性が読み取れるような内容も含まれており,是非とも,法案を通す必要があると考えています.
 野生動物の問題についても,自然保護と経済活動との関係等,皆様方からご示唆を受けており,ご指導いただきたいと思います.
 私どもは,会長よりお示しいただく,改善すべき諸々の課題,法律や制度の問題点を解決すべく,獣医師問題議員連盟においても森事務局長と相談しながら対応するとともに,北村顧問にも,議員時代と同様にご相談しながら,皆様方の発展のために力を尽くしていきたいと思っております.
 私どもに対するご指導も心からお願いを申し上げまして,ご挨拶とさせていただきます.
〈獣医師問題議員連盟事務局長 森 英介衆議院議員〉
 ご紹介にあずかりました,獣医師問題議員連盟事務局長を務めております森 英介でございます.すでに私どもの谷津会長からご挨拶がございましたので,屋上屋を重ねるようなものでございますが,ご指名いただきましたので一言ご挨拶を申し上げたいと思います.
 山根会長をはじめ,獣医師会の皆様方には日頃よりお世話になっておりますことを厚くお礼を申し上げます.特に,私は千葉県の畜産協会会長なども務めておりまして,千葉県獣医師会の桑島会長には本当に日頃より親しくご指導いただいているところです.
 今,谷津先生のお話にもありましたように,北村直人先生におかれては,議員職を退き日本獣医師会の顧問に就任されましたが,これから獣医師の皆様方の抱えている様々な問題,例えば大学教育の整備充実や看護士のあり方等,是非とも獣医師会の皆様方の意見を集約していただいて,ボールを私どもに投げていただきたいと思います.北村顧問は,私どもの世界を一番理解していらっしゃるので,皆様方の問題を私どもにお示しいただき,それを咀嚼して,少しでも皆様方のお仕事の一助となるようお役に立ちたいと思っております.
 どうか今後とも,様々な問題について忌憚のないご指導,ご鞭撻を賜りますことをお願い申し上げますとともに,本日の獣医師会の総会が大変実りある総会になりますことをご祈念申し上げましてご挨拶といたします.ありがとうございました.
〈農林水産省消費・安全局動物衛生課 釘田博文課長〉
 私,農林水産省の消費安全局動物衛生課長を務めております釘田と申します.本日は中川消費安全局長が所用のために出席できませんので,局長からお預かりしております祝辞を代読させていただきます.
 「本日ここに,社団法人日本獣医師会第63回通常総会が盛大に開催されますことを,心からお喜び申し上げます.また,本年3月には秋篠宮殿下をお迎えした中で,日本獣医師会と日本獣医師学会の連携学術大会が成功裏に終えられましたことを,さらに今春の五十嵐前会長の旭日重光章の叙勲と慶事が重なりましたことも,心からお喜び申し上げます.
 なお,本日ご列席の皆様方におかれましては,日頃から適切な獣医療の提供を通じまして,動物の保健衛生,あるいは公衆衛生の向上,食の安全も安心の確保,さらには我が国の畜産業の発達と,さまざまな面で大変なご尽力,ご協力をいただいておりますことに,改めて御礼を申し上げます.
 私ども消費・安全局におきましては,昨年10月に当時の衛生管理課を,家畜衛生を担う動物衛生課と,薬事,飼料安全,水産安全,獣医事などを担う畜水産安全管理課の2課体制といたしまして体制強化を図ったところですが,今後とも皆様方のご協力を仰ぎながら,鋭意業務遂行に取り組んでまいる所存です.
 この1年を振り返ってみると,国内外での抗病原性鳥インフルエンザの発生,米国産牛肉の輸入問題など,家畜衛生を取り巻く環境は相変わらず厳しい状況が続いています.昨年茨城県を中心に発生しました弱毒タイプの抗病原性鳥インフルエンザについては,関係者の方々のご努力もあって防疫対応が一区切りつきましたが,今後とも発生原因の究明等に取り組んでいく所存です.しかしながら,本病の世界的な発生はまだ衰えを見せておらず,引き続き本病の対策に取り組んでいく必要があります.
 また,米国産輸入牛肉問題については,昨年12月に輸入を再開したものの,本年1月に輸入子牛肉で特定危険部位の混入が確認されました.その後の協議を通じて,現在米国側の対日輸出プログラムの遵守状況を確認するために,厚生労働省と農林水産省の専門家が米国の施設の現地調査を実施しているところですが,いずれにしても,今後とも消費者とのリスクコミュニケーションを十分に図りつつ,国民の食の安全,安心を確保できるよう,適切に対応してまいります.
 このような中で,産業動物にかかわる獣医師の皆様方におかれては,日頃より疾病の予防,早期通報,家畜の所有者に対する指導及び的確な情報提供にご尽力いただいております.特に,5月29日から導入されましたポジティブリスト制度においては,その円滑な推進と適切な運用に皆様方のご協力は欠かせません.引き続きこれらの施策の推進に,ご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げます.
 一方,小動物の獣医療分野においては,コンパニオンアニマルに対する社会の意識が高まりつつある中,高度,かつ良質な獣医療の提供が求められるようになっています.また,診療内容が高度化,複雑化している中,飼い主に対し診療内容を十分に説明することや,適切な保健衛生指導等を行うことが,獣医師が果たすべき重要な役割となっています.小動物臨床に携わる獣医師の方々におかれては,飼い主との信頼関係に基づく日常の診療業務等を通じ,小動物にかかわる正しい知識の普及と指導,保健衛生の向上に一層のご尽力を賜りますようお願い申し上げます.
 そして社団法人日本獣医師会が,獣医師会に対する社会的要請への的確な対応,動物飼育者との信頼関係を基本とした質の高い獣医療の提供,獣医学術の振興及び普及を通じ,引き続き指導的な役割を担って活躍されることを期待しています.
 結びに,社団法人日本獣医師会のますますのご発展と,本日ご出席の皆様方のご健勝を祈念しまして,私のご挨拶といたします.平成18年6月27日,農林水産省消費安全局長 中川 坦」.代読.
〈厚生労働省医薬食品局食品安全部 松本義幸部長〉
 皆様,こんにちは.ただいまご紹介いただきました,厚生労働省食品安全部長の松本義幸でございます.本日ここに,第63回社団法人日本獣医師会通常総会が盛大に開催されますことを,心からお喜び申し上げます.皆様方におかれては,日頃からと畜,食鳥検査の実施などによる食肉衛生対策の推進をはじめとして,食中毒対策,狂犬病予防をはじめとした動物由来感染症対策,残留動物用医薬品対策等,公衆衛生行政の推進に種々の立場から多大なご協力を賜り,厚く御礼を申し上げます.
 はじめに,食品の安全確保対策については,食品安全基本法の制定,食品衛生法等の改正等を踏まえて,監視指導体制に強化,企画基準の整備,リスクコミュニケーションの推進などを行ってきたところです.また,本年5月29日には,食品衛生法に基づく残留農薬等に関するポジティブリスト制度が施行されたところであり,引き続き食品の安全確保対策の着実な施行に努めています.
 米国産牛肉問題については,先ほど釘田課長の方からお話があったように,1年半にわたる日米協議の後,食品安全委員会において科学的な議論を尽くし,国民の皆様の意見も聴取した上でとりまとめられた方針を踏まえて,昨年12月に輸入再開を決定いたしました.
 しかしながら,本年1月20日,米国から脊柱付き子牛肉が到着したことから,米国において対日輸出プログラムが遵守されなかったことを重く受け,輸入手続を停止いたしました.その後,米国側から原因調査及び再発防止策が報告され,日米専門家会合や消費者等とのリスクコミュニケーション等を実施し,6月21日に輸入手続きの再開のための措置について,日米間で認識を共有したところです.
 今後については,現在実施している現地調査の結果を踏まえて,再開について判断をすることとしているところです.厚生労働省といたしましては,BSE対策,食肉,食鳥肉,鶏卵など,動物性食品に起因する腸管出血性大腸菌,サルモネラなどの食中毒防止を図るため,と畜場及び食鳥処理場のほか,農林水産省と連携を図りながら生産から消費までの各段階において,安全対策の向上に取り組んでいるところです.獣医師の皆様におかれましては,と畜検査及び食鳥検査をはじめとした公衆衛生行政に関係する様々な施策を通じ,食品の安全確保対策により一層のご理解,ご協力を賜りますようお願い申し上げます.
 狂犬病対策については,長年にわたり犬の登録及び狂犬病予防接種についてご協力をいただき,他の多くの国で狂犬病が発生している中で我が国での発生防止が図られていることは,ひとえに皆様方のご協力によるものと感謝申し上げる次第です.また,昨今,人の感染症対策における動物由来感染症対策の重要性が増していることに鑑み,昨年の9月1日からは動物の輸入届出制度が施行されて,水際対策が強化されたところですが,皆様方におかれましても獣医師の公衆衛生対策における責務規定,犬のエキノコックス等の届出義務等の遵守につきまして引き続きご協力を賜りますよう,お願い申し上げます.
 今後とも,食品の安全確保対策,動物由来感染症対策など種々の施策の充実に努めてまいる所存ですので,これら施策の推進にあたっては,日本獣医師会のご理解とご協力を引き続きよろしくお願い申し上げる次第です.
 最後になりましたが,今後の日本獣医師会のますますのご発展と,本日お集まりの皆様方のご健勝を祈念いたしまして,私の挨拶とさせていただきます.平成18年6月27日,厚生労働省食品安全部長部長 松本義幸.おめでとうございます.
〈環境省自然保護局 南川秀樹局長〉
 皆様,こんにちは.紹介いただきました環境省自然環境局長の南川でございます.本日ここに,日本獣医師会の総会が盛大に開催されますことを心からお祝い申し上げます.また,ご出席の皆様には,動物愛護管理,また野生生物の保護ということで,格別のご支援をいただいているところです.
 野生生物保護についてですが,地球規模での環境悪化が危惧される中で,我が国の豊かな生物多様性の保全を図る観点から,トキあるいはイリオモテヤマネコといった希少な野生生物の保護増殖が非常に重要な課題となっています.こうした重要な野生動物の保護増殖,あるいは傷ついた傷病鳥獣の救護という面で皆様に大変お世話になっているところです.
 また,犬・猫などのペットについては,現在,推定ですが日本で飼われている犬が1,300万頭,猫は1,200万頭です.これらはパートナーとして心豊かな生活を送る上で,欠くことのできない一員になってきています.動物の愛護及び管理に関する法律につきましては,昨年北村直人先生の大変なリーダーシップのもとで法律を変えていただきまして,6月から施行しています.この円滑な施行について,ぜひとも皆様方に引き続きご協力,ご助言を賜りたいと考えているところです.
 この21世紀の中で,人と動物の共生する社会づくりということは極めて重要な課題だと考えています.日本獣医師会がますますご発展され,人と動物の共存する社会の実現に向けて大きなバックボーンになっていただくことを期待するものです.
 最後に,本日本獣医師会の皆様方のますますのご発展,会員の方々のご健勝を祈念して挨拶といたします.本日は誠におめでとうございます.
〈社団法人中央畜産会 中瀬信三副会長〉
 ただいまご紹介を賜りました,社団法人中央畜産会副会長を務めております中瀬でございます.中央畜産会の小里貞利会長に代わり,また中央の畜産諸団体を代表いたしまして,一言お祝いの言葉を申し上げたいと思います.
 本日は,社団法人日本獣医師会第63回の通常総会がかくも盛大に開会されましたことを心からお祝い申し上げます.また,この総会にお招きいただきましたことを厚く御礼を申し上げる次第です.
 早速,この冒頭から私自身の団体のことを申し上げて恐縮ですが,さる6月16日に私どもの中央畜産会,第51回の通常総会を開催いたしました.今期は役員の任期満了に伴う役員改選が行われました.中央畜産会は歴代日本獣医師会の会長を常務理事としてお迎えしているという経緯があります.このたびも,五十嵐前会長ご退任ということに引き続きまして,満場一致で山根会長に本会の常務理事をお願いするということで,引き続きご指導いただくことになりました.どうぞよろしくお願い申し上げる次第でございます.
 また,五十嵐前会長におかれては,山中会長が亡くなり,中央畜産会の舵取りが大変難しい時期に,随時適切なご助言と励ましをいただき,何とかここまで来れたことを,深く感謝している次第です.ありがとうございました.中央畜産会は,ここにご列席の森先生にも理事としてご指導いただいておりますし,このたびの改選で,福岡県獣医師会の藏内会長と,熊本獣医師会の穴見会長を理事としてお迎えしました.このように中央畜産会の役員の中に獣医師の先生方にお入りいただき,私どもは大変心強く思っている次第です.
 さて,畜産をめぐる情勢については,先ほど来,谷津先生はじめご来賓の皆様にいろいろな面からご挨拶をいただきました.いずれの話題を取りましても,国民の畜産物の安全,安心に関する課題というものがキーワードとなっているのが,最近の傾向であるという感を深めています.O-157に始まり口蹄疫,BSE,抗病原性鳥インフルエンザ,それからまた最近5月にはポジティブリスト制度への移行といったことが続き,衛生管理に絡む問題が常に浮き彫りにされています.
 従来我が国は島国であり,防疫上は有利であるという説もありましたが,諸外国との物流や人の交流の増大を考えると,世界的規模での家畜の防疫体制の構築ということ,あるいは情報の交換ということの重要性はさらに増すであろうと思われます.
 畜産の現場から見ると,畜産の経営規模は一貫して拡大を続けてまいりました.現在は,例えば酪農ではメガファームなど大規模な酪農の出現が話題になりました.今はそのメガを上回るギガファームというような大きな経営が出てまいりました.さらに,そのまま酪農と肉用牛の肥育経営が一体となった,乳肉複合のメガ,ギガファームが誕生するというような状態になっていますし,他の畜種においても同様に集中的に家畜が飼われるという形態が一層進んでいる次第です.
 畜産経営というものは,合理的生産を求めた結果,個人経営であっても従来では考えられない規模になりつつあります.こうした大きな規模になればなるほど,悪性伝染病はもちろんですが,慢性の疾病であっても一度侵入を許せば膨大な被害をもたらすということになります.それも一つの卑近な例が,先ほど来お話にあります,茨城県を中心にした鳥インフルエンザであったかと思います.獣医師の皆様の献身的なご努力によりまして,幸いにも終息宣言にいま一歩というところまでまいりました.
 しかしながら,経営としてみますとうまく事業を再開したところばかりではなくて,こういう機会に廃業に追い込まれるという事例も耳にしたところです.また,消費者に与えた畜産物への漠然とした不安感というものを払拭するためにも,また多くのエネルギーが投入されなければならないだろうと考えます.このような種類のネガティブな循環を断つためには,獣医師の皆様のご活躍がこれからますます重要になると思われます.
 このほか,我が国の畜産は対外的にも国際的にも波にさらされており,WTO農業交渉はまさにヤマ場にさしかかり,近々また大きな動きがあろうかと予測されます.また国内的には,国の補助事業もソフト事業は交付金から税源移譲を伴った都道府県への移管といった措置が取られております.そのほか,公募制の予算事業の導入であるとか,いろいろと我が国の農政が大きく転換しつつある姿が随所に現れているということを肌に感じる次第です.
 畜産をめぐる情勢,あるいは社会をめぐる問題は必ずしも明るい材料ばかりではありませんが,先ほどお話に出た私どもの先代の山中会長は,常に日本獣医師会と中央畜産会は車の両輪のようなものだ.共に頑張らないと日本の畜産はないと,何度も私は耳にいたしました.懐かしく思い出しながら,このような気持ちで対処しなければいけないと,気持ちを新たにしている次第です.
 以上,産業動物関係のことを念頭に置きながらお話し申し上げましたが,先ほど来,谷津先生もお触れになりましたが,貴会及び皆様にはもう一つ大きな役割というものが期待されていると思います.今や,人々の生活には欠かせないものとなりましたコンパニオンアニマル,アニマルセラピー,このような世界が新しく開けようとしています.我が国の人口の高齢化と愛玩動物の重要性もさることながら,最近のように殺伐たる事件や世相を見ますとき,動物の飼養体験を小さいときから体験させていればかくまでにはならなかったのではないかと思われてなりません.子供の時代からの健全な精神形成には,食育と共に動物とのかかわりの中で生命教育がぜひ必要です.障害を負った方の機能回復にも動物たちが活躍しているということが伝えられています.この分野も,獣医師の皆様の活躍の場であろうと思います.
 以上いろいろと申し上げましたが,我が国畜産の発展と社会の安定にとりまして,獣医,衛生対策はますます重要性が増大することは明らかであります.社団法人日本獣医師会並びに会員各位のこれからのますますのご活躍を祈念申し上げまして,粗辞でございますがお祝いの言葉とさせていただきます.今日は誠におめでとうございます.

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