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行政・獣医事

狂犬病予防対策の充実・強化に関する要請活動等

 昨今の人と動物の共通感染症をめぐる情勢を踏まえ,特に狂犬病対策については,犬の予防注射接種率が50%を割る水準が継続していること等から,狂犬病予防法に基づく犬の登録と狂犬病定期予防注射接種率の向上等の狂犬病予防対策の取り組み体制の整備について,別添1により厚生労働省健康局結核感染症課長要請するとともに,別添2により地方自治体と公益法人地方獣医師会との協議の一層の推進等を地方獣医師会に通知した.

【別添1】
17日獣発第223号
平成18年2月3日
厚生労働省健康局
 結核感染症課長 塚原太郎様
社団法人 日本獣医師会
会 長 山根義久
狂犬病予防法に基づく犬の定期予防注射の取り組みについて
 狂犬病予防法に基づく狂犬病の予防等の防疫対策の推進につきましては,日頃よりご指導・ご支援をいただき厚く御礼申し上げます.
 人と動物の共通感染症対策につきましては,感染症法の整備を始め,狂犬病対策については,昨年,検疫制度の見直しが行われる等制度上の進展が図られてきているところでありますが,SARSや高病原性トリインフルエンザの流行例にみられるとおり,人及び物流の国際間移動の進展や自然環境問題に派生し,一時の猶予を許さない事態となっているのはご案内のとおりであります.
 狂犬病予防対策の地域における取り組みについては,古くから,都道府県等の地方自治体と公益法人獣医師会との地域連携により,大きな成果を収めてきたところでありますが,予防対策の根幹をなす犬の予防注射接種率が貴省の研究事業報告においても指摘されているとおり近年,恒常的に50%を下回る事態が継続しているところであり,地域において狂犬病予防法の執行に当たる都道府県を始めとする地方自治体による犬の所有者に対する積極的指導とともに,普及・啓発対策,さらには獣医師会との連携による地域の取り組み体制の推進が求められるところであります.
 本会におきましては,4月から本年度の定期予防注射の実施時期を迎えるに当たり,別添のとおり,本会会員である地方獣医師会に対し都道府県等地方自治体との連携の下で,犬の登録を始め予防注射接種率の向上に向けての取り組みの推進を通知したところであります.
 貴省におかれましては,この旨ご了知の上は,地域における犬の登録,予防注射率の向上等の狂犬病予防対策の取り組み体制の整備について都道府県等地方自治体に対する一層の指導の徹底方よろしくお願いします.


【別添2】
17日獣発第223号
平成18年2月3日
地方獣医師会会長 各位
社団法人 日本獣医師会
会 長 山根義久
狂犬病予防法に基づく犬の定期予防注射の取り組みについて
 狂犬病の発生予防等の防疫対策を推進する上で犬の登録とともに,定期予防注射が狂犬病予防法に基づき犬の所有者の義務とされていますが,これらの措置が確実に実施される体制を確保することは,法の執行に当たる国及び都道府県等地方自治体の責務であります.
 本件については,地域において狂犬病予防対策の円滑な推進を確保する立場にある地方自治体と獣医師が組織する公益法人である獣医師会とが連携し,[1]地域における発生予防対策の計画立案,[2]犬の所有者に対する広報,[3]登録・予防注射の実施・確認等の事務をそれぞれが役割分担の上,対応してきているところであります.
 日本獣医師会においては,これら地方自治体と獣医師会との連携した対応の一層の推進・指導を国に働きかけるとともに,狂犬病防疫の公益確保上の重要性の普及・啓発に努めてきているところですが,部内対応としては,平成8年に事業の執務参考として厚生労働省監修による「狂犬病集合注射実施のためのガイドライン」を定め,また平成14年には地区獣医師会連合会会長会議において「狂犬病予防注射事業の対応等について」を取りまとめたところであります.
 本年も4月から,地方自治体の委託の下で狂犬病定期予防注射事業が開始されることとなりますが,先に通知した[1]平成14年度地区獣医師会連合会会長会議取りまとめによる「狂犬病予防注射事業の対応等について【別紙1】」及び[2]地域体制整備についての本会要請等を受け平成14年に厚生労働省が定めた「狂犬病予防法に基づく犬の登録等の徹底のための実施要領」に係る関連通知【別紙2】を改めて送付します.
 貴会におかれては,内容ご確認の上は,犬の登録と予防注射接種率の一層の向上をめざし事業の円滑な推進について地方自治体等との一層の協議の推進に資していただきたくお願いします.
 なお,本会においては本年度発足した職域別部会の小動物臨床部会常設委員会の小動物委員会において,最近における小動物医療提供の実情等を踏まえ,事業の中期的な整備の方向等を検討・協議しているとことでありますが,委員会の検討結果については,逐次,本会の会員・構成獣医師専用ホームページに掲載しているところであります.
 また,本件については,厚生労働省健康局結核感染症課長宛に別添のとおり狂犬病予防の地域体制整備に対する指導の徹底を要請したことを申し添えます.


【別紙1】
平成14年12月3日
平成14年度第1回地区獣医師会連合会会長会議協議了解事項
狂犬病予防注射事業の対応等について
1 定期予防注射等の取り組み体制
(1)狂犬病予防法においては,発生予防のための通常措置として,[1]犬の全頭登録,[2]定期予防注射,[3]輸出入検疫の実施を規定しているが,これらの措置は,狂犬病の発生の予防を通じ,人の生命を守り,公共の福祉の増進を図るとする社会防衛のための措置である.
(2)犬の登録申請及び定期予防注射は,犬の所有者の義務とされているが,これらが確実に履行される体制を確保することは,法を所管する国及び地域において執行に当たる都道府県の責務である.
(3)地方分権推進の一環として平成11年に狂犬病予防法の一部が改正され,平成12年4月から,犬の登録申請及び定期予防注射に関する規程のうち,それまで都道府県が機関委任事務として処理してきた登録事務と注射済票の交付事務が市町村に委譲されたが,これは,単に特定の事務手続きの執行が市町村に委譲されただけで,依然として法に基づく通常措置のうち,登録及び予防注射の円滑,かつ,適正な実施を通じ地域における予防体制の整備を図ることは,都道府県の事務として推進されるべきことに変わりはない.
(4)現に,狂犬病予防法においては,狂犬病の発生予防,まん延防止措置を実施するため,都道府県には知事が任命する獣医師職員を狂犬病予防員として必置すべき旨が規定されており,予防員は,通常措置として登録を受けていない犬,鑑札を付けていない犬,予防注射を受けていない犬,済票を付けていない犬を抑留すべき旨を規定している.
 また,登録の申請や定期予防注射を怠った者については,罰則が課されるとされており,これらの取締り及び取締りの前提となる普及・啓発を含む地域の予防体制の整備・指導は当然のことながら都道府県が所掌するところである.
(5)一方,地域における狂犬病の予防体制を整備する上において,定期予防注射の一斉実施や犬の所有者に対する登録の必要性の周知徹底は,犬,猫等の家庭動物の診療を預かる小動物診療獣医師の力なくしてその確保は困難であり,都道府県等の地方公共団体は日頃から地域の獣医師により組織される唯一の獣医師団体である地方獣医師会との連携・協調体制を構築しておくことが不可欠であり,かつ,求められる.
 なお,都道府県等と獣医師団体との連携・協調体制は,[1]法第8条及び第9条において,狂犬病にかかった犬等を診断等した獣医師に対し保健所への届出と隔離の義務を課していること.また,法第20条において獣医師に対し,狂犬病予防のための協力要請に応じる義務を定めていることからしても,平素からその整備を図る必要があることは明らかである.
 また,現に,これまで,地方獣医師会は都道府県等の地方公共団体からの要請により地域における定期予防注射を狂犬病予防注射事業として実施してきたこと等により,狂犬病は,1957年を最後に人,動物ともに発生をみていない.
(6)しかしながら,現下の犬の登録状況を見ると,登録,予防注射ともに,必ずしもこれらが徹底しているとはみなし難い状況が継続している.登録の徹底及び予防注射の実施率の向上に向けて獣医師会は,国,地方公共団体とともに,引き続き犬の所有者に対する普及・啓発活動を行うとともに,地方獣医師会は,地域の獣医師が構成する唯一の公益法人として地方公共団体からの要請に一括して応え得るよう,当面,次の事項を念頭に,都道府県との連携体制を強化するとともに,組織の一層の結束を図ることが必要である.
ア 都道府県等との連携,連絡・協力体制の点検整備
(ア)地方獣医師会と都道府県等地方公共団体との恒常的な定期協議の場の設定及び役割分担の明確化等
a 役割分担
都道府県:
地域体制の整備,未登録犬等の抑留等
市町村:
地域体制の整備,登録及び済票の交付事務等
地方獣医師会:
狂犬病予防注射事業の運営,連絡・調整等
会員獣医師:
定期予防注射,保健衛生指導,普及・啓発等
b 登録及び定期予防注射の普及・啓発,社会の理解の醸成
c 防疫体制の点検整備,防疫演習,備蓄体制等
(イ)定期予防注射の一斉実施等について都道府県等地方公共団体から地方獣医師会の一括受託,地方獣医師会への実施の一元化
(ウ)定期予防注射料金等の都道府県条例又は規則による制定
(エ)未登録犬対策,登録の信頼性の確保
(オ)狂犬病等共通感染症診断体制,サーベイランス
動物由来感染症予防体制整備事業への参画等
(カ)その他
イ 地方獣医師会組織の結束の強化
(ア)組織内合意形成,執行体制の検討整備
体制整備と理解の浸透無くしては不要論が再燃.これを念頭に信頼性を確保,小動物診療獣医師の組織への結束等
(イ)定期予防注射について
a 地方獣医師会事業としての一括実施(一括受託)
支部,部会等による任意団体方式については,原則,公益法人である地方獣医師会による一括対応に移行
b いわゆる個別注射についても定期予防注射に位置づけ地方獣医師会による一括受託事業化を検討

2 法令違反者及び離反者対応
ア 衛生部局,獣医事取締当局との連携
広告制限,無診察処方・診療録記載不履行,薬事法販売等規制
イ 獣医師倫理,獣医師法第8条2項4号
いわゆる「勧誘診療」

3 狂犬病予防注射事業と地方獣医師会の財務
ア 地方獣医師会財政における狂犬病予防注射事業の位置づけ
財政運営について,会費及び狂犬病予防注射事業以外の事業収入等による対応を基本に運営する地方獣医師会が多い反面,財政を,[1]狂犬病予防注射事業参加獣医師から別途納入を求める賦課金や特別会費,[2]狂犬病予防事業からの収益からの補填に依存する地方獣医師会もあり,その状況は区々.これをどう考えるか
イ 狂犬病予防注射事業と課税関係
(ア)公益法人の公益事業と営利(収益)事業の関係
(イ)消費税,技術料に対する源泉徴収,法人税(地方税)

4 そ の 他

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