会議報告

〈農林水産省消費・安全局 中川 坦局長〉
 ただいまご紹介をいただきました,農林水産省の消費安全局長・中川でございます.本日は,日本獣医師会の第62回通常総会が,大変なご盛会のもとに開催されていることを,まずもってお祝い申し上げたいと思います.今日お集まりの皆様方には,常日頃から適切な獣医療の提供ということを通じまして,動物の保健衛生,あるいは公衆衛生の向上,また,私どもが所管しております食の安全,安心の確保,さらにはわが国の畜産業の発展と,さまざまな面で大変なご尽力,またご協力をいただいておりますことに改めて御礼を申し上げたいと思います.
 先ほどのご挨拶の中にもございましたけれども,私ども消費安全局ができましてそろそろ2年になります.この間,鳥インフルエンザ,あるいはBSE,さらにはコイヘルペスとさまざまな疾病,あるいは新たな事件,事故というものが多発いたしました.私どもの使命であります食の安全・安心の確保のためにいろいろと試練に直面したわけでございます.この新しい組織ができまして,またリスク分析手法のもとに食品安全委員会でのリスク評価,それから厚生労働省,農林水産省におきますリスク管理と,この二つの大きな役割分担がきちっと行われ,そして消費者の方々が日頃から食に対する安全,それからまた信頼を確保していくということがきちっと行われるように,私どもこの2年間努力をしてまいりました.
 特に動物医療の関係で申しますと,昨年は高病原性鳥インフルエンザを契機といたしまして,家畜伝染病予防法の改正もいたしましたし,また常日頃から家畜の飼養者の方々が適切に飼養管理をしていただくために,飼養衛生管理基準といったものも制定いたしました.それから,わが国にいろいろな疾病が侵入することを防止し,また万一侵入した場合にもそのまん延を防止するために特定家畜の伝染病の防疫指針を策定したところです.現場では,獣医師の方々をはじめ関係者の方々に大変ご尽力いただきまして,昨年の高病原性鳥インフルエンザの発生も4例で抑えることができました.
 今年の冬は,何とかそのような発病も発生もなくよかったなと思っていたわけでありますけれども,先般26日に茨城県で,今度は弱毒タイプではありますが,やはり鳥インフルエンザの発生を見たということであります.特に,今回の弱毒タイプH5N2型というのはなかなか発症が見えませんので,現場で早期発見,適切な早期対処ということをするうえでは,今までのものに比べても,昨年の例に比べてもなお一層努力が必要かと思っております.こういう面では,特に産業動物にかかわります獣医師の先生方におかれましては,特に現場での対応,より一層きめ細かい対応という面でご尽力をいただきたいと思っております.
 また,一方小動物の獣医療分野に目を転じますと,わが国も少子高齢化に伴いましていろいろとコンパニオンアニマルに対します,より高度な獣医療の提供といったものでのニーズが高まってきております.昨年の10月から農林水産省でこの小動物獣医療班というものを設けました.また今年の1月からは,これからの新たな小動物獣医療はどういうニーズがあるか,どう対応していかなくてはいけないかといった面につきまして,小動物獣医療に関します検討会というものを開催しています.もう間もなく一定の成果,方向が示されるものと思っておりますが,新規の獣医師の先生方への臨床研修であるとか,あるいは獣医療に関する広告規制のあり方,さらには高度な獣医療のあり方といった面につきましていろいろと総合的なご検討をいただいております.小動物臨床に携わっておられる獣医師の皆様方におかれましても,高度獣医療に対するニーズなども適切に対応していただくなどいろいろと課題がございます.また,いろいろな小動物を飼っておられる飼養者の方々との信頼関係の回復といいますか,維持向上というものも大変大事な課題かと思っております.
 産業動物,あるいは小動物,それぞれいろいろな課題があるわけでございます.私ども,農林水産省といたしましても適切な行政ニーズに応えるべく,また今日お集まりの獣医師会の先生方とも連携を取りながら,適切な行政対応をしていきたいと思っております.そういう面でも,この日本獣医師会の皆様方の果たす役割というのは大変大事なところがございます.これからも行政と獣医師会が連携を取りながら,ぜひ国民の方々のニーズ,産業界のニーズに応えていくようにしたいと思っておりますので,引き続きよろしくお願い申し上げたいと思います.冒頭に,大変粗辞でございますが以上申し上げまして,ご挨拶に代えさせていただきます.本日は誠におめでとうございました.


〈厚生労働省医薬局 外口 崇食品安全部長〉
 ただいまご紹介いただきました,厚生労働省食品安全部長の外口でございます.本日ここに,第62回社団法人日本獣医師会通常総会が盛大に開催されますことを心からお慶び申し上げます.皆様方におかれましては,日頃からと畜,食鳥検査などの実施等による食品衛生対策の推進をはじめとして,食中毒対策,狂犬病予防をはじめとした動物由来感染症対策,残留動物用医薬品対策等,公衆衛生行政の推進に種々の立場から多大なご協力を賜り,厚く御礼申し上げます.
 はじめに,食品の安全確保対策につきましては,食品安全基本法の制定,食品衛生法等の改正等を踏まえ,監視指導体制の強化,企画基準の整備,リスクコミュニケーションの推進などを行ってきたところであり,本年も引き続き着実な施行に努めております.BSEの問題に関しては,食品安全委員会により昨年9月に取りまとめられた国内対策の評価,検証結果を踏まえ,全頭検査の見直しを含めた国内措置の見直しについて同委員会に諮問し,本年5月6日に同委員会から答申を受けたところであります.現在,全頭検査の見直しを行うための省令改正に必要な手続きを進めているところであり,7月に交付,8月に施行を予定しております.
 また,米国およびカナダ産牛肉の輸入再開については,わが国に輸入される米国およびカナダ産の牛肉が,国内産牛肉と同等の安全性が確保されていることについて,5月24日,食品安全委員会に諮問したところであり,今後同委員会での審議の結果に基づき対応することとしております.厚生労働省といたしましては,これらのBSE対策のほか,食肉,食鳥肉,鶏卵など,動物性食品に起因する腸管出血性大腸菌,サルモネラなどの食中毒防止を図るため,と畜場および食鳥処理場のほか,生産から消費までの各段階において安全対策の向上に取り組んでいるところであります.皆様におかれましては,動物性食品等の衛生向上に生産,流通等それぞれの立場から引き続きご協力賜りますようお願い申し上げます.
 狂犬病対策につきましては,長年にわたり犬の登録および狂犬病予防接種についてご協力いただき,他の多くの国で狂犬病が発生している中で,わが国での発生防止が図られていることは,ひとえに皆様方のご協力によるものと感謝申し上げる次第です.また昨今,人の感染症対策における動物由来感染症対策の重要性が増していることに鑑み,昨年の感染症法の改正で大幅な強化が図られ,獣医師の公衆衛生対策における責務規定,犬のエキノコッカス等の届出義務等が新たに明示されたところです.加えまして,本年9月1日からは動物の輸入届出制度が施行されるなど,一層の動物由来感染症対策を進めていくこととしております.今後とも,食品の安全確保対策,動物由来感染症対策など種々の施策の充実に努めてまいる所存でありますので,これら施策の推進にあたりましては日本獣医師会のご理解とご協力を,引き続きよろしくお願い申し上げる次第です.
 最後になりましたが,今後の日本獣医師会のますますのご発展と,本日お集まりの皆様方のご健勝を祈念いたしまして,私の挨拶とさせていただきます.本日は誠におめでとうございます.


〈環境省自然保護局 小野寺 浩局長〉
 皆さん,こんにちは.環境省の小野寺でございます.お招きいただきまして誠にありがとうございます.獣医師会の皆様には公私ともに大変にお世話になっております.
 私の方から申しますと,昨年6月のはじめに,都内の自宅近所の路地に生後3週間ぐらいの子猫がうずくまっており,つい目が合ってしまい拾うはめとなりました.この猫が伝染病に罹っており,近所の動物病院で診てもらったところ,命の危険もあるとのことで入院し,その後,何度も足を運びましたが,親身に看病していただいた結果,回復し,現在は1歳を過ぎ,家の中を元気に走り回っており,大変感謝しております.
 そして,公の方では,先ほど鳥インフルエンザの話がありましたが,昨年の当初に発生時,ニワトリは中川局長の管轄なのですが,媒介したと言われるカモ,カラス,その他の野鳥については霞が関では,私の局以外担当する部署がなく,当時は,全国各地で野鳥の死亡個体を発見した市民から同病の感染を危惧する通報があり,混乱を招きかけましたが,中川局長に依頼して,各都道府県の家畜保健衛生所や動物衛生研究所で分析をしていただき,対応してまいった経緯があります.
 それから,この6月15日に参議院の本会議で承認されました動物愛護管理法ですが,本法律は総理府が所管していた法律で,自然環境局で野生生物は取扱っていたものの,ペット関係は初めてのことで,環境省が設置された平成13年の1月から取り組むこととなりましたが,内容には非常にデリケートな部分があり,法律の改正においても困難な局面がありました.
 しかし,自民党の環境部会において北村先生に動物愛護小委員会の委員長を務めていただき,関係者等とも熱心にご議論いただいた結果,この6月15日にようやく法案が成立したという経緯であります.国会ではご承知のとおり郵政民営化法案の提出を控えておりましたから,この機会を失うと先が見えなくなるという状況下において,北村先生,谷津先生のご尽力で本国会での成立が実現いたしました.総理府当時の昭和48年,議員立法による制定以降,改正に難しい部分もありましたが,今回の改正でまた一つ大きく前進したと考えております.
 野生動物およびペットについて,これからますますいろいろな形で,環境省の自然環境行政と獣医師会の皆様のかかわりが増えてくると思っております.
 本日,ここにお招きいただきましたことを新たな契機といたしまして,自然環境,ペット,その他の関連行政につきまして,今後とも,よりよい関係を保ちつつ,さらなるご指導とご支援をお願い申し上げまして,私のご挨拶に代えさせていただきます.どうもありがとうございました.


〈社団法人日本獣医学会 佐々木伸雄理事長〉
 ただいまご紹介いただきました,日本獣医学会理事長の佐々木でございます.
 昨年,一昨年にわたり,日本獣医師会,日本獣医学会が連携して地区学会を開催したという話を申し上げました.そして,このたび日本獣医師会の三学会年次大会は例年2月の開催でございますが,無理をお願いしまして,いよいよ今度の来年の3月に,日本獣医学会の春の学術集会と連携開催することとなりました.
 獣医学会の3割から4割ぐらいの会員が獣医師会の会員であるという実態があり,基本的には共通した土台でありますけれども,獣医学会はこれまで,研究,あるいは大学関係者が多いということもあり,教育が主体でありました.しかし,これまでのご挨拶にありますように,食の安全の問題,さらに現代は単純計算すると国民のうち6人に1人が犬,あるいは猫を飼っているという時代であり,ペットの社会における役割,意義というものも大きく変わってきています.また,国際関係の変化ということも併せますと,いわゆる人と動物の共通感染症についても,今後なかなか予測できない事態が起こる可能性も思慮されます.
 このような背景を踏まえ,やはり獣医学は実学ですから,その土台となるべき獣医師会,そして,それらに関する教育,研究に携わる獣医学会がもっと密に連携すべきであるとの考え方が,この連携大会の基本的な理念であります.それだけに多種多様なプログラムを企画することが可能となり,ぜひとも社会に発信していきたいと思います.われわれ獣医師は,従来から,広報に長けていないことからも,有名な宣伝のスペシャリストに依頼して,さらに獣医界を日本の社会,あるいは世界へ広めていくべきであると常々思っておりますが,今回はそのような一つの大会,機会となると考えております.
 これから,順次細かなプログラムが発表されると思いますが,双方とも3日ずつの日程の中,4日間にわたり多種多様なプログラムが企画されますので,先生方にもぜひご出席いただきたいと思いますし,また事前にはさまざまな方法での社会へ広報したいと考えております.本日,ご出席の先生方も地元都道府県にお帰りになりましたら,多くの会員の先生方に参加を呼びかけていただければ幸いに存じます.簡単ではございますが,祝辞に代えさせていただきます.どうもありがとうございました.

【来賓の紹介】
 大森専務理事から来賓の紹介が行われた.
【日本獣医師会会長感謝状贈呈】
 日本獣医師会会長感謝状が以下のとおり贈呈された.
・平成16年度学会年次大会の開催を受託して獣医学術の振興・普及に貢献した者
  社団法人 新潟県獣医師会
・獣医師総合福祉生命共済事業への積極的な加入推進を図ったことにより,加入率目標50%以上(平成17年4月1日現在)を達成して構成獣医師のための福祉の向上に寄与した者
  社団法人 新潟県獣医師会
  社団法人 広島県獣医師会
  社団法人 愛知県獣医師会
  社団法人 秋田県獣医師会
  社団法人 鳥取県獣医師会


【獣医師会職員永年勤続表彰】
 獣医師会の永年勤続職員に対して次のとおり表彰が行われた.
・30年勤続表彰
  市川美栄(高知県獣医師会)
・20年勤続表彰
  矢嶋洋子(山梨県獣医師会)


【議長・副議長選出】
 会長が仮議長となり,「仮議長一任」の声を受け,次の2名を議長・副議長に選出した.
  議 長 湊  惠(香川県獣医師会長)
  副議長 遠山吾市(茨城県獣医師会長)


【議事録署名人の選任】
 議事録署名人については,議長一任の声を受け,議長が以下の2名を選任した.
  勝見 晃(山形県獣医師会長)
  大山英隆(鹿児島県獣医師会長)