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短 報

子宮外にミイラ化変性胎子を認めた重複妊娠犬の1症例

紫野正雄1)†    林 繁利2)    市原伸恒1)

1)麻布大学獣医学部(〒229-8501 相模原市淵野辺1-17-71)
2)徳島県 開業(〒770-0006 徳島市北矢三町4-6-41)

(2003年11月17日受付・2004年11月1日受理)

要   約

 チワワ種雌犬が,難産の末3匹を初産分娩したが,その後のX線検査によって子宮外に2胎のミイラ化胎子が認められた.その後無処置の状態で分娩後2回日の発情でふたたび妊娠した.妊娠末期にX線検査を行ったところ,4胎の正常胎子とともに2胎のミイラ化胎子が確認された.正常胎子の摘出のための卵巣子宮全摘出を行い,さらに腹腔内ミイラ化胎子の摘出も行った.摘出右子宮の先端に脱出跡と思われる組織学的所見が得られた.また,摘出ミイラ化胎子についてX線検査による骨格測定を行ったところ,妊娠末期の胎子と一致した.以上の結果から,このミイラ化胎子は前回の分娩時の難産のおりに子宮破裂口から腹腔内に脱出し,長期間腹腔内に遺残し,その後の子宮修復に伴い重複妊娠した事が示唆された.
―キーワード:犬,子宮外妊娠,ミイラ化胎子.
------------------------------日獣会誌 58,331〜333(2005)

 


† 連絡責任者: 紫野正雄(麻布大学獣医学部動物応用科学科動物繁殖学研究室)
〒229-8501 相模原市淵野辺1-17-71
TEL 042-754-7111 FAX 042-769-1762