会議報告

平成15年度第1回全国獣医師会会長会議の議事概要


| .日 時: 平成16年2月24日(火) 14:00〜16:30
|| .場 所: ホテルフロラシオン青山 3階「孔雀の間」
||| .出席者: 1.地方獣医師会:55地方獣医師会長等
2.日本獣医師会
会 長: 五十嵐幸男
副会長: 金川弘司,辻 弘一
専務理事: 大森伸男
地区理事: 坂井清治,武田金之助,中川秀樹,手塚泰文,
東出義弘,串田壽明,坪倉 操,竹内 久,藏内勇夫
職域理事: 稲庭政則,岡本有史,横尾 彰,森田
邦雄
監  事: 玉井公宏,麻生 哲
事務局: 朝日事務局長ほか
|V .議 事:  
1. 要指示医薬品制度に関する法令遵守の徹底と指示書の様式改訂に関するの件
2. 獣医師倫理対策に関する件
3. 部会制の導入等に関する件
V .概 要:  
【会長挨拶】
1. 冒頭,五十嵐会長からの挨拶の大要は次のとおり.
(1) 2月20日,長きにわたり本会の顧問を務められた山中貞則衆議院議員が急逝された.これまでの多大なご指導に感謝の意を表するとともに心からご冥福をお祈りしたい.
(2) 鳥インフルエンザについては,山口県で終息が宣言される矢先に大分県で発生し,また,神奈川県では10例目のBSEが発生した.このように獣医界に次々と緊急事態が発生する状況にあるが,われわれにとっては,獣医師の力量を示し,信頼を勝ち取る絶好の機会でもあると考えている.ついては,獣医師会が一丸となって公益に貢献していきたい.
(3) 学校飼育動物の鳥インフルエンザ対策については,本会あてに多数の相談があり,また,過剰な反応による飼育動物の処分等を危惧し,教育関係者,保護者に対して適正な情報提供のための緊急提言を行い,報道関係機関へプレスリリースした.
(4) 先般,横浜で開催された平成15年度学会年次大会は担当の横浜市獣医師会,関東地区獣医師会,各地方獣医師会のご尽力により,登録者1,865名,全体で2,500名を超える多数の参加者を得,盛会裡に終了できたことをお礼申しあげたい.
(5) 部会制の導入等,本日の重要な案件について,熱心に議論いただき,実りある方向で推進したい.

【議  事】
 五十嵐会長が桑島 功・千葉県獣医師会会長を座長に指名し,座長から以下のとおり議事が進められた.
1.要指示医薬品制度に関する法令遵守の徹底と指示書の様式改訂に関する件
(1) 大森専務理事から大要次のとおり説明された.
ア. 動物用医薬品指示書の様式の改訂等について
(ア) 要指示医薬品について,獣医師の処方にかかる指示に基づき,これが流通,使用される場合にあっては,[1]獣医師の指示を文書化した動物用医薬品指示書(以下「指示書」という.)の適正な発行,[2]「指示書」に基づく要指示医薬品の適時・適量の流通と生産段階における適正使用の確保,さらに,[3]これら一連の行為を確認するための都道府県等の薬事監視員による薬事監視システムが有効に機能することが重要である.
(イ) 本件について,本会では,薬剤残留,耐性菌発現の問題等を通じ,指示書発行の一層の適正化について産業動物委員会で検討した結果,その対応については地方獣医師会とともに農林水産省における都道府県への指導と一体となった運用が必要であるとの観点から,農林水産省に対し,本会が同省の指導の下で作成・頒布している「指示書」の様式について新たに「提出用」の様式を追加するとともに,「提出用」の様式が薬事監視に十分活用されるよう要請をしたところ,本会の要請を受け,先般,「薬事関係事務に関わる技術的な助言についての一部改正について(平成15年7月28日付け15消安第812号.農林水産省消費・安全局長通知)」をもって,指示書発行の適正化と薬事監視事務執行体制の整備が都道府県をはじめ,関係機関に通知されたところである.
(ウ) 「新様式指示書」については,1月から地方獣医師会の要望に応じて頒布を開始したが,「現行様式指示書」との相違点は,[1]様式のA5判への変更,[2]発行に当たっての留意事項の整備,[3]指示書記載内容の整備,[4]指示書様式として「提出用」の追加等を内容とするものであり,提出先等については,事前に地方獣医師会と都道府県当局が十分協議の上,調整頂いたものと考える.今回の指示書の改定を実効あるものとして機能させるよう対応願いたい.
(エ) また,「動物用医薬品の使用の規制に関する省令の一部を改正する省令(平成15年農林水産省令第44号)」が平成15年4月28日付けで公布され,使用基準が定められた動物用医薬品の家畜の生産者等使用者に対して帳簿の記載が義務付けられたが,このことを受け,「新様式指示書」の「使用者用」の様式に使用者の記入欄を設けたので,「指示書」を交付した獣医師から使用者に対する適切な指導が行われるよう,地方獣医師会から会員獣医師への周知を依頼したい.
イ. 要指示医薬品制度に関する法令遵守の徹底について
(ア) 食の安全確保の観点から食中毒,感染症の予防,薬剤残留,耐性菌の問題が社会的課題となっている現状,指示書の適正な発行と同時に要指示医薬品のうち,抗菌性物質製剤については,薬剤耐性菌対策の観点から,適用対象症例に対応した抗菌剤の選択を適切に行い,個々の製剤ごとに定められた「用法・用量」及び「使用上の注意」を十分勘案のうえ,必要最小限の量を最短期間で用いる等のいわゆる「慎重使用(プルーデント・ユース)」の原則に基づき処方のうえ,使用することに最大限の注意を払う必要がある.
(イ) 本件について,昨年12月農林水産省から「要指示医薬品制度に関する法令遵守の徹底について」の通知があり,一部において無診察による指示書交付等の違法行為が行われている疑いがあるなど,獣医師のみならず,要指示医薬品制度全体に対する国民の信頼大きく損ねる看過できない事態が懸念される.これに対しては刑事告発を含む厳正対処を行うこと等について獣医師への指導を依頼された.要指示医薬品の適正流通と適正使用の確保については販売業者,生産者,獣医師の3者の取り組みが必要であるが,本通知により特に動物医療の専門家である獣医師に対する法令遵守が強く求められた.
(ウ) なお,先般,岐阜県,長野県をエリアとするペット販売業者と獣医師が指示書の不適正発行に係る事例として摘発されたが,地元獣師会では会員に対する情報提供等迅速に対応された.今後,新しい指示書が全国に行き渡たるものと理解し,4月から現場での薬事監視事務が厳正に行われることとも併せ,体制整備について都道府県と協議の上,その対応をお願いしたい.
(2) 質疑として,ア.会長会議の開催目的について確認したい,イ.長野県の事例の詳細と及び無診察の定義について説明願いたいことの質疑があり,大森専務からアの全国獣医師会会長会議については,定款施行細則で「本会の会務の執行状況に関する報告及び連絡ならびにその他の情報交換及び意見交換を行うことにより,本会と本会の会員である都道府県獣医師会及び政令市獣医師会との連携,協調を密にし,もって会務の運営の円滑化を図ることを目的」として位置づけていること,イについては,新聞記事によると,大型ペットショップが獣医師の診察なしに,形骸化して発行された指示書により大量にワクチンを購入し,獣医師でない者が販売する犬猫に恒常的にワクチン接種をしていた事例と聞いている.また,無診察について法律上の義務規定は定められていないが,事例解釈の中で判断されている.一方,家畜畜産物衛生指導協会における豚コレラワクチン接種の際の診察要件では,当該農家の衛生状況を熟知している場合においては,必ずしもその都度の診察を要しないという実例もあるが,基本は個々の診療例についてのその都度の獣医師の診察の実施ということである.無診療についての判断は,個々の事例を都道府県の畜産課に確認した上で対処されたい旨が回答された.
 

2.獣医師倫理対策に関する件

(1) 大森専務理事から獣医師に対する行政処分及び獣医業適正確保に係る指導強化等について報告事項として大要以下のとおり説明された.
ア. 農林水産省消費・安全局衛生管理課長から,獣医師の行政処分に際し,都道府県主務部長あてに獣医師法,獣医療法,薬事法等の法令遵守について管下の地方獣医師会への次の事項の周知,指導等の徹底が通知され,あわせて本会へ一層の獣医師倫理確立の取り組みが依頼された.その内容は,
(ア) 獣医師又は診療施設の広告の実態を把握し,獣医療法に違反し,又は違反のおそれのある場合には,その旨を農林水産省まで報告するとともに,同法を遵守した適切な広告を行うよう当該獣医師又は診療施設に対して指導を徹底すること.
(イ) (ア)のほか,管下の獣医師及び地方獣医師会等関係機関と密接な連携をとり,獣医師法,獣医療法,薬事法その他の関係法令の違反等の情報を把握した場合には,その旨を農林水産省まで報告すること.
イ. また,特定の獣医師及びそのグループにより繰り返し行われる広告制限規定や動物用医薬品の販売規制違反等の獣医師関連法令の違反事例に対する都道府県当局による取締りの強化に対し,このたび発出された上記アの通知は,都道府県主務部長あてに,具体的措置として,司法処分の有無にかかわらず,上記(ア)(イ)の対応が依頼されており,地域問題も獣医師間の問題として対応するのではなく,今後は行政主体で獣医師会との連携の中で対処していくことが改めて示されたと理解している.
 なお,本件については,農林水産省獣医事審議会における獣医師倫理対策推進の重要性の指摘を受けて通知が出されたことを申し添える.
(2) 質疑等として,電話帳への動物病院等の広告について,NTTの担当者から県の指導により掲載内容の可否判断をしている旨説明を受けたが,可否についての基準は大変分かりづらいものであった.実際,監督官庁に確認して行政指導を受けているのか,情報をいただきたいことの依頼があり,大森専務理事から,詳細は不明であるが,不特定多数の者に一方的に通知することが広告であり,獣医師に関わる技能,療法,経歴の広告は認められないとの観点から,NTTの支社においては獣医師から広告を依頼された際,違反か否かの見解を都道府県に求めているものと思われる旨回答された.
 

3.部会制の導入等に関する対応の件

(1) 五十嵐会長から,部会制の導入目的,取組み状況等について次のとおり説明がされた.
ア. 部会制は,地方獣医師会の職域組織と本会の提携を綿密にして,双方の活性化を促すことが目的であり,制度の導入により職域別の制度的課題等の問題に対し,公益確保の観点からの取り組みを強化し,獣医師あるいは獣医師組織の社会評価を確保していきたい.
イ. 特に農林水産省に小動物獣医療班が設置される他,厚生労働省,環境省においても獣医師が配置されるとともに,BSE,鳥インフルエンザ等の緊急を要する問題が発生している今日,獣医師会がその力量を試され,評価を受ける機会でもあることから,批判を受けないよう慎重に取り組んで来た.
ウ. なお,これまで理事会等での議論を踏まえ,地方獣医師会に部会制の原案を示し,地区獣医師会連合会,各都道府県市獣医師会の要請に基づき,辻副会長及び大森専務理事が説明に伺ってきたものの,原案に対しては,地方獣医師会の間には,温度差があり,導入促進論と慎重論に分かれ,意見の集約にはいたっていない現状である.
エ. 本件は地方獣医師会の熱意と総意が得られないことには進展しない.現在の段階で結論を急ぐということでなく,各論について理解をいただきつつ,あわせて他の関係団体との協議も進めている.
 本日は,この場でもご意見をいただき,さらに,理事会にも諮り,進めてまいりたい.
(2) 続いて大森専務理事から原案に関する地区獣医師会連合会及び地方獣医師会からの意見の提出状況及び意見の概要と意見に対する考え方,さらに従来の資料が難解であったとの意見を受け,部会制の原点に立ち返った部会制の導入の基本的な考え方について端的にまとめた骨子案(別紙)が次のとおり説明された.