【来賓ご挨拶】
〔農林水産省畜産局 永村武美審議官〕
 畜産局長が所用で出席できませんので,私は審議官の永村でございますが,局長の祝辞を代読させていただきます.
 「本日ここに,社団法人日本獣医師会第57回通常総会が開催されるにあたり,一言ご挨拶申し上げます.皆様方におかれましては,日頃から獣医療の提供を通 じ,わが国畜産の健全な発展,飼育動物に関する保健衛生の向上,および公衆衛生の向上にご尽力をいただき,深く敬意を表する次第であります.
  ご承知のとおりわが国の畜産は,食生活の多様化等による需要の増大を背景として順調な発展を遂げ,わが国農業の基幹的部門に成長してまいりました.さらに,畜産は農家による生産のみならず,加工・流通 ・飼料・衛生等の幅広い関連分野と密着した形で営まれており,これらが一体となって地域の雇用や経済を支えております.今後とも安全で上質な畜産物の安定供給という基本的な役割はもとより,地域社会の活力維持,国土や自然環境の保全等,その果 たす多面的な役割はいっそう重要なものとなっていくと考えております.
  このような状況の中で,わが国における家畜伝染病の発生につきましては,最近まで比較的平静に推移していたところでありますが,本年3月25日,わが国では明治41年以降92年間発生が見られなかった口蹄疫が宮崎県で確認され,その後5月11日に北海道においても確認されました.ご存じのとおり口蹄疫はきわめて悪性の家畜伝染病であるため,そのまん延を防止し,正常化を図ることは,わが国畜産の将来のみならず,国民生活にとってもきわめて重要なことであります.そのため,ただちに家畜伝染病予防法および海外悪性伝染病防疫要領に基づき,発生農家の飼養牛全頭の殺処分・埋却,移動制限等のまん延防止措置を講じたところであります.
  宮崎県下において最初に患畜を発見された獣医師をはじめ,全国の獣医師の方々のご協力によりまん延防止のための作業は順調に推移し,去る6月9日には北海道における移動制限が解除されたところであります.現在は感染経路等,原因究明に向けた調査とあわせて,口蹄疫清浄国へ復帰するための準備を進めているところです.なお,宮崎県で口蹄疫の初発事例を診断した舛田利弘獣医師に対しては,その功績をたたえ大臣感謝状を本日お贈りいたしましたので,あわせてご報告いたします.
  また,韓国においてわが国とほぼ同時期に口蹄疫が発生したため,同国からの牛肉,豚肉等の輸入を禁止したところであります.さらに口蹄疫清浄地域以外の地域から輸入される稲藁,麦藁および乾牧草については当分の間動物検疫の対象とし,必要に応じてホルマリン消毒等の措置を講じたところであります.このように,海外から口蹄疫が侵入する機会を可能なかぎり排除することがきわめて重要であり,今後も侵入防止対策に万全を期してまいりたいと考えております.さらに,今般 の口蹄疫の発生とその後の経緯を踏まえ,新たに取り組むべき課題等を整理しているところであり,必要があれば家畜伝染病予防法の改正も視野に入れて検討してまいりたいと考えております.
  農林水産省といたしましては,防疫体制の強化をはじめとする家畜衛生対策の着実な推進を図るとともに,より効率的,かつ効果 的な家畜防疫を実施する観点から,サーベイランス体制の整備,自衛防疫の支援体制の確立を図り,疾病の発生予防,家畜衛生環境の清浄度の向上等に努めているところであり,小動物獣医療関係につきましても,小動物保健衛生情報の収集,提供等を通 じ,適切な獣医療の提供の促進に努めてまいる所存であります.
  本日,ここにお集まりいただいている方々をはじめとする獣医師の皆様方におかれましては,獣医師に対する社会的要請への的確な対応や,動物の飼育者との信頼関係を基本として,今後ともより質の高い獣医療の提供に主導的な役割を担っていただき,より一層ご活躍されんことを期待してやみません.
  最後になりましたが,日本獣医師会,各地方獣医師会および獣医師会会員の皆様のますますのご発展と,ご出席の皆様のご健勝とご活躍を祈念いたしまして私の挨拶といたします.平成12年6月23日,農林水産省畜産局長・樋口久俊」.代読でございます.どうも今日はおめでとうございました.