【参考】

米国における1997年の狂犬病調査

John W. Krebs, MS; Jean S. Smith, MS; Charles E. Rupprecht, VMD, PhD;
James E Childs, ScD

the Viral and Rickettsial Zoonoses Branch, Division of Viral and Rickettsial Diseases, National Center for Infectious Diseases, Centers for Disease Control and Prevention, 1600 Clifton Rd NE, Atlanta, GA 30333.

上記各著者は,以下の各組織に謝意を表明している.
  狂犬病調査データの提供に応じた各地の衛生関連あるいは農業関連の公共・民間組織; 狂犬病調査データの概要の提供に応じたカナダ政府およびメキシコ政府; 図版の作成を支援したKaroyle Colbert(Biometrics Activity, Division of Viral and Rickettsial Diseases, National Center for Infectious Diseases)およびVan Munn (Information Resources Management Office, Office of Program Services, Office of the Director, Centers for Disease Control and Prevention)
商品名や製造元は,単に情報として明示したものであり,CDC(Centers for Disease Control and Prevention)やthe US Department of Health and Human Servicesによる推奨を意味してはいない.


要  約
 CDCには,1997年,49の州とコロンビア特別区,およびプエルトリコ準州から,(人以外の)動物について8,509例,人について4例の狂犬病の症例報告が届いている.動物の症例のうち,およそ93%(7,899例)は野生動物のもので,7%(610例)が家畜のものである.報告された症例数は,1996年(7,128例)に比べ,19.4%の増加を示している.症例の増加は牛を除いて大半の種で見られる.1997年について,種別 の症例数の内訳は次のようになっている:アライグマ(50.5%; 4,300例),スカンク(24.0%; 2,040例),コウモリ(11.3%; 958例),キツネ(5.3%; 448例),猫(3.5%; 300例),犬(1.5%; 126例),牛(1.4%; 122例).コウモリの症例は本土48州のうち46の州で確認され,その958例という数字は,1996年の報告数を29.3%上回り,1984年以来最多を記録するものである.アライグマの狂犬病は,1997年になってオハイオ州にまで広がり,19の州とコロンビア特別 区で風土病としての流行が確認されている.このうち13の州で前年に比べて症例数の増加が見られ,とくに数が多いのは,ニューヨーク州(1,264例),ノースカロライナ州(879例),ヴァージニア州(690例),メリーランド州(619例)である.また,以下の5州で,1996年を50%以上も上回る数字を示している:オハイオ州(673.3%; 1996年の15例から1997年の116例へ),マサチューセッツ州(144.3%; 115例から281例へ),サウスカロライナ州(97.9%; 96例から190例へ),コネチカット州(97.4%; 274例から541例へ),メイン州(86.3%; 131例から244例へ).一方,テキサス州中西部におけるキツネの症例やテキサス州南部における犬とコヨーテの症例は減少の一途をたどっており,それぞれの1997年の報告数は,キツネでは前年に比べて78.3%減って13例,犬では26.7%減って11例,コヨーテでは63.2%減って7例となっている.家畜の症例報告は,猫(300例)で12.8%,犬(126例)で13.5%増加したが,牛(122例)で6.9%の減少を示している.動物全体の狂犬病の症例は,1996年については31の州とコロンビア特別 区で減少が報告されているが,1997年については30の州とコロンビア特別区,およびプエルトリコで増加が報告されている.また,報告数に変化のなかった州が1州あり(ミシシッピ州; 5例),ハワイ州は唯一,1997年に狂犬病の症例報告がなかった.人で確認された4例は,いずれも米国内でコウモリの狂犬病ウイルスに感染していた.